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守教(帚木蓬生)
  

厳しい日々の暮らし。百姓たちは、心のよりどころを求めキリシタンになった。だが、戦国時代には布教に熱心だった権力者たちも、時代が移り変わるにつれしだいに考えを変えていく。そしてついに、禁教令が!史実をもとにした、命を賭けてキリスト教を信じ続けた人々の記録。

戦国時代に伝来したキリスト教は、またたく間に日本に広まっていく。その教えに共感したのは一般民衆だけではない。時の権力者も大勢いた。
「自分たちの存在を認めてくれる教え。」
それは、九州にある村々の人たちにも生きる力を与えた。日々の暮らしの生きがいとなった。だが、時代は変わり、キリスト教徒に対する厳しい弾圧が始まった。棄教を迫る激しい拷問。転ぶ者、殉教する者・・・。人々の間に動揺が走る。けれど、彼らは信仰心を捨てなかった。ひそかに信仰は守られた。禁教令が出されてから開国まで、それは延々と続ていった。
「自分たちの信念を貫きとおす!どんな迫害にも負けない!」
信仰とはこれほど人に勇気と力を与えるものなのか!読んでいて胸が熱くなる。
重みのある話で感動的な場面もあったが、淡々と述べられる状況説明のような描写も多くて、とても読みづらかった。面白いという話ではないけれど、こういう歴史があったのだということを、多くの人に知ってもらいたいと思う。



| 帚木 蓬生 | 22:23 | comments(2) | ゆこりん |


蛍の航跡(帚木蓬生)

第二次大戦中、陸海軍将兵がいたところには必ず軍医がいた。戦地に派遣された医師たちは、そこで何を見たのか?そして、どんなことを体験したのか?「蠅の帝国」とともに日本医療小説大賞を受賞した作品。著者のライフワーク。

「蠅の帝国」を読んだ時は衝撃だった。戦争に対しての自分の認識がいかに甘かったかを、思い知らされた。この「蛍の航跡」も「蠅の帝国」同様、戦争の悲惨さを伝えている。心の準備をして読み進めたはずなのに、その衝撃は凄まじい。読むのを中断したくなるような悲惨さが、これでもかと読み手に迫ってくる。尊いはずの人の命が、無情にもどんどん失われていく。そこには医師がいるはずなのに・・・。武器も食料も医薬品も、何もかもが足りない。命を守るすべがない!何のための戦争か?誰のための戦争か?衝撃や悲しみだけでなく、怒りさえも感じた。重く暗い内容だが、平和がいかに大切なものかをあらためて認識させてくれる作品だった。



| 帚木 蓬生 | 21:47 | comments(0) | ゆこりん |


蠅の帝国(帚木蓬生)

第二次世界大戦中、東京、広島、満州、樺太、東南アジア・・・各地の戦場に派遣された医師たちがいた。悲惨で過酷な状況の中で、彼らが体験したこととは・・・?帚木蓬生のライフワークともいえる作品。

武器も食料も医薬品もない。そして時には戦闘意欲さえない。そんな過酷で凄惨な状況の中、医師たちはできる限りのことをしようと奔走した。戦争は悲惨だ。そのことは充分わかっているつもりだった。だが、この作品を読んで、自分の認識がいかに甘かったかを思い知らされた。
「これが戦争なのか!」
この一言だけで、後は言葉が出てこない。悲惨、凄惨、残酷・・・。いったいどんな言葉を並べたらこの状況を説明できるというのだろうか。いや、どんなに多くの言葉を並べても、この状況を言い表すことはできないだろう。想像を絶するひどさだ。あらためて思った。「戦争は絶対にしてはならない。」と。私だけではなく、この本を読んだら誰もが「これから先どんなことがあっても戦争は絶対にしてはならない。」と思うに違いない。
ひとりでも多くの人にこの本を読んでほしい。そして、平和の尊さをあらためて考えてほしい。衝撃的な作品だった・・・。



| 帚木 蓬生 | 20:16 | comments(0) | ゆこりん |


悲素(帚木蓬生)

夏祭りの会場で、カレーを食べた人が次々に倒れた。多数の犠牲者を出したヒ素中毒事件は、日本中の人々に衝撃を与えた。地元の警察からの要請を受けひとりの医師が和歌山へ向かうことになったが、この事件の裏には驚愕の真実が隠されていた・・・。

1998年7月25日、和歌山市園部地区で行われた夏祭りで、カレーを食べた67人が腹痛や吐き気などを訴えて病院に搬送され、そのうち4人が死亡した。原因は亜ヒ酸で、カレーに混入されていた・・・。この作品は、実際に起こった和歌山毒物カレー事件をもとに描かれている。
作品の中に登場する小林真由美。彼女が犯人ではないかと思われるが証拠がない。誰も真由美がカレー鍋に”何か”を入れるところを見ていないのだ。捜査が行き詰まる中、地元警察から要請を受けた医師・沢井が和歌山に赴く。沢井が知ったのは、驚くべき事実だった。カレー事件の起きる前にも、真由美にヒ素を飲まされたのではないかと思われる人たちがいたのだ。直接的な証拠なはない。だが、警察や沢井は診察や聞き取りを続け、事実を積み重ねていく。そこで語られるできごとは、驚愕のひと言だ。食べ物に毒を混ぜて他人に食べさせる。人としてこんなことが平気でできるのか?ただただ信じられない思いでいっぱいだった。
少しずつ外堀を埋め真由美を追い詰めていく過程は、とても読みごたえがあった。犯人は捕まった。しかし、多くの人たちがこの後も後遺症に苦しみ、一生消えることのない傷を心に抱えながら生きていかなければならない。決して ”犯人の逮捕 = 事件解決”にはならないのだ。
ページ数も多くかなり重い内容の作品だが、ひとりでも多くの人に読んでもらいたいと思う。



| 帚木 蓬生 | 19:33 | comments(0) | ゆこりん |


天に星 地に花(帚木蓬生)

年貢の負担が重くなり、怒った百姓たちは一揆を起こそうとする。だが、家老の稲次因幡の働きにより、かろうじて一揆は回避された。この出来事は、久留米藩井上村の大庄屋高松家の次男・庄十郎の胸に深く刻み込まれた。時がたち、庄十郎は医師の道を歩み始めるが・・・。

いつの世も、一握りの権力者が利益をほしいままにする。百姓たちにできることは集団で訴える一揆しかない。だがそれは、藩存続の危機になりかねない。家老の稲次因幡はかろうじて一揆を抑えることができたが、彼のその後の運命は残酷だった。 庄十郎は、病で九死に一生を得る。そのことがきっかけで医師を志すが、兄との間に生じた溝は生涯消えることはなかった。稲次因幡と庄十郎、このふたりの間には不思議な絆が生まれていく・・・。
医師となった庄十郎だが、どんなにがんばっても救えない命もある。絶望や挫折を乗り越え、成長していく彼の姿は胸を打つ。また、貧しい中で支えあいながら生きていく百姓たちの姿も胸に迫る。だが、そんな彼らに、藩主の理不尽な要求が突きつけられる。黙って受け入れても命にかかわる。逆らって騒ぎを起こしてもただではすまない。彼らがとった行動の結末は・・・。
「天に星 地に花 人に慈愛」
読了後、この言葉の持つ意味がどれほど重いかを実感した。そして、「人が生きていくうえで必要なのは何か?」そのことをあらためて考えた。感動的で、いつまでも余韻が残る、珠玉の作品だった。

* この作品の中に出てくる5人の庄屋の話は、同じ作者の「水神」に詳しく描かれています。そちらもオススメです♪



| 帚木 蓬生 | 16:51 | comments(2) | ゆこりん |


水神(帚木蓬生)

目の前を流れる筑後川。その豊かな水の恩恵を受けられない村があった。畑には、一滴の水も流れては来ない。ついに5人の庄屋が、全財産と己の命を懸けて立ち上がった!

川よりも高い場所にある村。そこでは、朝早くから暗くなるまで川から桶で水をくみ上げる人間がいた。だが、どんなにがんばっても畑は潤わず、作物の育ちも悪かった。村の人びとの生活は貧しいままだ。それでも、当時の人びとはその土地から離れることができないのだ。運命を受け入れ、耐えるしかなかった。そんなあきらめの境地にいた人びとを救ったのは、5人の庄屋だった。彼らは、全財産そして命までも懸けて、大工事を決行する。反対派の人たちを説得できるのか?藩を動かすことができるのか?庄屋たちの運命は?緊迫した状況を感じながら読み進めた。工事には、さまざまな困難が襲いかかった。そのひとつひとつを乗り越え、人びとは悲願を形に変えていく。「信念」が何ものにも勝った瞬間、大きな感動に襲われた。読み応えがあり、心に強く残る作品だった。



| 帚木 蓬生 | 20:04 | comments(0) | ゆこりん |


風花病棟(帚木蓬生)

心や体に傷を負い苦しんでいるのは患者だけではない。医者も同じことだ・・・。さまざまな医者や患者の心のひだを繊細に、そして切なく描き出した10編を収録。

死と向き合う患者を見守る医者。患者の苦悩を和らげようと努力する医者。乳癌に罹り必死に不安と闘う医者。顔を失った妻と妻を支える夫を見つめる医者。引退を間近に控えた医者・・・。いろいろな医者がいて、いろいろな患者がいる。さまざまな人間関係の中にあるさまざまな悲哀を作者は温かなまなざしで見つめ、描いている。中には切ないだけの話もあるけれど、人間として目をそむけてはいけない問題を含んでいるのだと、おのれ自身に言い聞かせながら読んだ。心や体が病んでしまったら、人はいったいどうすればいいのか?この作品の中に描かれているいろいろな人の生きざまが、その答えになっている。「静かでおだやかな中にも、強く心を揺さぶられるものがある。」そういう印象の作品だった。



| 帚木 蓬生 | 17:14 | comments(0) | ゆこりん |


アフリカの蹄(帚木蓬生)

アメリカの国立防疫センターで火災事故が発生し、医薬品20万トンが灰になった。同じ頃アフリカでは、恐るべき事態が起こっていた。絶滅したはずの天然痘が黒人の間で大発生した。日本の若き医師作田は、黒人に対する激しい人種差別の中、天然痘との闘いに敢然と挑むのだが・・・。

以前は、私たちの想像をはるかに超える黒人に対する激しい人種差別があった。彼らは、全ての権利や人としての尊厳さえも奪われ、家畜や物以下の扱いを受けた。白人にとっては目障りな存在でしかなかったのだ。この作品は、そういう時代の物語だ。白人たちは、黒人を排除するために「天然痘」を流行させる。予防接種を受けていない黒人の子供たちが次々に命を落としていく描写は読むのがつらかったが、黒人を救おうとする作田たちと排除しようとする者たちとの闘いは、読み応えがあった。やがて、作田たちの勇気と信念は、社会を大きく動かしていく。苦しんでいる黒人たちに手が差し伸べられた時には、感動を覚えた。たとえ外見が違っても、人はみな平等に生きる権利がある。この作品を読んで、あらためてそのことを強く感じた。



| 帚木 蓬生 | 16:42 | comments(0) | ゆこりん |


ヒトラーの防具(帚木蓬生)

東西の壁が崩壊したドイツ。「私」がベルリンで知ったのは驚くべき事実だった。
「日本からヒトラーに贈られた剣道の防具一式がある!」
そして、その防具とともに見つかったのは、手紙の束と20冊近いノートだった。ドイツと日本のはざ間で、運命に翻弄された男香田光彦。ノートに綴られた彼の歩んだ人生とは?

ドイツ人の父と日本人の母を持つ香田は、ヒトラーに剣道の防具を贈呈するためにドイツにやってきた。駐在武官補佐官としてドイツに残ることになった彼は、「戦争」の悲惨さを目の当たりにすることになる。ナチスのユダヤ人迫害、そして香田の兄が体験した病院での悲惨なできごと。狂気の沙汰としか思えないこれらのことも、当時は平然と行われてきた。それらに逆らう者のたどる運命は、悲劇のひと言に尽きる。香田の兄、香田のアパートの大家であるルントシュテット夫妻、そして香田に深く関わるヒルデ。彼らの生きざまにも涙を誘われる。どんなときもどんな場合も、決して戦争をしてはならない。戦争がもたらすのは、悲しみと絶望だけではないのか!
二つの国を結ぶ存在になりたかったであろう香田。彼は何を思いどのように生きたのか?孤独の中に身を置く彼の姿が見えるような気がして、読後も切なさと悲しさが残った。



| 帚木 蓬生 | 16:50 | comments(0) | ゆこりん |


千日紅の恋人(帚木蓬生)

不幸な二度の結婚の後、時子は父が遺したアパート「扇荘」の管理と老人介護施設でのパートをしていた。自分の人生に疑問を持ち始めていたとき、扇荘に一人の男性が引っ越してくる。時子はしだいに彼の存在が気になり始めるが・・・。

前半は、扇荘の住人との間に起こる出来事、時子自身のこと、時子の母のことなどが中心だが、読んでいて退屈な面があった。だが後半は面白かった。扇荘のささやかな日常の中にも、さまざまな悩みや悲しみがある。それを思いやる時子の優しさが心にしみる。時子と有馬の恋愛もよかった。派手さはない。だからこそ読んでいて身近に感じられ、胸を打たれた。ラストでは涙がこぼれた。静かで、穏やかな感じの作品だった。



| 帚木 蓬生 | 15:31 | comments(0) | ゆこりん |