恋文(連城三紀彦)
2007.07.27 Friday
不治の病に冒され余命いくばくもない元恋人の看病のために家を出た夫へ、妻から渡した恋文は・・・・。表題作を含む5編を収録。
時に、人は嘘をつく。その嘘は自分のためだけではない。相手を思いやる気持ちが嘘をつかせることもある。そのことが胸にぐっと来る。それぞれの話の中、登場人物のつく嘘もそれぞれだけれど、そこには一様に切なさがただよっている。5編とも心に残る話だったが、愛する妻に悲しい嘘をついた男の話の「ピエロ」、叔父、姪、姪の娘の3人の心が織りなす切ない話の「私の叔父さん」が印象に残る。洗練された、しっとりと味わいのある作品だった。
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