この世の春(宮部みゆき)
2017.10.26 Thursday
北見藩藩主の北見重興は、病を理由に代々の家老衆によって突然隠居させられる。彼は、藩主の別邸・五香苑の座敷牢に幽閉されるとこになった。だが、重興の不可解な病には、恐るべき真実が隠されていた・・・。。
重興の病の源には深い闇があった。作事方の家に生まれた各務(かがみ)多紀は、医師の白田登、いとこの田島半十郎、元江戸家老の石野織部らとともに、なんとか重興を救おうとする。そして、その闇の正体がしだいに暴かれていく。重興の身に起こったことはあまりにも衝撃的なものだった・・・。
五香苑での重興と彼に関わる人たちの触れ合いがとてもいい。特に多紀の献身ぶりは、胸を打つものがある。重興が病になるほどの衝撃的なできごと!当時幼い少年だった重興が抱えるには、余りにも大きすぎたのだろう・・・。だが、この衝撃的なできごとの発端となった事柄、そしてそのために重興の身に起こるできごと、このふたつは読んでいて受け入れ難い。抵抗がある。「ああいう事柄から、こういう発想が生まれるのだろうか?」とても疑問に感じた。作者はどうしてこういう設定にしたのか?
また、ストーリー展開に緩慢な部分があり、長過ぎることもあって読んでいてイライラしてしまった。そうは言っても、ラストはそれなりの感動があった。未来に希望が持てるものだった。
30周年記念作品ということで期待して読んだのだが、私個人としてはそれほどでもなかった。以前読んだ「孤宿の人」のほうが、ずっとよかったように思う。
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