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龍神の雨(道尾秀介)

添木田蓮と楓兄妹は、母が事故死した後継父と暮らしていた。一方、溝田辰也と圭介兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母と暮らしていた。
蓮は、継父に楓がひどい目に遭わされたことに怒り、継父の殺害計画を立てる。一方辰也は、継母を困らせたくて、蓮の働いている店で万引きをする。この二組のきょうだいは、ひとつの事件をきっかけに微妙に交錯することになるのだが・・・。

ある出来事をきっかけに、連と楓、辰也と圭介、二組のきょうだいの思惑が絡み合う。共通しているのは、実の親がもういないこと。未成年の彼らには、自分たちの境遇をどうにもできないこと。そんな中で起こったひとりの人間の死。その死をめぐる4人の心の葛藤、先の見えない状況、緊迫感のある展開が、読み手を引きつける。巧妙に張り巡らされた伏線は、後半で生きてくる。そして、意外な真実が次々と明らかになるのだが・・・。
作者の都合のいい展開で現実味に欠ける部分があったが、それを差し引いても面白さを感じる。ラストも無難にまとめられていると思う。



| ”み” その他 | 22:32 | comments(0) | ゆこりん |


たったそれだけ  (宮下奈都)

「逃げて。」不倫相手の女性社員のひと言で、収賄が発覚する前に失踪した望月正幸。いったい望月はどういう人間だったのか?また、彼の失踪後、家族はその事実とどう向き合ったのか・・・?さまざまな人間模様を鮮やかに描いた作品。

ひとりの男の失踪の陰には、彼に関わるさまざまな人たちのドラマがあった。望月の不倫相手の女性、彼の妻と娘、彼の姉、それぞれの人たちにまつわる物語・・・。やはり、彼の妻と娘の物語はとても切ない。妻はいつも失踪した夫を追い求めていた。転々と住むところを変え、必死に追い求めた。娘はその間転校を繰り返したが、母の気持ちを思いやり何も言わなかった。ふたりの気持ちが痛いほど伝わってくる。「この作品の中に登場する人たちは、誰もが不幸なのではないか。」ずっとそう思いながら読んだ。だが、後半、物語は意外な方向へと進んでいく・・・。
人生には逃げなければならないときもあるだろう。だが、逆に、逃げてはいけないときもある。現実を見据え、立ち向かわなければならないときもある。ラストは未来への希望につながる何かを感じさせるものだったので、救われた。深い味わいのある作品だった。



| ”み” その他 | 20:21 | comments(0) | ゆこりん |


風神の手(道尾秀介)

さまざまな人たちの人生がからみ合いながら、過去から現在へとつながっていく・・・。いったい、彼らの運命はどこでどう変わっていったのか?微妙なつながりを持つ4編を収録。

余命いくばくもない母が娘に語る高校時代の若き漁師との思い出を描いた「心中花」、小学5年生の”まめ”と”でっかち”の友情と不思議な事件を描いた「口笛鳥」、命の期限が迫る老女が抱えている昔の罪を描いた「無情風」、そして、それら3つの話に登場する人たちがつながっていく「待宵草」。この作品はこれら4つの話で成り立っている。
「こんなふうにつながっていたのか!」
考え抜かれた緻密なストーリー構成に驚かされる。バラバラだったできごとをジグソーパズルのピースのようにはめ込んでいけば、最後には全く異なる物語が完成する。見事としか言いようがない。
人の運命は、ほんのささいなことで大きく変わってしまうことがある。変わらない方が良かったのか、変わった方が良かったのか、それは誰にも分からない。でも、ひとつ言えるのは、どんな人生にも希望の光が輝いているということだ。
この作品は、人生というものをあらためて考えさせてくれた。読後感もよく、読みごたえのある面白い作品だと思う。



| ”み” その他 | 23:15 | comments(0) | ゆこりん |


リバース(湊かなえ)

深尾和久は、サラリーマンとして平凡な生活を送っていた。だが、そんな彼の生活を根底から揺るがすできごとが起こる。「深尾和久は人殺しだ」と書かれた告発文が届いたのだ。実は、彼には誰にも言えない秘密があった・・・。

深尾の学生時代の仲間たち。今はそれぞれ社会人として働いているが、深尾だけではなくその仲間たちにも告発文が届いていた。
学生時代のひとり友人の事故死。それは単なる事故死だったのか?他に何か真相が隠されているのか?告発文を書いたのは誰か?今頃何の目的で?疑問が膨らんでいく。深瀬はしだいに、同じ立場に立っていると思っていた友人たちへも疑惑の目を向けざるを得ない状況に追い込まれていく・・・。
作者は、最後の1行のためにストーリーを作成したとのこと。よく考えられたストーリーだと思う。その1行まで持って行くのは並々ならぬ苦労があったことだろう。でも、やはりどこか無理があるような気がする。読んでいて引っかかる。様々な疑問と後味の悪さが残り、読後感はあまりよくなかった。



| ”み” その他 | 20:05 | comments(0) | ゆこりん |


羊と鋼の森(宮下奈都)

きっかけはほんのささいなことだった。だが、少年はピアノの調律という仕事に魅了された。やがて高校を卒業した彼は、専門学校を出て本格的に調律師の道を歩み始めるのだが・・・。

ひとりの青年がピアノの調律師を目指す。才能があるとかないとかそんなことは関係なく、自分の魅了された世界で生きて行く決心をする。繊細な世界だと思う。それと同時に過酷な世界でもあると思う。ピアノの弾き手を生かすも殺すも調律師しだいなのだと知った。調律はピアノの調整というより、調律師とピアノとの戦いのようだ。食うか食われるか!そこには並々ならぬ緊迫感がある。
作者は調律の世界を透明感のある文章で実に見事に描いている。読んでいると、ピアノの音が聞こえてくるようだ。私が全く知らなかった世界だ。こんな世界もあるのだと、とても新鮮な感動を味わった。読後もさわやかで、心地よい余韻が残る。静かにそしておだやかに、心に染み入る作品だった。



| ”み” その他 | 20:55 | comments(0) | ゆこりん |


神さまたちの遊ぶ庭(宮下奈都)

「どうせ北海道で暮らすなら、大自然の中で暮らさないか?」
その夫のひとことで、子供たち3人を連れ北海道・トムラウシに移住した宮下一家。家族5人の北海道の暮らしとは?宮下家の1年間の記録。

トムラウシ。そう聞いてもどこにあるのか分からない人の方が多いだろう。北海道上川郡新得町屈足トムラウシ。本当に山の中の山の中だ。最寄りのスーパーまで37キロ、TUTAYAまで60キロと聞けば、生まれも育ちも北海道の私でさえ驚く!そんな環境に一家五人で飛び込んだ宮下家。その日常は発見と驚きの連続だ。この本に書かれているのは、1年間の暮らしのほんの一部だと思う。言葉では言い表せない苦労もあっただろう。悩むことも多かっただろう。冬の寒さもつらかっただろう。けれど、作者はそういうことはあまり書かないで、北海道の大自然の素晴らしさやトムラウシの人たちとのステキな出会いを生き生きと描いている。こんなにもよく北海道を描いてくれてありがとう!作者にそうお礼を言いたいくらいだ。子供の進学問題などで移住は1年間の限定だった。でも、私は宮下一家がまた北海道に住んでくれるのではないかとひそかに期待している。北海道にはまだまだ魅力的なところがいっぱいあります!お待ちしています♪宮下さん!



| ”み” その他 | 19:41 | comments(0) | ゆこりん |


三好達治詩集(三好達治)

哀しみ、喜び、怒り、希望、絶望・・・。さまざまな題材を独特の感性で詩という形で表現した、三好達治の代表作を収録。「新潮文庫20世紀の100冊」1930年。

見るもの、聴くもの、感じるもの・・・。そこに生じる喜怒哀楽を、作者は巧みに言葉を操り、詩という形に作り上げていった。洗練された言葉のひとつひとつが胸を打つ。言葉とは、こんなに巧みに操れるものなのか!凡人にはまねのできない世界がそこにはあった。ストーレートな表現などいらない。紡ぎ出す言葉の間から、感情の揺らぎを感じることができる。独特のもののとらえ方、独特の表現、それらは色あせることなく、いつの時代も読み手を魅了することだろう。詩の持つ魅力、そして奥深さを感じた作品だった。



| ”み” その他 | 18:05 | comments(0) | ゆこりん |


豆の上で眠る(湊かなえ)

小学3年生の姉万佑子が帰宅途中行方不明になった!必死の捜索にもかかわらず、万佑子は見つからなかった。だが、2年後に万佑子は突然帰って来た。妹の結衣子は、「本当に姉なのか?」と疑問を抱くのだが・・・。

姉が行方不明になったとき、妹の結衣子は小学1年生だった。そのくらいの年になれば、毎日一緒に遊んでいた姉と2年ぶりに会ってもはっきりと分かるのではないだろうか。祖母にしてもそうだ。いつも遊びに来ていた孫と他人の区別はできるのではないだろうか。父母の態度もおかしすぎる。また、行方不明になっていた2年間の動機もあり得ないような気がする。小学3年生だった万佑子がそこまでとっさに考えたなどとは信じられない。ラストも納得できるものではなかった。無理やりつじつまを合わせた・・・そういう感じだ。「姉は本物か?」「結衣子の違和感はどこから来るのか?」そういうことを考えながら途中までは面白く読めたのだが・・・。「設定に無理がある不自然な話」という印象で終わってしまったのはとても残念だった。



| ”み” その他 | 19:30 | comments(0) | ゆこりん |


盤上の夜(宮内悠介)

海外で四肢を失った由宇にとり、囲碁盤は自分の感覚器だった。棋士たちの一手一手が由宇の体の地図にプロットされ、やがて1枚の棋譜となっていった・・・。囲碁という過酷な戦いの中に身を置いたひとりの女性を描いた表題作「盤上の夜」を含む6編を収録。

洗練された技術や鋭い刃物のような研ぎ澄まされた感覚などを駆使して、 "戦士"は「盤」という戦場で戦う。囲碁、チェス、将棋、マージャンなど、盤上で繰り広げられる戦いには、つねにさまざまなドラマがある。6編どれも、今までとは違う何かを持っていると感じながら読んだ。けれど、残念ながら、共感できたかと問われれば否定せざるを得ない。この作品は、好き嫌いが大きく分かれる作品ではないだろうか。ルールがある程度分からなければ楽しめないところがある。特に「清められた卓」では、麻雀のルールを知らないと面白さ半減、いやそれ以下だと思う。評判がいいので読んでみたが、あまり魅力は感じず、いまいちだった。異色性は感じたのだが・・・。



| ”み” その他 | 17:42 | comments(0) | ゆこりん |


水の柩(道尾秀介)

老舗旅館「河音屋」の長男・逸夫は、退屈な日常生活に飽き飽きしていた。そんな逸夫に、同級生の敦子が声をかけた。「手紙を書き直して、タイムカプセルの中に入っている手紙と取り替えない?」彼女はなぜそんなことを言ったのか?彼女の真意が分からぬまま、逸夫はそれを実行に移すが・・・。

一見、普通に生活している人たち。その人たちの心の奥底には、いったい何が隠されているのだろうか?笑顔の裏に貼り付けられた悲しみ、誰にも言えない秘密、他人には知られたくない慟哭・・・。生きるということは、つらいことばかりではないはずだ。なのに、この作品を読んでいると胸が痛くなってくる。逸夫の祖母いくの気持ちや逸夫の同級生の敦子の苦しみが、鋭い針となって心に突き刺さってくる。「そんなに自分を押さえつけなくていいんだよ。」いくに、敦子に、そんな言葉をかけてやりたくなる。だが、人間は弱いばかりではない。どん底から這い上がる強さも持っているはずだ。さまざまな苦悩や葛藤を乗り越えた者・・・。それらを忘れ去ってしまった者・・・。どちらの生き方にも切なさが漂う。ラストは、涙がこぼれた。そして、この作品のタイトル「水の柩」がとても深い意味を持っていることを知った。きらきら光る水面のまぶしさや、静謐な水底の風景。それらが目に浮かぶようだ。読後も、強い余韻が残った。おだやかで心に染み入るような感動を与えてくれる、とても面白い作品だった。



| ”み” その他 | 14:50 | comments(0) | ゆこりん |