ひとめぼれ(畠中恵)
2017.09.08 Friday
町名主の跡取り息子でお気楽者の麻之助には、同心の養子になった吉五郎という友がいる。最近、その吉五郎の様子がおかしい。どうやら、養子先の娘で吉五郎の許嫁の一葉との間に何かあるらしいのだが・・・。表題作「ひとめぼれ」を含む6編を収録。「まんまこと」シリーズ6。
札差の娘と揉めて上方に追いやられた男が復讐心を起こす話「わかれみち」、昔の約束が思わぬ波紋を引き起こす「昔の約束」、麻之助の亡き妻に似た娘・おこ乃に舞い込んだ三つの縁談を描いた「言祝ぎ」、火事場で麻之助が双子の男の子を救ったことから騒動に巻き込まれる話「黒煙」、なぜ男は行方不明になったのか?麻之助が真相を暴く「心の底」、そして表題作の「ひとめぼれ」。どの話も読みごたえがあった。
人生というのは、自分の思い通りにはいかないものだ。決まっているはずのものが、ひっくり返されることもある。人生に躓いた時の人の反応は様々だ。あのれの不甲斐なさを嘆き悲しんだり、相手を恨んだり、運命を呪ったり・・・。だが、順調な人生なんてこの世の中にはひとつもないのかもしれない。麻之助や吉五郎はこれからどう生きていくのか?
さまざまな人の心の中を描いていて、いろいろ考えさせられた。深い味わいのある作品だと思う。
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