海の見える理髪店(荻原浩)
2016.05.26 Thursday
海辺の小さな町にある理髪店に、ひとりの若い男性がやって来た。理髪店の店主は、なぜかその男性にポツリポツリとおのれの人生を語り始める。彼はなぜ自分の人生を語り始めたのか?そして、彼の語る人生とは?表題作「海の見える理髪店」を含む6編を収録。
ひと口に人生といっても、その人生には人それぞれ実にさまざまなドラマがある。過去のあやまちを後悔し続けたり、戻らない日々を切なく思い出したり、厳しかった母の老いた姿に悲哀を感じたり・・・。人はいろいろな思いを抱えながら生きている。
6編の中で特に印象深かったのは、「海の見える理髪店」だ。自分の過去を語る理髪店の店主。そして、その話に耳を傾ける若い男性。ラストでは泣かされた。
どの話も楽しい話ではない。むしろ切ない。だが、切ない中にもどこかにほんの少しだけ温もりを感じることができる、深い味わいのある作品だと思う。
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