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夢見る帝国図書館(中島京子)

物語は、15年前にさかのぼってそこから始まる。当時フリーライターだった”わたし”は、上野の公園でちょっと変わった女性と出会った。
「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
その女性、60代の喜和子さんは、”わたし”にそう言った。帝国図書館と喜和子さんの人生。この二つの物語が紡がれていく・・・。

ちょっと変わったところのある喜和子さん。だが”わたし”は、すっかり意気投合する。二人の関係はつかず離れず、お互いがお互いを束縛することなく、とてもいい関係だ。「帝国図書館を小説にしてほしい。」”わたし”は喜和子さんに頼まれるが、その約束を果たさないままでいた。けれど、喜和子さんは楽しみに待っていた。そのことは、後々になって”わたし”の胸に深く刻まれることになる。
帝国図書館のエピソードも随所に描かれている。図書館を作るということは、並大抵の苦労ではない。いろいろな人の血と涙と汗の結晶なのだ。著名な人物も登場して、とても面白いエピソードだった。
人と人との出会い、そしてつながりは不思議だ。いろいろな縁が絡み合って、そこから新たな物語が生まれる・・・。
図書館の物語と喜和子さんの人生。二つの物語の紡がれ方が、とても印象的だった。静かで穏やかな感動が胸いっぱいに広がっていくのを感じた。心温まる作品だった。

| ”な” その他 | 21:15 | comments(0) | ゆこりん |


花桃実桃(中島京子)

花村茜、43歳独身。その彼女が、会社を辞め、急逝した父が遺したアパートの大家になった。そのアパートで暮らすのは、ちょっと変わった人たち・・・。茜とアパートの住人たちが織りなす心温まる物語。10編を収録。

このアパートの住人達は、ひと味もふた味も違う。父の愛人がいたり、整形マニアがいたり、中にはこの世のものではない人も・・・。そんな奇妙な住人たちに囲まれて暮らす茜だったが、ずっと疎遠になっていた父の姿がおぼろげながらわかってくる。父が何を考えどう生きてきたのか、それを知ることにより茜自身も少しずつ変わり始める。「自分にとっての幸福とは何か。」それが分かった時、手にしたさやかな幸福をずっと大切にしようと決心する。
大きな刺激があるわけではない。なんだかふわふわとした感じの話だったが、読んでいて楽しかった。読後、心にほのぼのとしたものが残る、心地よい作品だった。



| ”な” その他 | 22:28 | comments(0) | ゆこりん |


ないたカラス(中島要)

幼なじみの三太とともに荒れ寺に住みついた弥吉は、三太を千里眼の和尚に仕立て、相談に来た者から礼金を受け取ることを思いつく。弥吉には、ある秘策があった・・・。

久々に帰ってきたら、実家は焼失。家族もみな死んでいた・・・。呆然としていた弥吉は、幼なじみの三太と再会する。三太もまた、家も家族も同じ火事で失っていた。そんなふたりが、頼りになる身よりも伝手もない江戸の町で生きていくのは大変だ。そこで弥吉が考えたのが、「千里眼の和尚」だ。それにしてもまあ、何といろいろな相談が持ち込まれることか。しかもその相談、何とも自分勝手なものが多い。それでも三太と弥吉は首尾よく解決していくのだが。読んでいて、この先荒れ寺でずっと三太が和尚として弥吉が寺男として生きていけたらいいのにと思ってしまった。けれど、やはり悪いことは続かなかった。三太と弥吉はこれからどうするのだろう。
ほのぼのとした味わいはあるのだが、内容がさらりとしすぎていて物足りない。ラストへの展開も安易で雑な感じがした。読後も心に残るものがなく、残念だった。



| ”な” その他 | 22:16 | comments(0) | ゆこりん |


ニセモノはなぜ、人を騙すのか?(中島誠之助)

趣味が骨董品収集だという人は、世の中に数多くいる。だが、所持している骨董品すべてが本物とは限らない。いや、必ずと言っていいほどニセモノが紛れ込んでいる。本物とニセモノを、分かりやすく面白く述べた作品。

本物とニセモノ・・・。それを見極めるのは、素人には難しい。いや、この本を読んでいると、素人では不可能に近いのではないかとさえ思う。プロでさえ騙されてしまう物もある。そればかりか、ニセモノが本物として通用してしまうときもある。どんな世界でも、真実を見極めるのは難しいことだと思う。幼いころから本物だけを見つめ続けた作者だからこそ、目利きになれたのだと思う。骨董にはまり込んでいる人は数多くいるが、とても私が入り込める世界ではない。
作者の半生も、とても興味深く読んだ。また、骨董の世界の摩訶不思議な一面も垣間見た。奥が深い世界だ。気楽にサクサク読める、面白い作品だった。



| ”な” その他 | 19:43 | comments(0) | ゆこりん |


くちびるに歌を(中田永一)

長崎県五島列島。この島にある中学校の合唱部は、Nコン出場のため課題曲の練習を始めた。顧問の先生の産休。女子だけだった部への男子の突然の入部。さまざまな不安を抱えて、彼らはNコンを無事乗り切れるのか?

産休の松山先生の代わりに来たのは、美人の柏木先生。その先生を目当てに合唱部に入部する男子生徒。女子だけだった部に、さざ波が立ち始める。けれど、柏木先生の意向でNコンには混声合唱で出場することになった・・・。
家庭環境、性格、性別、考え方。十人十色というけれど、まさにその通り。合唱部に、個性豊かな人間が集まった。彼らは、さまざまな問題や悩みを抱えながら、Nコンというひとつの目標に向って突き進む。内容的には、目新しいものはない。平凡だと思う。その一方で、過剰な演出だと感じる部分があった。サトルの家庭環境についても、そういう設定にする必要があったのかちょっと疑問に感じた。けれど、ひとつの目標に向ってみんなが心を合わせていく過程は、素直に感動した。細かいところは気にせずに、素直な気持ちでこういう作品を読むのもいいかもしれない。



| ”な” その他 | 14:18 | comments(0) | ゆこりん |


死人は語る(永井義男)

滞在期間は100日。父にそう厳命され、長崎浩齋は江戸にやってきた。蘭方医としておのれを磨く日々だったが、油屋の娘お喜代と知り合ったことから、妙な事件に巻き込まれてしまう。昨日まで生きていた人間が、腐乱死体に!?浩齋とお喜代の名(迷?)コンビが、事件の謎を解いていく・・・。3編を収録。

タイトルを見ると、江戸時代版法医学という設定のようだが、残念ながらそこまではいっていないと思う。現代と違い、死体検分のやり方にも限界がある。状況からいろいろ判断しなければならないのは無理のないことかもしれないが、事件の質や解決に至る過程に少々不満を感じた。けれど、浩齋・お喜代のコンビは、ふたりの独特の個性がからみ合い、いい味を醸し出していた。「このふたり、意外に相性がいいかも〜♪」と思いながら読んだが、さすがに江戸時代!なかなか厳しい現実が待っていた。もしかしたらシリーズ化もあるのかと思ったのだが、ラストを見る限りそれはないように思える。残念!軽快な文章で陰惨な殺人事件もサラリと読ませる、まあまあ楽しめる作品だった。



| ”な” その他 | 19:53 | comments(0) | ゆこりん |


乱紋(永井路子)

織田信長の妹お市の方と浅井長政の間に生まれた三姉妹、茶々、初、江。彼女たちのたどった運命は・・・?

本の裏側に書かれた「おごうの生涯を描く」という一文に、まんまとだまされてしまったような感じだった。確かにお江は登場する。彼女の運命も描かれている。しかしそれは間接的で、「おちか」や「ちくぜん」という人物を通して語られるのみだ。お江の心の内をじかに描写しているところはひとつもない。お江の存在はふわふわしていて曖昧でとらえどころがない。作者がいったいどういう意図でこの作品を描いたのかが理解できない。この作品を通し作者は何を読み手に伝えたかったのか?それもまるで分からない。歴史の流れ・・・。その大きなうねりの中で、当時の人たちはどう生き抜いていったのか?歴史小説の面白さはそこにあると思う。この作品では、そういう面白さをまったく感じることができなかった。とても残念だ。



| ”な” その他 | 19:33 | comments(0) | ゆこりん |


小さいおうち(中島京子)

「小さな赤い三角屋根の洋館での暮らしが、私のすべてだった・・。」
年老いたタキが、「女中」時代の思い出をノートに書き綴る。日本が戦争へと向かう時代、平井家の人たちとタキとのふれあいを描いた作品。

淡々と、本当に淡々と、タキの女中時代の思い出が語られる。日本が悲劇の戦争へと向かって行き、やがて終戦を迎えるまでの生活があざやかに、そしていきいきと描かれている。戦前の中流家庭の様子はこんなだったのかと、面白さを感じながら読んだ。時子の明るい性格。まるで友だちのような時子とタキ。ふたりの関係はこのままずっと続いていくかに思われた。だが、"あるできごと"がきっかけで、ふたりの間には見えない溝ができてしまう。けれど、その溝はそれほど深刻なものだと思わなかった。そして、この作品をとても平凡な作品だとも思っていた。この作品のラストを読むまでは・・・。タキが語ることのなかった事実。それが明らかになったとき、その意外な展開に驚いた。同時に、この作品のタイトルの持つ意味の深さに感動した。平凡な物語が、ラストで衝撃的な物語に形を変えた!強く余韻が残る作品だった。



| ”な” その他 | 17:08 | comments(0) | ゆこりん |


掏摸(中村文則)

天才スリ師の西村は、かつて一度だけ一緒に仕事をした「最悪の男」と呼ばれる木崎と再会する。木崎は、再び彼に仕事を強要する。与えられた三つの仕事を期日までにこなさなければ明日はない。天才スリ師の腕は、おのれ自身を救えるのだろうか・・・。

読んでいて、黒くドロドロしたものを感じる。登場する人物全てが救いのない環境に置かれている。はい上がりたくてもはい上がれない。その絶望的な状況に、読んでいて暗い気持ちになる。主人公と最悪の男木崎。仕事を強要する者される者。危うい関係はいったいどうなるのか?ラストまで一気に読ませる面白さはある。ただ、登場人物ひとりひとりの描写が希薄なため、具体的なイメージがなかなか浮かんでこないのが残念だった。ラストは余韻を残すものになっているが、こういうパターンは何度か見たことがあるので斬新さは感じられなかった。作者の意図も分かりづらく、曖昧な印象を受ける作品だった。



| ”な” その他 | 20:12 | comments(0) | ゆこりん |


神様のカルテ(夏川草介)

「24時間、365日対応」
患者にとってはありがたい病院でも、そこで働く医師や看護師にとっては修羅場だ。「患者の生と死にどう向き合えばいいのか?」若き医師栗原一止は悩みながら、愛する妻や同僚、そして看護師らに支えられ、患者のために奔走するのだが・・・。

医師の仕事は本当に大変だ。特に地域医療では慢性的な医師不足で、満足な診療ができないところがたくさんある。一止が籍を置く本庄病院も例外ではない。医師も看護師も、ぎりぎりのところでがんばっている。人の生と死に関わる仕事の厳しさが、この作品から伝わってくる。一歩間違えば暗く重い話になってしまうのだが、作者の軽快な描写でかなり救われる部分がある。さまざまな人の生き方、さまざまな人の死に方がある。その中で印象に残ったのは、やはり安曇さんのことだ。これこそがまさに、現代医療が抱える問題だと思う。「どう生きて、どう死ぬのか?」このことは、自分自身がしっかりと考えなければならない。悲しくて、切なくて、そして、心温まる作品だった。



| ”な” その他 | 18:20 | comments(0) | ゆこりん |