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琥珀の夢(伊集院静)
 

1879年(明治12年)1月30日、両替商・鳥井忠兵衛に次男・信治郎が誕生した。やがて彼は、日本に新たな風を巻き起こす・・・。サントリー創業者・鳥井信治郎の生涯を描いた作品。

明治、大正、昭和・・・。日本は激動の時代だった。日本が世界と対等に渡り合える力をつけようとするこの時期に、信治郎はおのれの夢を実現すべく奔走する。「本格国産ウイスキーを造る!」そのためにはどんな労力も惜しまない。周囲の反対、莫大な借金、数々の挫折・・・それらを乗り越え、ひたすら突き進む。人が喜ぶ優れたものを作るために。恐ろしいほどの情熱だ。彼は、商売には厳しかった。だが、人を思いやる心は決して忘れなかった。とても人情があり、人を惹きつける人柄だった。
幾多の困難を乗り越えて、信治郎の苦労が報われる時が来る。それはとても感動的だ。何度失敗してもくじけずにそこからさらに先に進もうとする鳥井信治郎。彼の生き方は、多くの教訓を私たちに遺してくれた。「やってみなはれ」信治郎のこの言葉が胸を打つ。
人間味あふれる感動的な話だった。多くのことも学んだ。面白かった。



| 伊集院 静 | 23:25 | comments(0) | ゆこりん |


ホワイトラビット(伊坂幸太郎)

人質立てこもり事件が発生!犯人は、職業はやばいが妻をこよなく愛する男だった。彼の要求は、ある男を捜して連れて来ること。警察は、必死に交渉を進めるが・・・。

ある家に押し入った男が人質を取り、要求を警察につきつける。男には男なりの事情があった。だが、人質側にも何か事情があるらしい・・・。そこに絡んできたのが例の黒澤だったことから、話はややこしくなる。一本道を歩いていたはずなのに、いつの間にか全く別の道を歩いていた。そんな感じだ。一体どこでどう作者にだまされてしまったのか?全ての謎が解き明かされたとき、もう一度最初からストーリーのチェックをした。時間、場所、人。作品の中にちりばめられたそれらのものが、見事に収束されている!練り上げられた緻密なストーリー展開は、読者を虜にする。読み始めたら止まらない。一気読みだ。久しぶりに伊坂幸太郎らしい作品を読んだ。読後感もよかった。とても面白い作品だと思う。



| 伊坂 幸太郎 | 20:24 | comments(0) | ゆこりん |


マスカレード・ナイト(東野圭吾)

若い女性の他殺体が発見された。死体発見のきっかけは、ウェブによる情報だった。情報者はいったい何者?そんな中、警視庁に密告状が!犯人は、ホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティーに姿を現すという。はたして本当なのか?山岸と新田のコンビが復活!「マスカレードシリーズ」3。

女性の殺され方は不可解なものだった。なぜ犯人はそういう手段を取ったのか?その動機は?また、犯行の情報提供者はいったい誰なのか?あちこちに謎がちりばめられている。
ホテルのコンシェルジュの山岸尚美とホテルマンとして潜入捜査に当たる新田浩介。このコンビがまた復活!と思ったが、前作前々作とはちょっと雰囲気が違う感じだ。ふたりのコンビネーションが発揮されていないのではないか。このシリーズは、ふたりの絶妙なコンビネーションが魅力のはずなのに・・・。
ホテルに対する客のクレームも、凄まじい。本当にこんなクレームがあるのか?また、クレームへの対処の仕方も、現実的なものなのか?疑問に感じるところもあった。
そして、肝心の事件の方だが、犯人が分かったときには驚いた。意外な真相で驚いたのではない。あまりにもあり得ない設定に思えたので驚いた。誰も気づかないものなのだろうか・・・。それに、ちりばめられた謎の答えが分かっても、そこには何の感情も湧かなかった。謎解きの面白さがあまりない。前二作が面白かったので今回も期待して読んだのだが、不満が残る内容だった。ちょっとがっかり・・・。



| 東野 圭吾 | 23:34 | comments(0) | ゆこりん |


この世の春(宮部みゆき)

 

北見藩藩主の北見重興は、病を理由に代々の家老衆によって突然隠居させられる。彼は、藩主の別邸・五香苑の座敷牢に幽閉されるとこになった。だが、重興の不可解な病には、恐るべき真実が隠されていた・・・。。

重興の病の源には深い闇があった。作事方の家に生まれた各務(かがみ)多紀は、医師の白田登、いとこの田島半十郎、元江戸家老の石野織部らとともに、なんとか重興を救おうとする。そして、その闇の正体がしだいに暴かれていく。重興の身に起こったことはあまりにも衝撃的なものだった・・・。
五香苑での重興と彼に関わる人たちの触れ合いがとてもいい。特に多紀の献身ぶりは、胸を打つものがある。重興が病になるほどの衝撃的なできごと!当時幼い少年だった重興が抱えるには、余りにも大きすぎたのだろう・・・。だが、この衝撃的なできごとの発端となった事柄、そしてそのために重興の身に起こるできごと、このふたつは読んでいて受け入れ難い。抵抗がある。「ああいう事柄から、こういう発想が生まれるのだろうか?」とても疑問に感じた。作者はどうしてこういう設定にしたのか?
また、ストーリー展開に緩慢な部分があり、長過ぎることもあって読んでいてイライラしてしまった。そうは言っても、ラストはそれなりの感動があった。未来に希望が持てるものだった。
30周年記念作品ということで期待して読んだのだが、私個人としてはそれほどでもなかった。以前読んだ「孤宿の人」のほうが、ずっとよかったように思う。



| 宮部 みゆき | 20:25 | comments(2) | ゆこりん |


リバース(湊かなえ)

深尾和久は、サラリーマンとして平凡な生活を送っていた。だが、そんな彼の生活を根底から揺るがすできごとが起こる。「深尾和久は人殺しだ」と書かれた告発文が届いたのだ。実は、彼には誰にも言えない秘密があった・・・。

深尾の学生時代の仲間たち。今はそれぞれ社会人として働いているが、深尾だけではなくその仲間たちにも告発文が届いていた。
学生時代のひとり友人の事故死。それは単なる事故死だったのか?他に何か真相が隠されているのか?告発文を書いたのは誰か?今頃何の目的で?疑問が膨らんでいく。深瀬はしだいに、同じ立場に立っていると思っていた友人たちへも疑惑の目を向けざるを得ない状況に追い込まれていく・・・。
作者は、最後の1行のためにストーリーを作成したとのこと。よく考えられたストーリーだと思う。その1行まで持って行くのは並々ならぬ苦労があったことだろう。でも、やはりどこか無理があるような気がする。読んでいて引っかかる。様々な疑問と後味の悪さが残り、読後感はあまりよくなかった。



| ”み” その他 | 20:05 | comments(0) | ゆこりん |


ねじとねじ回し(ヴィトルト・リプチンスキ)

「21世紀を目前にひかえて、ミレニアムを特集をするから記事を書いてくれないかな。」それが始まりだった。最高の道具について書いてくれという依頼に悩んでいる作者に、妻が言った。「ねじ回しよ!」まさか、ねじとねじ回しに壮大なドラマがあるとは・・・。興味深い歴史物語。

この1000年で最高の道具。まさかそれが、小さなねじとそれを回すねじ回しだとは思わなかった。けれど読み進めるうちに、これは本当にすごい発明だったのだと実感した。さまざまな道具の中から工夫されて生まれたねじ。最初は精度が悪く、作るのにも恐ろしく手間がかかった。だが、職人たちは工夫を重ねた。そして、精度の高いねじを大量に作る方法を思いつく。そのことは、飛躍的に物作りのレベルを上げた。もう、ねじ無しでは何も作れないのではないかと思う。小さなねじが、世界を大きく変える力を持っていたのだ!
図と説明文だけではどういう物か想像することが難しい部分もあったが、ひとつの道具がさまざまな職人たちの手を経て進化していく過程は、とても興味深かった。
それにしても、古代中国にはねじがなかったなんて・・・。意外だった。



| ヴィトルト・リプチンスキ | 22:56 | comments(0) | ゆこりん |


月の満ち欠け(佐藤正午)

「月のように、死んで生まれ変わる。」月の満ち欠けのような、人のそういう生き方死に方はあるのか?瑠璃というひとりの女性の生まれ変わりを通して、生と死を問いかける作品。第157回直木賞受賞作品。

神さまが選ばせた二種類の死に方。ひとつは、自分は死んでも子孫を残す。もうひとつは、月のように、死んでも何回も生まれ変わる。三角と出会い三角を愛した瑠璃は、何度も生まれ変わる。だが、はたしてそれは瑠璃の幸せなのか?自分の愛する娘が誰かの生まれ変わりで、その誰かの想いを成就するためだけに生きているとしたら、両親にとっては悲劇だ。瑠璃自身は、本当にそれでいいのか?もっと違った人生を歩むことだってできるのに。年老いた三角と、小学生の瑠璃。そんなふたりが以前のように愛を育むことができるとは思えないのだが・・・。疑問なところもある。三角は、瑠璃が生まれ変わるとずっと信じ続けて長い時を過ごしていたのか?根本的なこととして、瑠璃の想いは生まれ変わりを起こさせるほど強いものだったのか?読んだ限りでは、それほどの想いを感じることができなかったのだが。
多くの人が絶賛しているが、私個人としては残念ながら、ストーリーや登場人物たちに共感できるところはなかったし、それほどの感動もなかった。



| ”さ” その他 | 20:13 | comments(0) | ゆこりん |


とるとだす(畠中恵)

長崎屋の主・藤兵衛が倒れた!どうやら、薬種屋たちが持ってきた薬を飲みすぎたためらしい。飲みすぎの原因が自分に関係することだと知り、跡取り息子の一太郎は父親を救うために奔走する。はたして、藤兵衛は回復することができるのか・・・?しゃばけシリーズ16。

父・藤兵衛が倒れ、一太郎も奮起せざるを得ない。藤兵衛の体から飲みすぎた薬をだすために、一太郎は神様にも頼ろうとするが・・・。
何だか、今までのしゃばけシリーズとはちょっと違う雰囲気の話だ。登場する者たちも、ひと味もふた味も違う。一寸法師や浦島太郎???長崎屋の主に強い恨み抱く恐ろしい狂骨なるものが登場したときには、「藤兵衛はどうなるのか!?」とぞっとした。
「マンネリ化だ。」「内容が分かりづらい。」などという感想もあるが、私はとてもよく考えられた話だと思った。けれど、残念なことにそれが面白さには結びついていないのではないだろうか。好き嫌いがはっきり分かれる作品になってしまったような気がする。このシリーズが大好きなので、次回作に期待したい。



| 畠中 恵 | 20:39 | comments(0) | ゆこりん |


セイレーンの懺悔(中山七里)

東京都葛飾区で女子高生誘拐事件が発生!女子高生は無残な遺体となって発見された。「犯人は誰なのか?」帝都テレビ”アフタヌーンJapan”の里谷太一と朝倉多香美は、不祥事の汚名を挽回すべくスクープを狙い奔走するのだが・・・。

「報道」の真の目的は何なのか?真実を皆に伝えることではないのか?自分たちの名誉のため?報道番組存続のため?視聴率のため?事件の真相を追う里谷と朝倉だが、やっていることは野次馬根性丸出しだ。人の心の中に、平然と土足で踏み込む。相手が傷つこうが嘆こうが怒ろうが、いっこうに構わない。挙句の果てに、大失態を引き起こす。視聴者が求めているのは、本当にこういう真実なのだろうか?この作品は、報道のあり方に一石を投じている。
一方、ミステリーとしてはどうかというと、それほどインパクトのあるものではなかった。本の帯に書かれた「慟哭のラスト16ページ」は、大げさ過ぎる。面白くないとは言わないが、「これは面白い!」とも言える作品ではなかった。



| 中山 七里 | 22:00 | comments(0) | ゆこりん |


秋山善吉工務店(中山七里)

火事で家と夫を失った景子は、息子二人を連れて夫の実家に身を寄せることになった。夫の父親は、昭和ひと桁生まれの、工務店を営む昔気質の大工の棟梁だった・・・。さまざまな問題を抱えながらも、家族として歩もうとする秋山家の人たちの物語。

いじめに遭う次男の太一、やくざ絡みの問題を抱える長男の雅彦、そしてクレーマーに悩む景子。解決という出口の見えない状況に置かれた3人を救ったのは、善吉だった。口は悪いが、人情に厚い。そして、曲がったことが大嫌い。「スーパーマンか!?」と思うほどの大活躍だ。どんな難題でも解決してしまう善吉はすごい!
そんな秋山工務店に、ある日刑事が訪れる。秋山家の火事に疑問があるというのだ。そこにはどんな真実が隠されているのか・・・。
「火事の問題も善吉が解決してくれるのではないか。」そう思いながら読み進めたが、想像通りとは言い難い展開だった。しかも、ラストには思いもよらぬできごとが待っていた。まさか、こういうことになるとは!!
いろいろな問題やミステリー要素が盛り込まれた作品だが、漫画みたいな部分もありあまり共感はできなかった。善吉のことも納得できない。すっきりとした終わり方でないのが残念だった。



| 中山 七里 | 21:06 | comments(0) | ゆこりん |