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罪の轍(奥田英朗)

昭和38年、漁師の手伝いをしていた青年・宇野寛治は、窃盗事件を起こす。住んでいた北海道・礼文島にはいられなくなり、彼は東京へ逃亡する。その東京で起こった強盗殺人事件、そして幼児誘拐事件。このふたつに宇野は関わっているのか?刑事・落合昌夫の執念の捜査が始まる・・・。

子供のころのある出来事が原因で、宇野は脳に機能障害を抱えている。子供たちからは「莫迦」と呼ばれる。そんな宇野が事件を起こす・・・。
この作品で描かれている幼児誘拐事件は、昭和38年に起こった「吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐事件」を彷彿とさせる。
「身代金を受け取りに来たところで犯人を逮捕し、子供を無事両親のもとへ返す。」警察の必死の捜査が始まる。本当に宇野が犯人なのか?先が気になり、ページをめくる手が止まらなかった。
面白いと思う。だが、かなりの長さの作品で、少々うんざりした。ここまでの長さが果たして必要だったのか?個人的には、疑問だ。ダラダラ感が強いので、もう少し的確にコンパクトにまとめたほうがよかったと思う。また、これだけ長いのに、ラストは意外とあっさりだったので拍子抜けした。犯人が犯行に至った経緯も描写がイマイチだった。こういう部分こそ、長くなってもいいから丁寧に描くべきではなかったのか。読後、感動が得られなかったのも残念だった。

ちなみに・・・
 吉展ちゃん誘拐事件を扱ったノンフィクションは、おススメです!
   → 「誘拐」(本田靖春)



| 奥田 英朗 | 21:47 | comments(0) | ゆこりん |


向田理髪店(奥田英朗)

過疎に悩む田舎町だけれど、そこに住む人たちには人情があった。息子の問題、親の介護問題、異国の花嫁、映画のロケ地に決定などなど、次々起こるできごとに、町のみんなが協力し合う。北海道の寂れてしまった炭鉱町を舞台にした心温まる物語6編を収録。

過疎化が進みどんどん衰退していく町。何とか街を活性化しようと、若者たちが立ち上がる。そんな町に、いろいろなできごとや問題が起こる。その内容はかなり深刻なものだと思う。だが作者は、話が暗くならないようにそれらをユーモラスにさらりと描いている。
小さな町だ。だから、何かが起こるたびに住人達は一致団結して事に当たる。その団結力は素晴らしい。他人のためにそんなにも一生懸命になれるものなのか。今の世の中、「自分のことで手いっぱいで他人のことなどかまっていられない。」そう言う人間が多いのに・・・。
ほのぼのとしたいい話ばかりだと思う。けれど、ひとつ気になったことがある。それは、この本の中で使われる北海道弁だ。すごく違和感がある。北海道生まれの北海道育ちでない人間が書くと、こうもひどい北海道弁になってしまうのかとがっかりした。この本を読んだ人に「北海道の人はこういう言葉を使うのか。」と思われるのはすごく悲しいし、くやしい。もっと北海道弁のことを調べて適切に使ってほしかったと思う。面白い話だと思うだけに、そこのところがすごく残念だった。



| 奥田 英朗 | 15:12 | comments(0) | ゆこりん |


我が家のヒミツ(奥田英朗)

どこにでもありそうな家庭。そして家族。平凡に見えても、その家の中には秘密が隠されているのだ・・・。六つの家族の、心温まる物語。

読んでいて、「こういう家庭は現実にもあるかもしれない。」と思った。そう思うとそれぞれの話がとても身近に感じられ、話の中にどんどん引き込まれていった。ほのぼのとした話。読むのがつらい話。ホロリとする話。家庭の事情は千差万別だ。
六つの話の中で一番印象に残ったのは、「手紙に乗せて」だ。突然妻を病気で喪い悲嘆にくれる夫・・・。子供たちは必死で励ますが、うまくいかない。そんなとき、息子の会社の上司が手を差し伸べてくれる。悲しみを本当に理解してくれるのは、同じ悲しみを味わった人なのだ。切ない中にも一筋の希望が見えるような話だった。
「家族はやっぱりかけがえのない存在なのだ。」とあらためてそう思わさせてくれる、深い味わいのある作品だった。



| 奥田 英朗 | 21:37 | comments(0) | ゆこりん |


我が家の問題(奥田英朗)

新婚夫婦の悩み、両親の離婚問題に揺れる姉弟、夫の抱えている問題に気づいた妻、それぞれの実家への里帰りについて・・・。日常のどこにでもあるような”我が家”の問題を取り上げた作品。

「当人たちには大問題でも、周りの人間から見たらささいなこと。」そういうことが多々ある。この作品の中に登場する人たちが抱えるのもそんな問題なのかもしれない。中には”両親の離婚”という深刻な問題もあるが・・・。
平凡な日常の中の平凡な問題だからこそ、読んでいて人ごととは思えない。夫の職場での立場、夫の趣味、妻の趣味、新婚の甘い生活の中に潜む不満などなど。でも、ここに登場する人たちは、「自分たちの力で何とか解決しよう!」「少しでも事態を改善するようがんばろう!」と前向きだ。もちろんひとりではできない場合もある。そんなときは家族の協力が不可欠だ。「家族ってやっぱりいいなぁ♪」この作品を読むと強くそう思う。切ない中にもほのぼのとしたぬくもりを感じ、そして前向きな気持ちになれる作品だった。



| 奥田 英朗 | 20:00 | comments(0) | ゆこりん |


ナオミとカナコ(奥田英朗)

職場で張り合いのない毎日を送る直美。夫の暴力に耐え続ける加奈子。直美は、親友加奈子を夫の暴力から救うため、究極の選択をする。ふたりは、加奈子の夫を”排除”することにした・・・。

「加奈子の夫をこの世から排除する。」
直美は加奈子と協力して、細心の注意を払い周到に計画を練り上げる。一部の隙もない完璧な計画に思えたが、事を終えた後にさまざまなところから綻びが生じる。どんなに取り繕おうとしても、事態は最悪な方向に転がり落ちていく・・・。
完璧な計画だと思っていても、100%完璧なものはない。当人たちが気づかぬところから、築き上げた計画は崩れ始める。良かれと思ってやったことも、裏目に出てしまう。一度崩れ始めたら、もう誰にも止められないのだ。先が気になり、ページをめくる手が止まらない。しだいに追い詰められていく直美と加奈子はどうなるのか?ラストまで心臓がドキドキし続けたままだった。これからの人生、ふたりにとって少しでも幸せを感じるものであってほしいと願う。
「都合のいい展開だ。」と思う部分も何ヶ所かあったが、読み応えのある面白い作品だった。



| 奥田 英朗 | 19:21 | comments(2) | ゆこりん |


最悪(奥田英朗)

鉄工所を経営する川谷は、不況下での仕事の減少、取引先の無理な注文などで悩んでいた。さらに追い討ちをかけるように、近隣の住民との間に騒音問題が生じていた。銀行員の藤崎みどりは、妹や家族の問題、上司のセクハラで悩んでいた。野村和也は、ヤクザとの間に問題が生じ、それを解決しなければならない状態に追い込まれていた。まったく関係のない3人が接点を持ったとき、事態は思わぬ方向に転がり始めた。はたして、3人の運命は?

誰もが、自分の置かれている立場や状況を好転させたいと思っている。だが、もがけばもがくほど泥沼にはまり込んでしまう・・・。この作品に登場する3人は、まさにそんな状態だった。努力がまったく報われない。状況はどんどん悪くなるばかりだ。坂道を転がり落ちるように、3人はあっという間に「最悪」の状態に陥る。追いつめられていく過程や、それぞれの心理描写は見事だった。特に、川谷の描写はすごい。動悸や息遣いが、読み手側に伝わってくるような迫力があった。3人の接点、そしてそこからのラストへの展開もよかった。「いったいどうなるのか?」そのハラハラ感がたまらない。読後もすっきりとしていて好感が持てる。分厚いけれど、一気読みさせるほどの面白さを持った作品だった。満足♪



| 奥田 英朗 | 18:51 | comments(0) | ゆこりん |


オリンピックの身代金(奥田英朗)

日本は、「東京オリンピック」を開催することにより、完全に戦争の痛手から立ち直った姿を世界各国に示そうとしていた。誰もがオリンピックに夢や希望を抱いているかに見えた。だが、警察を狙う爆破事件が発生する。オリンピックを妨害しようとする事件だったが、このことは日本国民に知られることはなかった・・・。一人の若者の生き様を衝撃的に描いた作品。

高度経済成長期の日本。「東京オリンピック」という華やかな祭典の陰には、いまだに貧困にあえぐ人たちがたくさんいた。日の当たるところにいる者とそうでない者との激しい格差には言葉もない。そのまま何事もなければ、東大生である島崎国男も日の当たる道を歩き続けることができただろう。だが、彼に仕送りを続けていた兄の死が、彼を変えてしまう。「自分を日の当たる場所に出すために、どれだけ家族が犠牲を払っていたのか!」そう思う島崎は、兄の死を乗り越えることができなかった。そして、兄と同じ境遇に自分の身を置いたとき、日本の国が抱える矛盾に気づいてしまった。「日本の国の豊かさは、ごく一部の人間たちのものだ・・・。」
彼の境遇には同情すべきところもある。たった一人で、「あったこと」を「なかったこと」にしてしまうような恐ろしい国家権力に挑む姿は、「孤高」という言葉にふさわしいように見える。だが、実際にやっていることは狂気の沙汰としか思えない。彼の行動には、理解も共感もできなかった。
長すぎる気もするが、いろいろなテーマを含んだ読み応えのある作品だった。読後も不思議な余韻が残った。



| 奥田 英朗 | 14:27 | comments(0) | ゆこりん |


家日和(奥田英朗)

男にとって家とは?家族とは?女にとって家とは?家族とは?日常を生きるさまざまな家族の姿を描いた6編を収録。

どの話も個性的で味わいがある。中でも、ネットオークションにはまっていく主婦紀子を描いた「サニーデイズ」は、一番好きな話だった。最初は不用品を売る目的で始めたネットオークションだったが、その目的が思わぬ方向にそれて行く。その様はとても面白かった。何でも売ってしまおうとした紀子。だが、決して売れないもの、売ってはいけないものがあることに気づく。家族の良さをしみじみと感じさせてくれるラストもよかった。会社が倒産したことにより主夫に目覚めていく男の話「ここが青山」、男の居場所を作り上げる話「家においでよ」も興味深かった。「家っていいな♪家族っていいな♪」そんなほのぼのとした気持ちにさせてくれる作品だった。



| 奥田 英朗 | 15:58 | comments(0) | ゆこりん |


町長選挙(奥田英朗)

オリンピックじゃないけれど、4年に一度の町長選挙。勝つのは小倉か八木か?島を二分する戦いに、この島に赴任してきた24歳の宮崎良平は胃の痛くなる毎日を送っていた。そこへ、2ヶ月の約束でおなじみの伊良部が短期派遣医師としてやって来たが・・・。表題作を含む4編を収録。

寂しさもがまんする。弱さも見せない。年齢の衰えも平気なふりをする。強がってみても、心が悲鳴を上げるときがある。病んでしまった心を治すのは精神科医の仕事だが、こんなのが治療なのかと伊良部の仕事ぶりにはいつも首をかしげてしまう。ふざけているのか真面目なのか?だが、伊良部の何気ない一言が患者を救うこともある。ん?偶然?深刻な患者には深刻に考える医者は必要ないのかもしれない。伊良部と一緒に笑ったり怒ったりしているうちに、いつの間にか治ってしまう。こんな医者が実際にいたら楽しいだろうといつも思う。伊良部医師の今後の活躍(?)に期待したい。



| 奥田 英朗 | 16:34 | comments(0) | ゆこりん |


東京物語(奥田英朗)

1970年代後半から80年代。携帯もない時代だったけれど、楽しかった・・・。田村久雄という一人の男性の、10代後半から20代を描いた作品。

70年代、そして80年代。その時代時代の主な出来事を背景に描かれたこの作品は、同時代同世代だった私の心を懐かしさでいっぱいにする。親から離れたい、大学生活を楽しみたい、一人前に仕事をしたい。どれをとっても私が考えていたことと同じだ。喜びもあったが、時には挫折もあった。いろいろなことを経験し乗り越えて、今の自分がある。できれば今現在の久雄に会ってみたいと思った。どんな人生を送っているのだろうか?



| 奥田 英朗 | 17:47 | comments(0) | ゆこりん |