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春期限定いちごタルト事件(米澤穂信)

小鳩君と小山内さん。ふたりは、つつましい小市民を目指す高校1年生だ。だが、彼らの前に次々と謎が現れる。小市民を目指すはずのふたりが取った行動は・・・。

小鳩常悟朗と小山内ゆきは、中学3年生の初夏から一緒にいる。受験戦争を勝ち抜き高校生になったふたりは、単なる友人ではない。目立たないように存在する小市民を目指す同志なのだ。だが、ふたりの意に反して、周りでは次々に謎のできごとが起こる。謎を前にして、常悟朗の血が騒ぐ。目立たずに謎を解くことができるのか?そして、最大の事件が!!ゆきがやっと手に入れた春期限定のいちごタルトが、何者かに自転車ごと持ち去られてしまったのだ!常悟朗とゆきは、取り戻すべく犯人探しの行動を起こすが・・・。
軽快でサクサク読める面白い作品だ。事件も、人の生死にかかわる深刻なものは起きないので、どこかほほえましく感じる。ラストもきっちりまとめられていて、読後感もよかった。



| 米澤 穂信 | 23:06 | comments(0) | ゆこりん |


バベル九朔(万城目学) 

「バベル九朔」と呼ばれる5階建ての雑居ビル。祖父が建て母が引き継いだこのビルに、九朔満大は小説を書きながら管理人として住んでいた。
巨大ネズミの出現、不気味なカラス女、不思議な絵・・・。このビルには、意外な秘密があった!

「バベル九朔」に現れた不気味なカラス女が「扉はどこだ。」と言いながら満大に迫る。そのカラス女から逃れるため、満大は1枚の絵の中に現れた扉の中に思わず逃げ込んだ。そこで彼は不思議な体験をする。そして、カラス女が語るこのビルの驚くべき秘密!
死後も力を持ち続け、ビルを支える祖父。その祖父の力が弱まったとき、ビルの崩壊が始まる・・・?誰を、何を信じればいいのか?自分はどう行動するべきか?そして、「バベル九朔」を救う方法は?満大に決断の時が迫る。残された時間はあとわずか!一体どうなってしまうのかと、期待が高まるが・・・。
何とも不思議で、理解し難いというのが、正直な感想だ。満大は、どうなってしまったのか?作者は何を言いたかったのか?よく分からないまま読み終えてしまった。何だかすっきりしない結末だった。



| 万城目 学 | 21:50 | comments(0) | ゆこりん |


ドクター・デスの遺産(中山七里)

「往診に来た医者が父を殺した!」
少年の訴えが事の始まりだった。単なる少年の思い込みだと考えていた犬養は、そこに恐るべき事実が隠されているのを知ることになる・・・。
「刑事犬養隼人」シリーズ4。

医者が来て父に注射をした。間もなく父は死んだ。少年は、父が医者に殺されたと訴える。そこには、思いがけない問題が隠されていた・・・。
「安楽死」の問題を真っ向から取り上げた作品。助かる見込みのない病人。そして、それを支える家族。精神的にも経済的にも、しだいに追い詰められていく。苦しむ病人のため、疲弊している家族のため、安楽死は許されるべきなのか?生きる権利があるように、人には死ぬ権利もあるのか?
読んでいて、本当に難しい問題だと思った。「違法」という言葉では簡単に片付けられない事情がそこにはある。
犯人の意外性、ラストの犬養の行動など、面白く興味深く読んだ。とても考えさせられる内容の作品だった。



| 中山 七里 | 21:06 | comments(0) | ゆこりん |


野の春(宮本輝)

昭和42年。松坂熊吾の息子・伸仁は20歳になった。50歳で息子を授かった熊吾の願いは、「息子が20歳になるまでは絶対に死なん」ということだった。その願いは叶い、家族三人で祝うことになったが・・・。
流転の海第9部。完結編。

幼くひ弱だった伸仁は、成長するにつれたくましくなっていく。一方、熊吾は老いが目立つようになった。それでも彼は立ち止るどころか、さらに時代の中を駆け抜けて行こうとする。最後の最後まで、生きることに手を抜かない信念の人だったと思う。戦中戦後の激動の時代の中、何事にも動じることなく常に前向きに生きてきた。その熊吾の人生を振りかえると、感慨深いものがある。
長い年月、本当に長い長い年月、このシリーズを読んできた。全て読むことができて、ほっとしている。生きるということは、楽しくもあり、悲しくもあり、そして苦しくもあり・・・。でも人は生きる。生き続けようとする。何かのために、誰かのために。
生きることの意味、そして人間とは何かを、深く考えさせられた。読みごたえのある本当に面白いシリーズだった。



| 宮本 輝 | 19:37 | comments(0) | ゆこりん |


かわたれどき(畠中恵)

「かわたれどき」とは、朝まずめ(夜明けから日の出までの前後1時間程度の時間帯を表す)の闇と明るさの間で、何もかもが、はっきりとは形を取らない刻限のことだ。その時刻に、大水に流され木にしがみついたまま取り残されたお雪が見たものは果たして何だったのか?そして、お雪の身に起こったできごととは?
表題作を含む6編を収録。「まんまこと」シリーズ7。

同じ町名主の八木家の当主で麻之助の友人でもある清十郎が父親になった。一方では、麻之助の亡き妻お寿ずの縁者であるおこ乃の縁談がまとまった。麻之助をめぐる環境も、少しずつ変化している。そして、麻之助自身も・・・。
今回も盛りだくさんの内容だ。麻之助の縁談話、持ち込まれた絵の謎、やっと探し当てた生き別れの息子は本当にわが子なのか?江戸に広がる怪しい噂、娘4人が持ち込んだやっかいな話、かわたれどきにお雪が見たものは?などなど。
平凡でおだやかな幸せを願う人たちがいる。だが、そのささやかな願いさえかなえられない人もいる。何気ない日常の中にも、悲しみは潜んでいる。麻之助にも新たな幸せが早く来ますようにと、願わずにはいられない。
切ない中にも、人情が感じられる作品だった。



| 畠中 恵 | 22:31 | comments(0) | ゆこりん |


ファーストラヴ(島本理生)

女子大生・聖山環菜が父親を刺殺した!?環菜の事件を題材にしたノンフィクションを執筆するよう依頼された臨床心理士の真壁由紀は、環菜と面会しいろいろ話を聞く。そこで見えてきたものは・・・。

「自分の父親を刺殺」という事件を起こした環菜。環菜が逮捕されたときに言った台詞が、世間をにぎわせていた。いったい彼女はなぜそんなことを言ったのか?環菜との面会の中で、彼女の心の中にあるものを探り出そうとする由紀。そして、しだいに見えてきた彼女の抱える闇の正体・・・。
環菜の置かれていた状況が異常であることは明白だ。環菜の父も母も、そこまで環菜が傷つくとは想像できなかったのか?子供を守れるのは親しかいない。その親を頼れないと知ったときの環菜の心情は、察して余りある。環菜の心はいつも血を流していたと思う。もう限界だったのだと思う。
これからの環菜の人生がどうなるのか、想像がつかない。けれど、少しでも幸せを感じるものであってほしいと願わずにはいられない。
環菜のことは切なかったが、由紀や由紀の夫・我聞、そして我聞の弟・迦葉にまつわる話には、心温まるものを感じた。
傷ついた者にそっと寄り添うような作品だった。読後感もよかった。



| 島本 理生 | 10:44 | comments(0) | ゆこりん |


キング誕生(石田衣良)

戦国状態だった池袋がひとつにまとまり安藤崇がキングになるまでには、さまざまなできごとがあった・・・。タカシとマコトの高校時代を描いた、池袋ウエストゲートパーク青春篇。

タカシとマコトの高校時代のできごと、タカシのたったひとりの兄・タケルを襲った悲劇などが描かれている。なぜタカシがキングになったのかが分かる作品だ。
ただ、他の方も書評で書かれているように、時代背景に疑問を感じる。後から過去の話を作ると、どうしても矛盾が生じる。それがとても気になった。内容も取ってつけたようなストーリー展開で現実味に乏しく、共感を持って読むことができなかった。
厳しい言い方をすれば、この本は別に無くてもよかったと思う。シリーズの中でなぜタカシがキングになったのかが少しずつ分っていくだけで充分だという気がする。期待していたほどの面白さではなく、残念だった。



| 石田 衣良 | 21:45 | comments(0) | ゆこりん |


本と鍵の季節(米澤穂信)

高校2年生の堀川と松倉は、図書委員。利用者がほとんど来ない放課後の図書室で、図書の仕事をこなしていた。そこに、すでに図書委員を引退した先輩の浦上麻里がやってきた。亡くなった彼女の祖父の金庫を開けるための番号を調べてほしいという依頼だったのだが・・・。「913」を含む6編を収録。

「913」は、単純に金庫を開けるための番号を謎解きのように当てる話かと思ったが、そうではなかった。金庫の持ち主である祖父とその親族の関わり方が意外だった。
「ロックオンロッカー」では、堀川の行きつけの美容室で起こったできごとが描かれている。美容師の言動の中に伏線があり、真相が分かったときには「なるほど!」と感心した。
1年生の男子生徒の兄の無実を証明する「金曜日に彼は何をしたか」、自殺した生徒が最後に読んでいた本を探る「ない本」も、巧妙なストーリーで謎解きを楽しむことができた。
だが、一番強烈に印象に残ったのは、「昔話を聞かせておくれよ」と「友よ知るなかれ」だった。松倉の高校生らしからぬ言動の原因が垣間見えた気がした。だが、真相を知ることが本当によかったのか・・・?読んでいて複雑な思いだった。「友よ知るなかれ」のその後も気になる。
謎が解けても後味の悪さが残る話が多かったが、面白く読みごたえがあった。



| 米澤 穂信 | 23:22 | comments(0) | ゆこりん |


七つの試練(石田衣良)

SNSで出された課題をクリアして「いいね」をもらう。課題は七つ。だが、七番目の課題は命をかける課題だった!「デスゲーム”七つの試練”の管理人は誰だ?」タカシとマコトの追跡が始まった・・・。
表題作を含む4編を収録。IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズ14。

「いいね」をもらうためには自分の命をかけるのか?やさしい課題からしだいに困難な課題に。参加する若者は、まるで暗示をかけられたみたいに課題をクリアすることにのめり込む。ゲームの管理人は、ゲームの参加者がどうなろうと・・・死のうが生きようが、いっこうにかまわない。マコトとタカシは、そんな管理人をあぶり出そうとある計画を立てた。はたしてそれはうまくいくのか?タイムリミットが迫る中での攻防は読みごたえがあった。
他の、スキャンダルのために全てを失おうとしている若手俳優(なんと!タカシの友人!)の話「」泥だらけの星」、出会いカフェを舞台にしたあるトラブルの話「鏡のむこうのストラングラー」、マコトの中学時代の同級生が住むマンションの怪音の正体を暴く「幽霊ペントハウス」の3編も、まあまあ面白かった。
マンネリ化という声もあるが、私個人としてはこのシリーズが続くことを願っている。次回作も期待したい。



| 石田 衣良 | 22:30 | comments(0) | ゆこりん |


裏切りのホワイトカード(石田衣良)

渡された白いカードでコンビニのATMを操作する。たったそれだけで、報酬は10万円!だが、うまい話には裏があった。Gボーイズや池袋の治安を守るため、タカシとマコトは奔走する。表題作を含む4編を収録。
IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズ13。

表題作のほかに、継父に虐待されている少年を実の父親やマコトたちが助けようとする「滝野川炎上ドライバー」、悪い男に違法薬物を飲まされている母を救おうとする娘とそれに手を貸すマコトたちを描いた「上池袋ドラッグマザー」、普通の人には見えないものが見える霊感の強い少女が巻き込まれたトラブルを描いた「東池袋スピリチュアル」が収められている。
世の中、人の弱みにつけ込んだり、弱い者を攻撃したりする人間は大勢いる。、だましたりだまされたり。裏切ったり裏切られたり。そんなことも珍しくはない。タカシもマコトも、困っている人間や不幸な人間には迷わず手を差し伸べる。どんなことをしても、トラブルを解決しようとする。その解決方法は、読んでいて爽快だ。時代は移り変わり、タカシやマコトも年齢を重ねていく。だが、状況が変わっても、これからもこのシリーズを読んでいきたいと思っている。



| 石田 衣良 | 21:14 | comments(0) | ゆこりん |