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想い雲(みをつくし料理帖3)(高田郁)

ある日つる屋に、神田永富町の版元「坂村堂」の店主と戯作者の清右衛門が訪れる。澪の料理をひどく気に入った坂村は、自分のところに雇い入れている料理人にこの味を覚えさせたいと言いだした。翌日やって来た料理人は、何と!かつて天満一兆庵の若旦那・佐兵衛とともに働いていた富三だった・・・。。「みをつくし料理帖」シリーズ3。

富三が語る佐兵衛の失踪の原因は、衝撃的なものだった。「まさか佐兵衛がそんなことを・・・。」母親である芳は衝撃を受ける。はたしてそれは真実なのか?また、シリーズ3では、吉原にいる幼なじみの野江とのつかの間の再会も描かれている。大阪の水害で死んだと思っていた野江。吉原にいることが分かってからも、そう簡単に会うことはできなかった。野江はこれから先どうなるのか、そのことも気にかかる。一方、澪がほのかに想いを寄せている小松原の存在も気になる。小松原には何か秘密がありそうだ。
今回もとても楽しませてもらった。澪が作る料理もおいしそうで、「食べたい!」と思うものばかりだった。次回も楽しみだ。



| 高田 郁 | 21:17 | comments(0) | ゆこりん |


花散らしの雨(みをつくし料理帖2)(高田郁)

神田御台所町にあった店が焼失した後、元飯田町に場所を変えてつる屋は新たなスタートを切った。忙しくなったつる屋は、新たに下足番としてふきという少女を雇い入れた。だが、ふきを雇い入れた頃から、澪の創作料理がライバル店である登龍楼から先に出されるようになった。澪は、ふきの不審な行動に気づくが・・・。「みをつくし料理帖」シリーズ2。

幼い少女が大人たちの妬みや恨みのために利用された。ふきとその弟の過酷な運命を思うと胸が痛んだ。このふたりはこれからどうなるのか、目が離せない。
また、澪たちと同じ長屋に住むおりょうの息子・太一が麻疹に罹った時の描写も印象に残った。伊佐三とおりょうの息子・太一は、実の親を火事で失い、そのショックから口がきけなくなっていた。だが、伊佐三とおりょうは、実の子同様に太一をかわいがっていた。その太一が麻疹になってしまう。当時は命にかかわる大変な病気だ。生きるか死ぬか?ふたりの懸命の看病が胸を打つ。そして、このことがきっかけで、澪、芳とおりょう一家との間に固い絆ができる。助けられたり、助けたり。人情味にあふれる話は感動的だ。
まだまだ謎もある。これから先どうなるのか気になることもたくさんある。次回が楽しみだ。とても面白かった。



| 高田 郁 | 22:08 | comments(0) | ゆこりん |


八朔の雪(みをつくし料理帖1)(高田郁)

神田御台所町の「つる家」で料理の腕をふるう澪。彼女は、洪水のため幼くして両親を失い天涯孤独の身だった。「つる屋」は澪の料理が評判で、客がひっきりなしにやって来た。だが、その繁盛を妬む者がいた・・・。「みをつくし料理帖」シリーズ1。

大阪に住んでいた澪は、幼い時に大水害で両親を失った。その澪を救ったのは、「天満一兆庵」の主人・嘉兵衛とその妻・芳だった。だが、その「天満一兆庵」も火事で焼けてしまう。嘉兵衛、芳、澪の3人は江戸にいるはずの嘉兵衛の息子・佐兵衛を頼ることにしたのだが、佐兵衛は行方知れずで江戸の店もなかった・・・。
失意の中で嘉兵衛は亡くなってしまう。そして芳も体調がすぐれない。だが、澪は負けなかった。創意工夫を重ね、澪は江戸の人たちの口に合う料理を考え出す。つる屋は繁盛した。だが、これから!という時に事件は起きた・・・。
このシリーズは、どんな逆境にも負けずおのれの信念を貫いたひとりの女性の物語だ。シリーズ1から波乱の展開で、この先どうなるのかワクワクする。この作品に登場する料理も興味深い。面白い作品だった。



| 高田 郁 | 22:14 | comments(0) | ゆこりん |


魂でもいいからそばにいて(奥野修司)

愛する人、かけがえのない人を突然失ったら、どんな形でもいいからその人に会いたいと願わずにはいられないだろう。多くの犠牲者が出た3.11後の霊体験をまとめた話。

突然、本当に突然、自分にとって大切な人を失ってしまったら、その喪失感はいったいどれほどのものだろう・・・。東日本大震災では、多くの人が犠牲になった。遺された人たちは、悲しみや絶望、そして後悔を抱えることになる。
そんな被災地で、数々の不思議な体験が語られ始めた。亡くなったはずの夫の姿を見た、亡くなった息子の気配を感じた、亡くなった兄からメールが届いた・・・。霊体験。信じない人も多くいるだろうと思う。けれど、この本に収められている話は、単純に否定できないものがある。生きているときも死んでしまった後も、家族の絆は続いているのだ。家族の身を案じる気持ちはどんな状況になっても消えることはないのだ。
東日本大震災・・・。本当にひどいできごとだった。被災した方々が、これから先希望を持って暮らせるようになりますように。そう願わずにはいられない。犠牲者の方々のご冥福をあらためてお祈り申し上げます。



| ”お” その他 | 22:20 | comments(0) | ゆこりん |


素敵な日本人(東野圭吾)

達之・康代夫妻は、元旦の早朝に初詣に出かけた。ふたりにはある決意があった。だが、神社で町長が倒れているのを発見してから、事態は思わぬ方向へと動き出す。「正月の決意」を含む9編を収録。

「正月の決意」はラストが良かった。真面目に生きてきたふたりの決意は、いい加減に生きている人間たちを目の当たりにしてどうなるのか・・・?これから先苦労はするかもしれないが、ふたりの未来に幸あれと祈るばかりだ。
「十年目のバレンタインデー」「壊れた時計」「クリスマスミステリ」は、殺人事件がからむ話だ。どの話もすっきりまとめられていて、読後感も悪くなかった。悪いことはできないものだ・・・。
「サファイアの奇跡」はネコが登場する話だが、ネコと少女の絆にホロリとした。
「水晶の数珠」も印象に残る話だった。やはり、親はいつも子供を愛し、その身を案じている。たとえ冷淡に装っていたりしても・・・。家族の絆は何物にも代えがたいと思う。余韻が残る話だった。
どの話も気軽にサラリと読める。なかなか面白かった。作者の感性が光る作品だった。



| 東野 圭吾 | 21:55 | comments(0) | ゆこりん |


慈雨(柚月裕子)

「42年間の警察官人生は、はたして自分にとってはどうだったのか?」
警察官を定年退職した神場は、妻・香代子とともに四国お遍路の旅に出た。神場の胸に去来するのは、16年前に起こった幼女が殺害された事件だった。彼の心に深い傷を残した事件の真相とは・・・。

神場は16年前の出来事を胸に秘めながら妻と四国遍路の旅を続けていた。だが、ニュースで見たある事件をきっかけに、心がざわつくようになる。かつての部下に連絡を取りその事件のあらましを聞くうちに、彼は今回起こった事件と16年前の事件とを重ね合わせるようになる・・・。
警察官の使命は何だ?人々の安全を守ることか?それとも、自分たちの組織の対面を守ることか?16年前に優先するものを間違えた結果が、現在に影響を及ぼす。神場は真実を暴く決意をするが、それは同時に自分が歩んできた警察官としての人生を否定することにもなる・・・。だが、神場はおのれの信念を貫き通す。その描写はなかなか読み応えがあった。
現実にはありえないのでは?と疑問に思う部分もあったが、四国遍路、ミステリー、家族、さまざまなできごとやテーマを含んだ、まあまあ面白い作品だった。



| ”ゆ” | 22:35 | comments(0) | ゆこりん |


ディセント 生贄の山(ティム・ジョンストン)

家族で出かけたロッキー山脈のリゾートタウン。だが、それが悲劇の始まりだった。大学進学を控えた姉のケイトリンが行方不明になり、弟のショーンが大けがを負った状態で発見された。「ケイトリンはどこへ?」必死の捜索が始まったが・・・。

トラック競技の奨学金を得て、ケイトリンは大学進学を控えていた。その彼女がリゾート先で、マウンテンバイクに乗った弟のショーンとジョギングに出かけたまま行方不明になる。そしてショーンは、後遺症が残るほどの大けがを負った・・・。
ここから、残された家族の悲劇が始まった。愛する娘を突然失った父と母。姉を守り切れなかったと苦悩する弟。家族はバラバラになった。身も心も。どこにも救いはない。ただ重苦しい空気だけが漂う。ひとりの人間が突然失踪する。それがどれだけ周りに影響を及ぼすのかが、痛いほど伝わってくる。家族は苦しみ続ける。何年も何年も・・・。「つらいつらいつらい。」何度もそう思いながら読んだ。そして、もうだめかと思われたときに、事態は大きく動く。だが、どんな結末であれ、家族が元の状態に戻ることはない。それまでの悲しみや苦しみが消え去るわけではない。やりきれない思いが心の中に残る。
衝撃的な話だ。読後感もよくない。けれど、さまざまなことを考えさせられる作品だった。



| ティム・ジョンストン | 20:14 | comments(0) | ゆこりん |


遠い唇(北村薫)

何十年かぶりに見た学生時代の同人誌。その中にはさまっていたのは、姉のように慕っていた今は亡き先輩から届いたハガキだった。そのハガキに書かれていた暗号めいたアルファベットの文字には、先輩の想いが込められていた・・・。表題作「遠い唇」を含む7編を収録。

学生時代に受け取った時には分からなかったアルファベットの文字の暗号の意味が、何十年もたってから分かった。だが、そこに込められた先輩の想いにようやく気づいた時、先輩はもうこの世の人ではなかった。「遠い唇」は読んでいてとても切なかった。先輩はなぜ自分の想いを直接伝えなかったのか?伝えなかったことを後で悔やむことはなかったのだろうか・・・?哀しい余韻が残る。
「しりとり」も、切ない話だった。命が尽きようとしている夫が、愛する妻に残したしりとりの謎。そこには、あふれんばかりの愛があった。ホロリとする話だった。
「ビスケット」では、「冬のオペラ」という作品に登場した名探偵・巫弓彦と姫宮あゆみが登場する。ふたりにまた会えた!!
何気ない日常の中からきらりと光る謎を紡ぎ出す。作者の独特の感性に彩られた楽しい作品だった。



| 北村 薫 | 17:10 | comments(0) | ゆこりん |


ビブリア古書堂の事件手帖7(三上延)

栞子の母はなぜ姿を消していたのか?栞子と大輔の関係はいったいどうなるのか?シェイクスピアの古書をめぐる謎が解き明かされたとき、真実の扉が開かれた。シリーズ完結編。

シリーズ1〜6には、さまざまな本をめぐる謎があった。栞子と大輔は、何度か危険な目に遭いながらもそれらを解決してきた。そして、最後に残ったのは、栞子の母・智恵子にまつわる謎だった。彼女はなぜ栞子とその妹を置いて姿を消したのか?彼女の追い求めるものは何なのか?シリーズ7では、真実が明らかになる。
重要なカギを握るのは、シェイクスピアのファーストフォリオと呼ばれる稀覯本だ。その本をめぐる攻防戦の描写は、見事だ。いったいどちらに勝利の女神がほほ笑むのか?手に汗握る展開だった。
シリーズ1〜7は、どれも面白かった。本好きにはたまらない作品だ。このシリーズ7は、まさに完結にふさわしい内容だった。読みごたえがあり、読後感も悪くなかった。ただ、このシリーズも最後だと思うと、読み終えてしまうのがすごく惜しかった。できれば、栞子と大輔の物語を別の形でまた書いてほしいと願っている。



| 三上 延 | 21:57 | comments(0) | ゆこりん |


三鬼(宮部みゆき)

やむを得ない事情があったとはいえ、家臣同士の私闘はご法度。掟を破り牢に入れられた村井清佐衛門は、異例の処分で山番士として洞ヶ森村へ発つことになった。だが、その村には恐ろしい秘密があった・・・。表題作「三鬼」を含む4編を収録。三島屋変調百物語シリーズ4。

「怖かった!!」と言っても、怪談ではない。人の心が怖かった。鬼はいる。確かにいる。だが、もともといたわけではない。鬼は、人の心が作り出すものなのだ。恨みや妬み、疑いや嫌悪、そして貧困・・・。それらは人の心を荒ませる。そして、その荒んだ心がこの世に鬼を生み出す。作者は、人の心の陰の部分を巧みに描いている。だが、感じるのは恐ろしさだけではない。救いようのない悲哀さも感じる。「三鬼」では、貧しさゆえの悲劇を描いている。どんなに努力しても報われないこともあるのだ。「迷いの旅籠」では、あの世とこの世を独特の世界観で描いている。「食客ひだる神」では、神の存在を不思議なタッチで描いている。「おくらさま」は、ある娘の憤懣と悲しみの果てに起こった悲劇を描いている。
鬼を生み出すのは、特別な人間ではない。それは、どんな人間でも可能なのだ・・・。
面白いだけではなく、人間の本質を深く考えさせられる読みごたえのある作品だった。オススメです。



| 宮部 みゆき | 21:46 | comments(0) | ゆこりん |