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擬宝珠のある橋(宇江佐真理)

やむを得ない事情で蕎麦屋をやめてしまった老人。生きる張り合いの無くなった老人のために、伊三次はひと肌脱ぐことにしたのだが・・・。表題作「擬宝珠のある橋」を含む4編を収録。髪結い伊三次シリーズ15。 最終巻。

この作品に収められている4編のうちの最後の1編「月は誰のもの」は、文庫書き下ろしとして過去に出版された話だ。シリーズ15の話は、3編しかない。作者はこの3編を書いて亡くなってしまった。この3編はどれもとても読みごたえがあった。作者は、過去のシリーズと同じように、人の情けや悲哀、そして何気ない日常生活をじっくりと描いている。命にかかわる大変な病を抱えながら、冷静にこんな文章が書けるなんて!作者はもっともっと書きたかったのだ。安易な終わらせ方をせずに、これから先もずっと書き続けるつもりだったのだ・・・。読みたかった!伊三次のこれからの人生を。そして、伊三次の息子の伊与太の人生を。不破一家のこれからを。もう読めなくなってしまったと思うと、たまらなく寂しい。宇江佐真理さん、ステキな作品をありがとうございました。心よりご冥福をお祈りいたします。



| 宇江佐 真理 | 22:03 | comments(0) | ゆこりん |


竈河岸(宇江佐真理)

不破龍之進は、父の友之進から小者を持つように言われた。小者として龍之進が真っ先に浮かんだ者は、竈河岸で駄菓子屋を営んでいる次郎衛だった。次郎衛は、かつて龍之進が捕えられなかった男だった・・・。表題作「竈河岸」を含む6編を収録。髪結い伊三次シリーズ14。

龍之進と次郎衛の因縁。それは龍之進に苦い過去を思い出させる。だが、それでも龍之進は反対する周りの者を説き伏せ、次郎衛を自分の小者にと願う。月日は流れ、人の心も変わる。いや、人の心が変わるほど月日がたったのだ。そのことをあらためて感じた。龍之進と次郎衛の関係は、この先いいものになっていくと思う。
この作品の中で一番印象深かったのは、「暇乞い」だ。伊与太と絵の師匠・国直の関係が大きく変わっていく。そこに至るまでの描写から目が離せなかった。国直のもうひとりの弟子・芳太郎の見せる人としての醜い部分が腹立たしい。芳太郎の、おのれの欲望のためなら手段を選ばないやり方が、伊与太の運命を変えていく・・・。伊与太の今後が気になる。
人として何が大切なのか、生きるとはどういうことか、作者の問いかけが胸に響く。今回も読みごたえがあった。面白い作品だと思う。



| 宇江佐 真理 | 21:50 | comments(0) | ゆこりん |


昨日のまこと、今日のうそ(宇江佐真理)

不破龍之進が北町奉行所の役人になって10年以上の月日が流れた。その間にいろいろなことがあり、龍之進は思いを巡らす。一方、龍之進の妹・茜が奉公する松前藩にも、思いがけないできごとが起こった・・・。不破一家を描いた表題作「昨日のまこと、今日のうそ」を含む6編を収録。髪結い伊三次シリーズ13。

不破家の日常、伊三次一家の日常。事件が起きても起きなくても、時は流れていく。不破龍之進も父親になった。茜は松前藩の若君の側室に望まれ、悩む日々を送った。そして、伊三次の息子・伊与太は、一人前の絵師になるべくなお一層の修業に励む。伊与太の妹・お吉も、確実に自分の道を歩んでいる。人々の何気ない毎日の営み、ささやかな幸せ。作者は、それらひとつひとつを温もりのあるまなざしで見つめ、ていねいに描いている。だから、読み手は登場人物たちの気持ちに寄り添い、共感することができる。生きることの喜びや悲しみを余すことなく描いた、心にしみる面白い作品だと思う。



| 宇江佐 真理 | 18:49 | comments(0) | ゆこりん |


夜鳴きめし屋(宇江佐真理)

長五郎は、父親が営んでいた古道具屋「鳳来堂」を居酒見世として再開した。朝方まで開いているその店には、いろいろな人たちがやって来た。その中には、かつて長五郎が思いを寄せた芸者のみさ吉がいた。みさ吉の息子は、長五郎の子どもらしいのだが・・・。6編を収録。

居酒見世「鳳来堂」には、いろいろな事情を抱えた人たちが集まってくる。この作品ではさまざまな人たちのさまざまな人生が描かれているが、6編に一貫して描かれるのはみさ吉の息子・惣助のことだ。惣助は長五郎の息子なのか?長五郎とみさ吉の行く末は?最後の最後まで気をもませる展開になっている。
人生には本当にいろいろなことがある。いいことも悪いことも・・・。人は何に希望を持って生きていくのか?生きていれば、必ずいいことがあるのか?いや、そうとは言えない。夜鷹・おしののことを思うと、やりきれない気持ちになる。彼女の人生が強く心に残った。
せつない部分もあるが、人情味にあふれた心温まる作品だと思う。読後感もよかった。



| 宇江佐 真理 | 22:30 | comments(0) | ゆこりん |


名もなき日々を(宇江佐真理)

蝦夷松前藩の上屋敷に奉公している茜は、若君から好意を持たれた。そのことが原因で、茜は否応なしに藩の権力争いに巻き込まれていく。「誰も信じることができない。」四面楚歌の状態の中、茜の心はしだいに追い詰められていった・・・。表題作「名もなき日々を」を含む6編を収録。髪結い伊三次シリーズ12。

幼かった者たちも時がたてば成長し、大人になってゆく。茜は上屋敷に奉公し、伊与太は絵師のもとに弟子入りする。そして、伊与太の妹・お吉も髪結いの修業を始めた。それぞれがそれぞれの道を進んでいく。けれど、大人になるということは、今まで見えなかったものを見たり、今まで聞こえなかったことを聞くことでもある。大人の世界の醜い部分にどんどん触れざるを得なくなってくる。自分に降りかかる問題は、自分で解決しなければならないのだ。親は見守ることしかできない。それはいつの時代でも同じなのかもしれないが・・・。
時が流れ、やがて若い者たちの時代がやってくる。龍之進、茜、伊与太、お吉。いったい彼らの行く末は?そして年を重ねる伊三次、お文たちの今後は?ますます目が離せない。
切ない中にも心に温もりをもたらす、読みごたえのある面白い作品だった。



| 宇江佐 真理 | 22:17 | comments(0) | ゆこりん |


明日のことは知らず(宇江佐真理)

八丁堀の町医者・松浦桂庵の母親の美佐は、伊三次とも顔見知りだった。その美佐が、突然亡くなった。事故死だった。伊三次は、美佐の死が本当に事故死なのか疑問を感じ調べ始めたのだが・・・。「あやめ供養」を含む6編を収録。髪結い伊三次シリーズ11。

「あやめ供養」では、思わぬことで命を落とすことになった美佐について描かれている。母の米寿の祝いができなくなってしまった桂庵の胸の内を思うと心が痛む。お金のために罪を犯す。それはいつの時代にもあるのだと思うと、暗澹たる気持ちになる。
「赤のまんまに魚そえて」では、自分勝手な非情な男に惚れた女性の悲劇を描いている。読んでいてとても切なかった。
「明日のことは知らず」では、伊三次の息子・伊与太と不破友之進の娘・茜について描かれている。伊与太は、悲劇に直面したときに思わず茜の名前を口にした。伊与太の茜を想う気持ちが強く伝わってくる。その茜は、奉公先のお家騒動に巻き込まれようとしていた。茜も伊与太に想いを寄せているが・・・。いったいこのふたりはこの先どうなるのか?とても気になるところだ。
いい悪いに関わらず、時は流れていく。その時の流れの中で、老いていく者もあれば、成長していく者もある。この先どんな未来が待っているのか、それは誰にも分からない。分からないからこそ、人は今を大切に生きなければならないと思う。
味わいがあり深い余韻を残す、面白い作品だった。



| 宇江佐 真理 | 00:04 | comments(0) | ゆこりん |


月は誰のもの(宇江佐真理)

江戸の大火で住むところを失った伊三次とお文は、落ち着き先が決まるまでの間別れて暮らすことになった。伊三次の色恋沙汰、お文の父親の出現、八丁堀純情派と本所無頼派のその後、そして長女・お吉の誕生と、今まで描かれることのなかった10年を描いた作品。髪結い伊三次シリーズの番外編ともいえる作品。

以前、髪結い伊三次シリーズ8の「我、言挙げす」とシリーズ9の「今日を刻む時計」を読んだときに、シリーズ8とシリーズ9の間に10年もの空白があることにひどく驚いた。それ以来ずっと、描かれていない10年間がとても気になっていた。この作品は、その空白部分を埋める話となっている。
八丁堀純情派と本所無頼派のその後は興味深かった。不和龍之進と元・無頼派の次郎衛の間に生まれた友情は意外だったが、ちょっと胸が熱くなった。
お文とその父親の話はとても感動的だったが、切なさを感じるところもあった。立場上互いに名乗り合うことはできなかったが、父と娘の心はしっかりつながっていると強く感じた。ふたりが出会えて本当によかったと思う。
人の悲哀を温かなまなざしでしっとりと描いている。やりきれない思いを感じる中にも、どこか救いを感じさせる部分もある。それが、読後感を心地よいものにしていると思う。とても味わい深い面白い作品だった。



| 宇江佐 真理 | 22:34 | comments(0) | ゆこりん |


心に吹く風(宇江佐真理)

伊三次とお文のひとり息子の伊与太が、兄弟子とケンカをして修業先の絵師の家から戻って来た。一方、不破友之進の息子・龍之進は嫁をもらい、日々役目に励んでいた。伊三次とお文は伊与太の将来を案じたが、今はただ見守るしかなかった。それぞれの人たちのそれぞれの人生が絡み合い、温かな物語を紡ぎ出す。髪結い伊三次捕物余話シリーズ10。

このシリーズももう10作目だ。シリーズ1作目では、伊三次とお文はまだ結婚していなかった。それが今では息子がいて、その息子の伊与太も一人前の男になろうとしている。不破龍之進も結婚した。もうそんな年になったのかと驚く。月日は確実に流れている。
いつも思う。何気ない平凡な暮らしを送っているように見えて実はその心の中には計り知れない悩みや悲しみを抱いている人がいると。作者はそういう人の心情を実に細やかに温かなまなざしで描いている。「人生悪いことばかりではない。どんなときにも希望を持ち、あきらめないことが大切だ。」読んでいると作者の声が聞こえてきそうだ。伊与太と不破の娘・茜はどうなるのか?伊与太はりっぱな絵師になれるのか?龍之進は、同心としてどのように成長していくのか?これから物語がどう展開していくのか、とても楽しみだ。

文庫本を読んだのだが、この文庫本の作者が書いたあとがきの中に、作者の病気についての生々しい描写があった。宇江佐ファンなら誰でもかなりのショックを受けるに違いない。私は作者が亡くなった後にこの本をこうして読んだが、このあとがきはとても衝撃だった。病気を克服して、もっともっといろいろな作品を世に送り出してほしかった。とても残念でならない。



| 宇江佐 真理 | 22:41 | comments(0) | ゆこりん |


昨日みた夢(宇江佐真理)

祝言を挙げて1年ほどたった頃に突然姿を消した亭主 勇次を今でも忘れられないおふく。実家の口入れ屋に戻りさまざまな奉公先に駆り出されるうちに、彼女の人生観はしだいに変わり始めた・・・。6編を収録。

口入れ屋とは、今で言う人材派遣会社のようなものだ。おふくの実家「きまり屋」も、働き口を求めてやって来た人に奉公先を紹介する。人のやりくりがつかないときは、おふくが助っ人として駆り出される。
それにしても、よその家というのは入ってみなければ分からないことがたくさんある。普段見ているのはほんの一部だ。評判のいい店も内情は・・・。腕が悪い医者だと思っていたが実際は・・・。腕がいいと評判の按摩の心に中に渦巻くものは・・・。おふくのため息が聞こえてきそうだ。
亭主に逃げられたおふくは、自分だけが不幸だと思っていたところがある。だが、世の中は自分の思い通りに動くものではないということに気づいていく。表題作「昨日みた夢」の中のおふくは、亭主に逃げられてうじうじしているおふくではない。これからの自分の人生をしっかりと見つめ、考えることができる女性へと変わっている。おふくの人生はこれからだと思う。
読んでいて楽しくなるような話ではなかったが、心に染みるものもあった。味わいのある作品だと思う。



| 宇江佐 真理 | 19:23 | comments(0) | ゆこりん |


アラミスと呼ばれた女(宇江佐真理)

「父のような通詞になりたい!」
女人禁制の職だった通詞へのあこがれは、やがてひとりの男の出現で現実へと変わっていく・・・。幕末から明治の時代に「アラミス」と呼ばれたお柳の波乱に満ちた生涯を描く。

江戸から明治へ。時代が大きく変わろうとしているときにお柳は通詞になる決心をする。女人禁制の職場に男装して入り込む。自分が想いを寄せる男のために、お柳は命さえも懸けるつもりだったのだろう。男を陰で支え続けたことが、時代を大きく変えることにつながっていく。一途な思い、貫き通した信念。彼女の凛とした生き方には感銘を受けた。お柳の果たした役割は大きい。だが、彼女の名前は決して表に出ることはない。お柳はそれで本当に満足だったのだろうか。人並みな幸せの中に身を置くことだってできただろうに・・・。
田島勝という実在の人物をヒントに描かれているので、読んでいて胸に迫るものがあった。明治維新を別の角度から描いていて、なかなか興味深かった。



| 宇江佐 真理 | 15:31 | comments(0) | ゆこりん |