昨日のカレー、明日のパン(木皿泉)
2014.10.09 Thursday
7年前、25歳という若さで逝ってしまった一樹。たった2年の結婚生活だった。一樹の死後、ギフと一緒に暮らし続けるテツコ。何気ない日常生活の中で、テツコは次第に一樹の死を受け入れ始めるのだが・・・。
25歳という若さで逝ってしまった一樹、遺されたテツコとギフ(義父)、どちらも切ない。けれど、テツコとギフの生活に悲壮感はない。喜びも悲しみもふわりと包み込み、淡々と日常生活を送っている。大きな事件など起こらない。あるのは、本当に平凡な毎日だ。けれど、その平凡な生活がいかに大切でかけがえのないものか、あらためて強く感じさせられた。はたから見れば夫に先立たれたテツコがギフと暮らし続けるのはおかしなことかもしれないが、ギフとの生活の中にテツコの居場所があることが痛いほど伝わってくる。家は、ただ眠ったり食べたりする場所ではない。そこには、温かな暮らしがなければならないのだ。
悲しみは決して消えることはないけれど、悲しみを思い出に変えて生きていくことはできるはず。「テツコの未来がキラキラと輝いていますように。」と、願わずにはいられない。
切なくて、温かくて、そして心に余韻が残る作品だった。
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