野の春(宮本輝)
2019.09.29 Sunday
昭和42年。松坂熊吾の息子・伸仁は20歳になった。50歳で息子を授かった熊吾の願いは、「息子が20歳になるまでは絶対に死なん」ということだった。その願いは叶い、家族三人で祝うことになったが・・・。
流転の海第9部。完結編。
幼くひ弱だった伸仁は、成長するにつれたくましくなっていく。一方、熊吾は老いが目立つようになった。それでも彼は立ち止るどころか、さらに時代の中を駆け抜けて行こうとする。最後の最後まで、生きることに手を抜かない信念の人だったと思う。戦中戦後の激動の時代の中、何事にも動じることなく常に前向きに生きてきた。その熊吾の人生を振りかえると、感慨深いものがある。
長い年月、本当に長い長い年月、このシリーズを読んできた。全て読むことができて、ほっとしている。生きるということは、楽しくもあり、悲しくもあり、そして苦しくもあり・・・。でも人は生きる。生き続けようとする。何かのために、誰かのために。
生きることの意味、そして人間とは何かを、深く考えさせられた。読みごたえのある本当に面白いシリーズだった。
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