盤上の向日葵(柚月裕子)
2018.02.18 Sunday
山中で発見された白骨遺体のそばにあった遺留品は、初代菊水月作の名駒だった。何百万円もする高価な駒がなぜ遺体と一緒にあったのか?刑事の石破と佐野は、その真相を追い求めたのだが・・・。
平成六年、山形県天童市。物語は、注目の若手棋士同士による対局会場に二人の刑事がやってくるところから始まる。若き天才棋士・壬生と実業家から転身して特例でプロになった東大卒の棋士・上条との対決だった。なぜ刑事がこの場に現れたのか?そこから話が過去にさかのぼっていく・・・。
少年時代、父親から虐待を受けていた上条。その上条を不憫に思い、わが子のように可愛がり将棋を教えてくれた唐沢。そして、東大時代に出会ったさまざまな人物。上条は、彼らを通して将棋の持つ光と影の部分を味わうことになる。その部分が切々と描かれている。
上条はこの事件にどう関わっているのか?また、なぜ高価な駒が被害者と一緒にあったのか?いったいそこにはどんな真実が隠されているのか?否応なしにも期待が高まっていく。
最初は面白い話だと思った。けれど、読み進めるうちに松本清張の「砂の器」に似ていることに気づいた。 (調べてみたら、やはり作者は「砂の器」を意識してこの作品を書いたことが分かった。)気づいたら、そこから先はどうしても「砂の器」と比較しながら読んでしまうことになる。はっきり言って、「砂の器」よりは劣る。「砂の器」と比較されるのは、この作品にとってはマイナスだと思う。主人公にもなかなか感情移入できなかった。それに、遺体とともに駒が埋められた理由も、説得力に乏しい気がする。上条の人生は悲しい。読んでいて胸が痛んだ。けれど、それが素直に感動に結びつかなかったのが残念だった。
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