55歳からのハローライフ(村上龍)
2014.06.30 Monday
定年後の夢は、キャンピングカーで妻と一緒に全国を回ることだった。だが、その話を聞いた妻は迷惑そうな顔をした・・・。定年後の夫の悲哀を描いた「キャンピングカー」を含む5編を収録。
「定年後は妻と一緒に何かをしよう。」そう思う男性は多いのではないだろうか。だが、妻の方は何年もかけて自分自身の世界を築いてしまっている。いろいろ考えること、やりたいことがたくさんある。定年退職後に夫がずっと家にいることになっても、自分の生活のパターンを変えたくはないだろう。夫は、妻は自分の計画に賛成してくれると思い込んでいたのだが。妻に難色を示され落ちこんでいるときに、さらに子どもからは「再就職したら。」と言われてしまう・・・。「キャンピングカー」は、現実社会でも似たような話がありそうでとても興味深く読んだ。
「空飛ぶ夢をもう一度」も、よかった。リストラされた男性がホームレスに転落するのではないかとおびえるようになる。だが、かつてクラスメートだった男性と再会し彼の生きざまを目の当たりにしたことで、生きることへの意欲が湧いてくる。上を見ればきりがないが、下を見てもきりがない。大切なのは、守るべき存在をしっかり守り、前を向いて生きることだ。強くそう思った。
そのほかの話もよかった。誰でも何度か迎える人生の転機。そのときに、どう考えいかに行動すべきかは人それぞれだけれど、選択肢の中から自分が選んだものに対し後悔はしてほしくないと思う。
どこにでもありそうな日常の断片を切り取って収めたような話ばかりで、読んでいて共感することも多かった。読後も、ほのぼのとした余韻が残る作品だった。
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