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ふくわらい(西加奈子)

鳴木戸定の名は、「マルキ・ド・サド」をもじってつけられたものだった。彼女が幼い頃に母とふくわらいをして遊んだことが、その後の彼女の人生に強い影響を与えることになる。さらに、特殊な家庭環境が定と「普通の人」たちとの間に見えない壁を作り出していた。定の進むべき道は・・・?

母とふくわらいをして遊んだことがよほど楽しかったのか、定はふくわらいにのめりこんでいった。このことと、母の死後に父とともに体験した特異なできごとが、彼女の人間性に大きな影響を与えた。定は、自分とまわりの人たちとの間に壁があるのを強く意識するようになる。しかし、彼女はよく分かっていなかったのではないのか。ほかの人と自分はどこが違うのかを。定は、人を平面的にしか見ていなかった。他人が泣いたり笑ったり怒ったりするのは、ふくわらいのように、単に目・口・鼻・眉の位置の変化だと思っていた。そんな定が少しずつだが変わり始める。顔は立体的だということにも気づく。そんな当たり前のことさえ定は今まで気づかずにいたのだ。人には顔があり、体があり、心がある。そしてそれらは繋がっている。そのことを知ったときの定の衝撃は大きかった。この瞬間、定は自分自身を解き放つ。それは、せき止められた水が一気にあふれ出すようだった。プロレスラーの守口の部屋で定に起こった異変は、彼女が「ヒト」として再生していくための一歩だったのだ。これからが、彼女の本当に人生なのだと思う。ラストは、うるっときた。定の光り輝く姿はいじらしくもあり、切なくもあり・・・。不思議な感動を与えてくれる、異色の作品だった。



| ”に” | 15:55 | comments(0) | ゆこりん |