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秋期限定栗きんとん事件(米澤穂信)

  

小山内さんとは夏休みに別れてしまった・・・。そんな小鳩常悟朗を、手紙で呼び出す女性が現れた。一方、小山内さんにも新たな出会いが!?そんな中、学校の新聞部は連続放火事件を扱うことになった。次第にエスカレートする放火の規模。なかなか解決しない事件に、ついに常悟朗は解決に乗り出すのだが・・・。
「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定トロピカルパフェ事件」に続くシリーズ3作目。

新聞部の瓜野は、学内新聞で放火事件を扱おうとするが、部長の堂島が難色を示す。だが、堂島を説き伏せ彼は放火事件を大々的に扱う。そして、瓜野の考えた通りの順番で事件は起こっていく。これはいったいどういうことなのか?そして、瓜野とつき合っている小山内さんがこの事件にどう関わってくるのか?さらに、小鳩常悟朗はこの事件をどう解決しようというのか?はたして、高校生が手に負える事件なのか?たくさんの「?」が、頭の中で飛び交う・・・。
よく練られたストーリーだと思う。登場人物の心理描写もよかった。読み応えのある面白い作品だった。



| 米澤 穂信 | 22:36 | comments(0) | ゆこりん |


夏期限定トロピカルパフェ事件(米澤穂信)

夏休みの初日、小山内さんが小鳩常悟朗の家にやって来た。手には一枚の地図。そこにはいろいろなお菓子屋さんの場所が記されていた。小山内さんは、ふたりで夏休み中にこれらの店を回ろうと言う。だが、真の目的は、おいしいお菓子を食べることではなかった・・・。
「春期限定いちごタルト事件」に続くシリーズ2作目。

小山内さんはすごい!とても高校生の女の子には思えない。しかも怖い!その無邪気な笑顔にだまされてはいけない。彼女が巧妙に仕掛けた罠に、ターゲットは見事にはまっていく。狙った獲物は確実に仕留めるのだ。
常悟朗は、最初は小山内さんの企みに気づかなかった。だが、気づいてしまってからは、ふたりの関係は微妙に変化していく。ある事件はいちおう解決するのだが、ふたりの心は以前のままではなくなってしまった・・・。この後、ふたりはどうなってしまうのか?とても気になる終わり方だ。
考え抜かれた絶妙なストーリーは、最初から最後まで読み手を釘付けにする。面白い作品だった。



| 米澤 穂信 | 20:51 | comments(0) | ゆこりん |


春期限定いちごタルト事件(米澤穂信)

小鳩君と小山内さん。ふたりは、つつましい小市民を目指す高校1年生だ。だが、彼らの前に次々と謎が現れる。小市民を目指すはずのふたりが取った行動は・・・。

小鳩常悟朗と小山内ゆきは、中学3年生の初夏から一緒にいる。受験戦争を勝ち抜き高校生になったふたりは、単なる友人ではない。目立たないように存在する小市民を目指す同志なのだ。だが、ふたりの意に反して、周りでは次々に謎のできごとが起こる。謎を前にして、常悟朗の血が騒ぐ。目立たずに謎を解くことができるのか?そして、最大の事件が!!ゆきがやっと手に入れた春期限定のいちごタルトが、何者かに自転車ごと持ち去られてしまったのだ!常悟朗とゆきは、取り戻すべく犯人探しの行動を起こすが・・・。
軽快でサクサク読める面白い作品だ。事件も、人の生死にかかわる深刻なものは起きないので、どこかほほえましく感じる。ラストもきっちりまとめられていて、読後感もよかった。



| 米澤 穂信 | 23:06 | comments(0) | ゆこりん |


本と鍵の季節(米澤穂信)

高校2年生の堀川と松倉は、図書委員。利用者がほとんど来ない放課後の図書室で、図書の仕事をこなしていた。そこに、すでに図書委員を引退した先輩の浦上麻里がやってきた。亡くなった彼女の祖父の金庫を開けるための番号を調べてほしいという依頼だったのだが・・・。「913」を含む6編を収録。

「913」は、単純に金庫を開けるための番号を謎解きのように当てる話かと思ったが、そうではなかった。金庫の持ち主である祖父とその親族の関わり方が意外だった。
「ロックオンロッカー」では、堀川の行きつけの美容室で起こったできごとが描かれている。美容師の言動の中に伏線があり、真相が分かったときには「なるほど!」と感心した。
1年生の男子生徒の兄の無実を証明する「金曜日に彼は何をしたか」、自殺した生徒が最後に読んでいた本を探る「ない本」も、巧妙なストーリーで謎解きを楽しむことができた。
だが、一番強烈に印象に残ったのは、「昔話を聞かせておくれよ」と「友よ知るなかれ」だった。松倉の高校生らしからぬ言動の原因が垣間見えた気がした。だが、真相を知ることが本当によかったのか・・・?読んでいて複雑な思いだった。「友よ知るなかれ」のその後も気になる。
謎が解けても後味の悪さが残る話が多かったが、面白く読みごたえがあった。



| 米澤 穂信 | 23:22 | comments(0) | ゆこりん |


いまさら翼といわれても(米澤穂信)

神山市主催の合唱祭。その本番直前に千反田えるがいなくなった。彼女はソロで歌うことになっていた。なぜ彼女は姿を消したのか?折木奉太郎が見つけた真実とは?表題作を含む6編を収録。古典部シリーズ6。

表題作「いまさら翼といわれても」では、行方不明の千反田えるに焦点が当てられている。さまざまな状況や彼女に関わる人たちの証言から、奉太郎は彼女の居場所を推理する。彼女が姿を消した理由・・・覚悟を決めて進もうとした道が確かな道ではなくなったとしたら?女子高生の揺れ動く気持ちを巧みに表現した話だった。
奉太郎のモットー「やらなくてもいいことなら、やらない」はどこから来たのか?それが分かる「長い休日」は、なかなか興味深かった。気づいてしまったら気づかないときには戻れないのだ。奉太郎、ドンマイ!
「箱の中の欠落」も個人的には好きな作品だ。思いこみが予想外の錯覚につながる。そういうことは現実にもあり得ると思う。面白かった。
「鏡には映らない」も傑作だった。ある事実に気づいた奉太郎が取った行動は爽快だ。理由を言わないところが奉太郎らしい。
6編どれも、とてもよくできている話だと思う。読んでいて感心させられる部分も多かった。読みごたえのある面白い作品だと思う。



| 米澤 穂信 | 22:21 | comments(0) | ゆこりん |


真実の10メートル手前(米澤穂信)

ベンチャー企業・フューチャーステアが倒産し、広報担当者だった早坂真理が失踪した。真理の妹・弓美から太刀洗万智に、真理から電話があったと連絡が来る。太刀洗は電話の内容から真理の居場所を突き止めることができるのか・・・?表題作「真実の10メートル手前」を含む6編を収録。

誰もが見逃してしまいそうなほんのちょっとしたできごと。だが、時にはその中に真実が隠されていることがある。太刀洗は、鋭い洞察力と観察眼で埋もれている真実を明らかにしていく。電話の内容から失踪者の居場所を、不自然な形の高校生同士の心中事件からある犯罪を、偏屈な老人の死からその老人の真の想いを・・・。真実が明らかにされたからといってそれで解決にはならない。知らないほうが良かったのではないかと思う場合もある。さまざまな人間のさまざまな思惑が交錯する。作者の心理描写が光る。
後味がいい作品だとは言えないと思うが、読み手を引きつけじっくり読ませる内容の濃い作品だと思う。面白かった。



| 米澤 穂信 | 22:11 | comments(0) | ゆこりん |


王とサーカス(米澤穂信)

太刀洗万智は、新聞社を辞め知人の雑誌編集者から頼まれた仕事の事前準備のためネパールに向かう。だが、彼女を待っていたのは、王族殺害事件という衝撃的な事件だった。さっそく取材を始めた万智だが、思わぬできごとが待っていた・・・。

ネパールの街の喧騒が実によく描かれていた。人々の息づかいも聞こえてきそうだ。読んでいると、まるで自分もその街の中にいるような気分になった。
最初は王族殺害事件の真相を探ろうとした万智だったが、思わぬできごとのために事態は意外な方向へと進んでいく。てっきり、王族殺害事件の真相を追い求める話だと思ったのだが・・・。
万智と、同じホテルに滞在する人たち、街の少年、ロッジの女主人との関係は最初は良好に見えた。だが、”あるできごと”が起こってから状況は一変する。誰もがあやしく見える。誰もが疑わしく思える。表面的な印象とはまったく違う裏の顔が垣間見える。それはかなり衝撃的だった。人は表面だけでは分からないものだとつくづく思った。そのことも衝撃だったが、もっと衝撃だったのは、万智の心をひどく傷つけたある人物の言葉だった。それは、「裏切った」とか「裏切られた」というような言葉で表現できるものではなく、もっと深くもっと暗いものだった。言葉もりっぱな武器になるのだ・・・。
自分はジャーナリストではない。でも、「ジャーナリストって何だろう?」「ジャーナリストは何をなすべきなのか?」「ジャーナリストはどういう立場にいるべきなのか?」などなど、いろいろなことを考えてしまった。「王とサーカス」。この作品のタイトルの持つ意味は限りなく重い。読み応えがあり、人を引きつけて離さないとても魅力のある作品だった。
最後に・・・。
この作品の中に出てきた「雲仙普賢岳の火砕流」の話はリアルタイムで知っている。ニュースを見てかなりの衝撃を受けた。「大火砕流に消ゆ」(江川紹子)という本も読んだことがあるが、報道のあるべき姿を考えさせられるとても興味深い本だった。機会があればぜひ読んでほしいと思う。



| 米澤 穂信 | 21:27 | comments(2) | ゆこりん |


満願(米澤穂信)

鵜川妙子が矢場英司を刺殺した!彼女はなぜか控訴を取り下げ、懲役八年の一審判決が確定した。彼女の真の動機とはいったい何だったのか?表題作「満願」を含む6編を収録。

起こってしまった出来事・・・。人はその表面に見える事実しか知らない。だが、その出来事の裏には、複雑に絡み合いうごめいている人の思惑がある。人の不思議さ、人の怖さ、人の面白さ。作者は6編の話の中で、そのことを巧みに描いている。表題作の「満願」はなかなかよかった。鵜川妙子という女性の執念には驚かされた。何かを守るためにはそんな力も出せるものなのか・・・。また、それ以上に印象に残ったのは「夜警」だった。川藤浩志というひとりの巡査の死は、本当に惜しまれ二階級特進に値するものだったのか?彼の裏の顔を知ったときには、ぞくっとするものがあった。
6編の中にはインパクトが弱い話もあったが、どの話も興味深く読んだ。人の心はまさに複雑怪奇・・・。読後、不思議な感じの余韻が残る作品だった。



| 米澤 穂信 | 20:31 | comments(0) | ゆこりん |


儚い羊たちの祝宴(米澤穂信)

丹山家の跡取りとして厳格に育てられた吹子にも、大学生になった時に楽しみができた。それは、読書サークル「バベルの会」への参加だった。だが、参加直前になると吹子の身近にいる者が殺害されるという事件が起こり、参加できなくなってしまう。翌年も翌々年も・・・。それらの事件の裏にはいったい何が隠されているのか?「身内に不幸がありまして」を含む5編を収録。

5編どれもが非常に奇異な話だ。いつの間にか読み手さえも、不思議な空間に引きずり込まれていく。人間の恨みや憎しみ、そしてねたみなどの思い・・・。それらが腐敗し、ドロドロとなり渦を巻き、まるで底なし沼のように周りの人間を引きずりこみ、破滅させていく。読んでいて、そういう何とも言えない恐怖を感じた。5編どれもが、「物語の中に張り巡らされた複線が、最後の凝縮された一行で見事に浮かび上がってくる。」という構成になっている。「古典部シリーズ」とはまったく違う作者の別の面が見えて、興味深い。ありきたりの小説に飽きてしまった人には、ぴったりの作品だと思う。



| 米澤 穂信 | 20:01 | comments(0) | ゆこりん |


ふたりの距離の概算(米澤穂信)

「いったい何があった?」
高校2年生になった折木奉太郎が所属する古典部に、新入生の大日向友子が仮入部した。だが彼女は、突然入部を断る。原因は千反田にあるらしいのだが、千反田は人を傷つける性格ではない。マラソン大会が終わるまでに何とかしなければならない奉太郎は、走りながら真相に迫ろうとする・・・。古典部シリーズ第5弾。

マラソン大会当日、奉太郎は走る。そして、走りながらひとつひとつの出来事を検証する。それぞれのしぐさや態度、何気なくかわされた会話の中から、まるでジグソーパズルのように、真相につながるピースを拾い集めてははめ込んでいく。人は心にやましいことがあると、必要以上に物事を深刻に考えてしまう。そういう心理状態を作者は巧みに描いている。さて、最後のピースをはめ込み完成させたとき、「真実」はいったいどんな姿を現すのか・・・?テーマとして、人間関係の難しさも織り込まれた、まあまあ読み応えのある作品だった。



| 米澤 穂信 | 17:21 | comments(0) | ゆこりん |