のほ本♪
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...のんびりと、そしてのほほんと、読書三昧...
ja
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いちねんかん(畑中恵)
江戸の通町にある廻船問屋兼薬種問屋の長崎屋の跡取り息子の一太郎は、両親の話に目を丸くしていた。二人は一年間湯治に行くという。あるじが店を空けている間、はたして一太郎はちゃんと店を切り回していくことができるのか・・・?表題作を含む5編を収録。しゃばけシ...
江戸の通町にある廻船問屋兼薬種問屋の長崎屋の跡取り息子の一太郎は、両親の話に目を丸くしていた。二人は一年間湯治に行くという。あるじが店を空けている間、はたして一太郎はちゃんと店を切り回していくことができるのか・・・?表題作を含む5編を収録。しゃばけシリーズ第19弾。
体の弱い一太郎。両親のいない間、妖たちと力を合わせ二つの店を切り回していく。しかし、次から次へと難題が!奉公人を使うことの難しさ、失うものが何もない人間の怖さ、災いをもたらす者たちの争い、大店の娘婿選び騒動と、難題の内容は様々だ。一太郎の冷静な判断が光る。
一太郎は体は弱いかもしれないが、何が起こってもくじけない強い心を持っている。一年間の留守番で、彼は一回りも二回りも成長したと思う。今回も楽しみながら読むことができた。考えさせられる話もあった。次回作に期待したい。
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畠中 恵
2022-05-02T20:57:00+09:00
ゆこりん
JUGEM
ゆこりん
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告解(薬丸岳)
大学生の籬翔太は、ついやってしまった飲酒運転で、81歳の老女を轢き殺してしまう。しかも、その場から走り去った・・・。加害者とその家族、被害者とその家族。悲劇の連鎖が始まった。
どんな言い訳をしても、飲酒運転による轢き逃げは許されるものではない。ま...
大学生の籬翔太は、ついやってしまった飲酒運転で、81歳の老女を轢き殺してしまう。しかも、その場から走り去った・・・。加害者とその家族、被害者とその家族。悲劇の連鎖が始まった。
どんな言い訳をしても、飲酒運転による轢き逃げは許されるものではない。まして、被害者の死は、読むに堪えないほどひどいものだった。もし自分が被害者の家族だったら、かけがえのない家族の命を奪った者を絶対に許すことはできないだろう。現実社会でも飲酒運転による事故はある。そして無くならない。胸が痛くなる。
非現実的な部分もあり100%の感情移入はできなかったが、それでも深く考えさせられる部分が多かった作品だった。
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薬丸岳
2022-01-24T19:14:00+09:00
ゆこりん
JUGEM
ゆこりん
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クスノキの番人(東野圭吾)
理不尽な理由で会社をクビになった玲斗は、未払いの給料や退職金の代わりに金目のものを盗もうと会社に忍び込み逮捕される。「刑務所行きか?」そう覚悟した彼の前に一人の女性が現れた。彼女は、ある条件を受け入れるのなら玲斗を助けると提案するが・・・。
彼女...
理不尽な理由で会社をクビになった玲斗は、未払いの給料や退職金の代わりに金目のものを盗もうと会社に忍び込み逮捕される。「刑務所行きか?」そう覚悟した彼の前に一人の女性が現れた。彼女は、ある条件を受け入れるのなら玲斗を助けると提案するが・・・。
彼女の願いは、玲斗がクスノキの番人になることだった。理由もわからず引き受ける玲斗。「なぜ、いろいろな人がクスノキを訪れるのか?」その謎が解けるにつれ、玲斗の心は次第に変化していった。
人の人への思い。一緒に暮らしていても気づかないこともある。伝えきれないこともある。自分の思いを言葉にするのは難しい。だが、もし思いを忠実に伝える方法があったなら・・・。
現実的ではない不思議な話だったが、静かな感動を味わえる作品だった。
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東野 圭吾
2021-12-13T20:59:00+09:00
ゆこりん
JUGEM
ゆこりん
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アルルカンと道化師(池井戸潤)
東京中央銀行大阪西支店の融資課長の半沢直樹のもとに、企業買収の話が持ち込まれる。ターゲットは、百年近く続く出版社の仙波工藝社だった。強引とも思えるやり方で買収を進めようとする大阪営業本部。やがて半沢は、この買収工作の真の狙いを知ることになるのだが・・...
東京中央銀行大阪西支店の融資課長の半沢直樹のもとに、企業買収の話が持ち込まれる。ターゲットは、百年近く続く出版社の仙波工藝社だった。強引とも思えるやり方で買収を進めようとする大阪営業本部。やがて半沢は、この買収工作の真の狙いを知ることになるのだが・・・。
買収の話に全く乗り気でない仙波工藝社の社長・仙波友之。畑違いの業者からの強引な買収話に半沢は疑問を抱く。半沢を陥れようと、巧妙なわなを仕掛ける者たち・・・。半沢が探し当てた買収の真の狙いは実に驚くべきものだった・・・。
買収話とアルルカン、このふたつをどう解決していくのか?先を知りたくて一気に読んでしまった。人と人との温かな触れ合い、そして信頼関係の大切を感じた。面白さだけではなく、切なさも少し感じる、読み応えのある作品だった。
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池井戸 潤
2021-12-03T20:51:00+09:00
ゆこりん
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ゆこりん
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不死鳥少年(石田衣良)
アメリカ人の父と日本人の母を持つ少年タケシ。
父と父親似の姉はアメリカに、見た目が日本人のタケシと母は日本へ。戦争は家族を引き裂いた。そして、1945年3月10日、東京大空襲が!タケシの、大切な家族を守りたいと思う気持ちがある奇跡を起こした・・・。
...
アメリカ人の父と日本人の母を持つ少年タケシ。
父と父親似の姉はアメリカに、見た目が日本人のタケシと母は日本へ。戦争は家族を引き裂いた。そして、1945年3月10日、東京大空襲が!タケシの、大切な家族を守りたいと思う気持ちがある奇跡を起こした・・・。
茶色い目以外は髪が黒いので日本人のようだった。だが、その茶色い目のために、タケシはいじめに遭う。「クラスメイトと何とか心を通わせたい。」そのタケシの願いがようやく叶ったかに見えた時、残酷な運命が待ち受けていた。東京大空襲だ。雨のように降り注ぐ焼夷弾のため、タケシの住む本所地区は、住民の半数が亡くなり、九割を超える家屋が焼失した。いつ死んでもおかしくない状況の中、タケシの家族は誰一人欠けることなく難を逃れた。それは、家族を救いたいと思うタケシの強い願いが起こした奇跡だった。「よかった!」読んでいてそう思ったのだが・・・。読後は切なさが残った。
「東京大空襲を記録として残したい。」そういう作者の思いがしっかりと伝わってくる。平和の大切さを改めて感じた。読み応えがあり、心に強く残る作品だった。
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石田 衣良
2021-06-05T21:43:00+09:00
ゆこりん
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ゆこりん
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宮部みゆきの江戸怪談散歩(宮部みゆき編)
宮部みゆきさんの描く怪談話の舞台はいったいどんな所なのだろう?
その疑問に答えるようにさまざまな場所が紹介されている。ほかに、北村薫氏との対談、宮部さんの作品、宮部さんおすすめの作品などを収録。
三島屋変調百物語の舞台を歩く、宮部怪談の舞台を歩く...
宮部みゆきさんの描く怪談話の舞台はいったいどんな所なのだろう?
その疑問に答えるようにさまざまな場所が紹介されている。ほかに、北村薫氏との対談、宮部さんの作品、宮部さんおすすめの作品などを収録。
三島屋変調百物語の舞台を歩く、宮部怪談の舞台を歩く、本所深川七不思議を歩く、北村薫氏との対談、宮部作品2編、宮部さんおすすめの作品2編が収録されている。宮部ファンにとってはうれしい1冊だ。あちこち場所が写真入りで紹介されているが、写真がカラーではなく見づらいのが残念だった。北村氏との対談も興味深かった。おふたりともいろいろなことに精通している。知識量がすごい!
収録されている宮部作品は以前読んではいるが、何度読んでも面白い。特に「曼殊沙華」はとてもいい作品だと思う。三島屋変調百物語の最初の作品でおちかが聞き役を始めるきっかけになる話だが、読む者をどんどん物語の中に引き込んでいく。ほれぼれするような巧みなストリー展開だ。
サクサク読める、楽しい一冊だった。
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宮部 みゆき
2020-07-22T21:44:00+09:00
ゆこりん
JUGEM
ゆこりん
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ジェリーフィッシュは凍らない(市川憂人)
そのふわふわと空に浮かぶ姿が海月(くらげ)に似ていることから、「ジェリーフイッシュ」と呼ばれる飛行船。その新型機のテスト飛行のため、六人のメンバーが乗り込んだ。だが、思わぬアクシデントで山の中腹に不時着する。やがて飛行船は炎上。そして、驚愕の事実が!...
そのふわふわと空に浮かぶ姿が海月(くらげ)に似ていることから、「ジェリーフイッシュ」と呼ばれる飛行船。その新型機のテスト飛行のため、六人のメンバーが乗り込んだ。だが、思わぬアクシデントで山の中腹に不時着する。やがて飛行船は炎上。そして、驚愕の事実が!六人の乗組員全員が殺害されていた・・・。第26回鮎川哲也賞受賞作品。
予想外のトラブルで山の中腹に不時着することになった飛行船だったが、その後炎上。遺体となって発見された乗組員全員が殺害されていた。雪山の中腹。外部から人が飛行船へ侵入することも、内部の人間が脱出することも不可能・・・言わば、密室状態だった。アガサ・クリスティーの作品「そして誰もいなくなった」を彷彿させる。
事件解決のため刑事のマリアとその部下・九条漣が現場に向かう。過去の出来事と現在の出来事が交錯しながら、次第に事件の真実に向かうのだが・・・。
うーん。マリアと九条のキャラクターが魅力的とは言えなかった。特にマリアに対しては、好感が持てない。こんな極端な個性を持たさなくてもよかったのではないかと思う。
また、真実に意外性はあったが、なんだかすっきりしない。作者に見事にだまされた!という爽快感はなく、どこか不自然でもやもやしたものが残る。そこのところが残念だった。
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”い” その他
2020-07-21T21:23:00+09:00
ゆこりん
JUGEM
ゆこりん
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逆ソクラテス(伊坂幸太郎)
一度ダメな生徒だと思ったら、その認識を変えない教師。決めつけられた生徒はもうその認識から逃れることはできないのか?決めつけられた生徒・草壁を救おうと、クラスメートが立ち上がる!その作戦は?表題作「逆ソクラテス」を含む5編を収録。
「逆ソクラテス」
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一度ダメな生徒だと思ったら、その認識を変えない教師。決めつけられた生徒はもうその認識から逃れることはできないのか?決めつけられた生徒・草壁を救おうと、クラスメートが立ち上がる!その作戦は?表題作「逆ソクラテス」を含む5編を収録。
「逆ソクラテス」
秘められた可能性を持っているのに一方向からしか見ず、「この生徒はできない。」と決めつける教師。その教師の先入観を何とか崩そうと奮闘するクラスメートたち。生き生きとした描写で、読み手を惹きつける。誰がどんな関わり方をするかで、子供たちの未来は変わってしまう。もっと柔軟な目で子供たちを見てほしい。そう願う。「僕はそうは思わない。」この言葉がとても印象的で、強く心に残った。
「非オプティマス」では、人を見かけで判断することはいけないということを、相手によって態度を変えたりわざと人に迷惑をかけることがどんなに愚かな行為であるかということを、あらためて考えさせてくれた。「本当にその通り!」
どの話もよかった。作者の思いがしっかりと詰まっていて、読みごたえがあった。さわやかな感動が味わえる作品だと思う
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伊坂 幸太郎
2020-07-20T21:04:00+09:00
ゆこりん
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ゆこりん
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龍神の雨(道尾秀介)
添木田蓮と楓兄妹は、母が事故死した後継父と暮らしていた。一方、溝田辰也と圭介兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母と暮らしていた。
蓮は、継父に楓がひどい目に遭わされたことに怒り、継父の殺害計画を立てる。一方辰也は、継母を困らせたくて、蓮の働いている店で...
添木田蓮と楓兄妹は、母が事故死した後継父と暮らしていた。一方、溝田辰也と圭介兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母と暮らしていた。
蓮は、継父に楓がひどい目に遭わされたことに怒り、継父の殺害計画を立てる。一方辰也は、継母を困らせたくて、蓮の働いている店で万引きをする。この二組のきょうだいは、ひとつの事件をきっかけに微妙に交錯することになるのだが・・・。
ある出来事をきっかけに、連と楓、辰也と圭介、二組のきょうだいの思惑が絡み合う。共通しているのは、実の親がもういないこと。未成年の彼らには、自分たちの境遇をどうにもできないこと。そんな中で起こったひとりの人間の死。その死をめぐる4人の心の葛藤、先の見えない状況、緊迫感のある展開が、読み手を引きつける。巧妙に張り巡らされた伏線は、後半で生きてくる。そして、意外な真実が次々と明らかになるのだが・・・。
作者の都合のいい展開で現実味に欠ける部分があったが、それを差し引いても面白さを感じる。ラストも無難にまとめられていると思う。
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”み” その他
2020-07-18T22:32:00+09:00
ゆこりん
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ゆこりん
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シーソーモンスター(伊坂幸太郎)
一人暮らしの母を心配した北山直人は、妻に相談し、母と同居することにした。何とかうまくやっていけるだろうと思っていたが、嫁姑間に不穏な空気が流れる。実は、単なる嫁姑問題だと思われていた裏側には、姑のセツと嫁の宮子の秘密が隠されていた・・・。表題作「シー...
一人暮らしの母を心配した北山直人は、妻に相談し、母と同居することにした。何とかうまくやっていけるだろうと思っていたが、嫁姑間に不穏な空気が流れる。実は、単なる嫁姑問題だと思われていた裏側には、姑のセツと嫁の宮子の秘密が隠されていた・・・。表題作「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」2編を収録。
「シーソーモンスター」
セツと宮子の驚くべき秘密。それが、直人の危機を前にして次第に明らかになっていく。製薬会社に勤めている直人は、出入りしている病院の不正に気付く。証拠をつかもうとする直人だが、魔の手が伸びる。次々に起こる危機から何とか直人を守ろうとする宮子だが、一人では限界がある。もうだめかと思ったその時・・・。最後は爽快感が味わえる。何も知らないのは直人だけというのも、面白い。
「スピンモンスター」
「シーソーモンスター」は昭和を舞台にした作品だったが、こちらは2050年の話だ。水戸直正が新幹線の中で手紙を託される。その手紙を届ければそれで終わりのはずだったが、次第に事件に巻き込まれていく。事件に巻き込まれていく過程が、まさに伊坂流だ。スピーディーな展開から目が離せなかった。「シーソーモンスター」との微妙なつながりも面白い。それにしても、記憶というのは実にあいまいなものだとつくづく思う。
今回も、伊坂ワールドを堪能した。楽しめる作品だと思う。
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伊坂 幸太郎
2020-07-14T22:37:00+09:00
ゆこりん
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ゆこりん
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パリのすてきなおじさん(金井真紀)
「パリの街を歩き回り、面白い話をしてくれそうなおじさんを見つけて話を聞こう!」
パリ在住40年のジャーナリスト・広岡裕児さんの案内で、パリで見つけたおじさんたちの話を集めた作品。
パリには実にさまざまな人たちが住んでいる。いろいろな国から来ていろ...
「パリの街を歩き回り、面白い話をしてくれそうなおじさんを見つけて話を聞こう!」
パリ在住40年のジャーナリスト・広岡裕児さんの案内で、パリで見つけたおじさんたちの話を集めた作品。
パリには実にさまざまな人たちが住んでいる。いろいろな国から来ていろいろな事情でパリに住んでいる人がたくさんいる。ここに登場するおじさんたちの経歴も十人十色でとても興味深い。登場する人たちに共通するのは、しっかりとした自分の考えをもって、しっかりと大地に足をつけて生きているということだ。人生、思うようにいかないこともたくさんある。そんなときはどう考えどう行動するべきか?この作品の中に、たくさんのヒントがある。そして、生きるということはやっぱり素晴らしいことなのだと思わせてくれる。金井真紀さんが描くおじさんたちのイラストも見ていて楽しい。
ずっと手元に置いて時々読み返したくなるような作品だ。
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”か” その他
2020-07-11T21:24:00+09:00
ゆこりん
JUGEM
ゆこりん
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黒武御神火御殿(宮部みゆき)
江戸の神田三島町にある袋物屋の三島屋の次男・富次郎は、嫁いだおちかの跡を継ぎ、変わり百物語の聞き手になった。そんな富次郎のもとに印半天が持ち込まれた。変わった印を持つその半天には、恐ろしい秘密が隠されていた・・・。表題作を含む4編を収録。三島屋変調百...
江戸の神田三島町にある袋物屋の三島屋の次男・富次郎は、嫁いだおちかの跡を継ぎ、変わり百物語の聞き手になった。そんな富次郎のもとに印半天が持ち込まれた。変わった印を持つその半天には、恐ろしい秘密が隠されていた・・・。表題作を含む4編を収録。三島屋変調百物語シリーズ6。
何かに取り憑かれる怖さ、人の恨みの怖さと、怖さの種類はそれぞれ違うが、どの話も本当に怖い。特に人の恨みは怖い。なぜこんなにも相手を恨まなければならないのかと、その理不尽さに怒りさえ覚える。特に「姑の墓」は怖い。恨んで祟る。とても後味の悪い話だった。
表題作の「黒武御神火御殿」も人の恨みにまつわる話だ。その恨みは尋常ではなく、凄まじい。自分が報われなかったから人を恨む。恨む側にも理由はあるかもしれないが、ここまでするのか!という驚きもあった。恨みを向けられた人たちがいったいどうなるのか?かなり長い話だったが、最後まで一気に読んでしまった。
日々の暮らしの中、誰を恨むこともなく、誰からも恨まれることなく、穏やかに過ごしたいものだとつくづく思う。
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宮部 みゆき
2020-07-09T22:36:00+09:00
ゆこりん
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ゆこりん
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罪の轍(奥田英朗)
昭和38年、漁師の手伝いをしていた青年・宇野寛治は、窃盗事件を起こす。住んでいた北海道・礼文島にはいられなくなり、彼は東京へ逃亡する。その東京で起こった強盗殺人事件、そして幼児誘拐事件。このふたつに宇野は関わっているのか?刑事・落合昌夫の執念の捜査が...
昭和38年、漁師の手伝いをしていた青年・宇野寛治は、窃盗事件を起こす。住んでいた北海道・礼文島にはいられなくなり、彼は東京へ逃亡する。その東京で起こった強盗殺人事件、そして幼児誘拐事件。このふたつに宇野は関わっているのか?刑事・落合昌夫の執念の捜査が始まる・・・。
子供のころのある出来事が原因で、宇野は脳に機能障害を抱えている。子供たちからは「莫迦」と呼ばれる。そんな宇野が事件を起こす・・・。
この作品で描かれている幼児誘拐事件は、昭和38年に起こった「吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐事件」を彷彿とさせる。
「身代金を受け取りに来たところで犯人を逮捕し、子供を無事両親のもとへ返す。」警察の必死の捜査が始まる。本当に宇野が犯人なのか?先が気になり、ページをめくる手が止まらなかった。
面白いと思う。だが、かなりの長さの作品で、少々うんざりした。ここまでの長さが果たして必要だったのか?個人的には、疑問だ。ダラダラ感が強いので、もう少し的確にコンパクトにまとめたほうがよかったと思う。また、これだけ長いのに、ラストは意外とあっさりだったので拍子抜けした。犯人が犯行に至った経緯も描写がイマイチだった。こういう部分こそ、長くなってもいいから丁寧に描くべきではなかったのか。読後、感動が得られなかったのも残念だった。
ちなみに・・・
吉展ちゃん誘拐事件を扱ったノンフィクションは、おススメです!
→ 「誘拐」(本田靖春)
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奥田 英朗
2020-01-12T21:47:00+09:00
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ゆこりん
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http://nohohon2.yukorin.info/?eid=1611
奇跡の本屋をつくりたい(久住邦晴)
ユニークな企画で注目を集めた本屋さんが、かつて札幌にあった。それは、「くすみ書房」。時代の流れの中、街の本屋さんはどんどん消えていった。そんな街の本屋さんを存続させようと奔走したくすみ書房店主・久住邦晴さん。志半ばで逝った、彼の遺稿集。
「なぜだ...
ユニークな企画で注目を集めた本屋さんが、かつて札幌にあった。それは、「くすみ書房」。時代の流れの中、街の本屋さんはどんどん消えていった。そんな街の本屋さんを存続させようと奔走したくすみ書房店主・久住邦晴さん。志半ばで逝った、彼の遺稿集。
「なぜだ!?売れない文庫フェア」「中高生はこれを読め」「ソクラテスのカフェ」。
次々とユニークなアイディアを出し、注目を集めた「くすみ書房」。しかし、時代の流れは愛すべき街の本屋さんを存続の危機に追いやる。場所を変え、起死回生を図る久住さん。だが、奮闘むなしく、「くすみ書房」は終焉の時を迎える・・・。
久住さんの遺した文章を読むと、彼がいかに本を愛していたか、そして書店をたたむことがどれほど無念だったのかが手に取るようにわかる。私も、何度か行ったことがある。ほかの本屋さんにはない独特の雰囲気があり、居心地のいい本屋さんだった。できれば、ずっと残ってほしかった。
「くすみ書房」は無くなってしまったけれど、久住さんには夢があった。でも、その夢を実現する前に、彼は病に倒れ、逝った・・・。さぞかし残念だっただろう。そう思うと胸が痛い。彼の夢が実現するのを見たかった。彼の死が惜しまれてならない。
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”く”
2020-01-10T21:47:00+09:00
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秋期限定栗きんとん事件(米澤穂信)
小山内さんとは夏休みに別れてしまった・・・。そんな小鳩常悟朗を、手紙で呼び出す女性が現れた。一方、小山内さんにも新たな出会いが!?そんな中、学校の新聞部は連続放火事件を扱うことになった。次第にエスカレートする放火の規模。なかなか解決しない事件...
小山内さんとは夏休みに別れてしまった・・・。そんな小鳩常悟朗を、手紙で呼び出す女性が現れた。一方、小山内さんにも新たな出会いが!?そんな中、学校の新聞部は連続放火事件を扱うことになった。次第にエスカレートする放火の規模。なかなか解決しない事件に、ついに常悟朗は解決に乗り出すのだが・・・。
「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定トロピカルパフェ事件」に続くシリーズ3作目。
新聞部の瓜野は、学内新聞で放火事件を扱おうとするが、部長の堂島が難色を示す。だが、堂島を説き伏せ彼は放火事件を大々的に扱う。そして、瓜野の考えた通りの順番で事件は起こっていく。これはいったいどういうことなのか?そして、瓜野とつき合っている小山内さんがこの事件にどう関わってくるのか?さらに、小鳩常悟朗はこの事件をどう解決しようというのか?はたして、高校生が手に負える事件なのか?たくさんの「?」が、頭の中で飛び交う・・・。
よく練られたストーリーだと思う。登場人物の心理描写もよかった。読み応えのある面白い作品だった。
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米澤 穂信
2020-01-09T22:36:00+09:00
ゆこりん
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http://nohohon2.yukorin.info/?eid=1609
てんげんつう(畠中恵)
晴れていたのに、急に雨が降ってきた。妖たちが濡れ鼠になったけれど、離れにはたくさんの手ぬぐいがすでに用意されていた。聞けば、天眼通(てんげんつう)が雨が降ることを教えてくれたのだとか。その天眼通、若旦那に頼みがあると長崎屋にやってきたのだが・・・。表...
晴れていたのに、急に雨が降ってきた。妖たちが濡れ鼠になったけれど、離れにはたくさんの手ぬぐいがすでに用意されていた。聞けば、天眼通(てんげんつう)が雨が降ることを教えてくれたのだとか。その天眼通、若旦那に頼みがあると長崎屋にやってきたのだが・・・。表題作「てんげんつう」を含む5編を収録。しゃばけシリーズ18。
20年ほど飼った猫に千里眼を譲られた男。遥か昔のこと、天気、人が思っていることなど、何でも分かるようになった。だが、それは決していいことばかりではなかった。人から怖れられたり、命を狙われたりと、散々だった。「どうすればいいのか?」男は一太郎に解決策を求めた・・・。
千里眼の力を持った人生なんてつまらない。いや、それどころか、耐えられなくて生きていけそうもない。何も分からないからこそ人生は面白いし、その時その時を大切に過ごそうと思うのだから。
そのほかの話、仁吉の縁談、おぎんのケンカの顛末、山姥の話、毛虫だらけの桜の謎も、面白かった。このシリーズはこれからどこへ向かうのか?一太郎の未来には何が待っているのか?気になることはいろいろある。作者がどう描いていくのか楽しみだ。
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畠中 恵
2020-01-08T21:29:00+09:00
ゆこりん
JUGEM
ゆこりん
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夢見る帝国図書館(中島京子)
物語は、15年前にさかのぼってそこから始まる。当時フリーライターだった”わたし”は、上野の公園でちょっと変わった女性と出会った。
「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
その女性、60代の喜和子さんは、”わたし”にそう言った。帝国図書館と...
物語は、15年前にさかのぼってそこから始まる。当時フリーライターだった”わたし”は、上野の公園でちょっと変わった女性と出会った。
「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
その女性、60代の喜和子さんは、”わたし”にそう言った。帝国図書館と喜和子さんの人生。この二つの物語が紡がれていく・・・。
ちょっと変わったところのある喜和子さん。だが”わたし”は、すっかり意気投合する。二人の関係はつかず離れず、お互いがお互いを束縛することなく、とてもいい関係だ。「帝国図書館を小説にしてほしい。」”わたし”は喜和子さんに頼まれるが、その約束を果たさないままでいた。けれど、喜和子さんは楽しみに待っていた。そのことは、後々になって”わたし”の胸に深く刻まれることになる。
帝国図書館のエピソードも随所に描かれている。図書館を作るということは、並大抵の苦労ではない。いろいろな人の血と涙と汗の結晶なのだ。著名な人物も登場して、とても面白いエピソードだった。
人と人との出会い、そしてつながりは不思議だ。いろいろな縁が絡み合って、そこから新たな物語が生まれる・・・。
図書館の物語と喜和子さんの人生。二つの物語の紡がれ方が、とても印象的だった。静かで穏やかな感動が胸いっぱいに広がっていくのを感じた。心温まる作品だった。
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”な” その他
2020-01-04T21:15:00+09:00
ゆこりん
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ノースライト(横山秀夫)
「ぜひ、青瀬さんに!」
依頼者の強い希望で、一級建築士の青瀬は家を設計する。しかし、新築の家に、依頼者は引越してこなかった。その家に残されていた一つの古い椅子・・・。それは、いったい何を意味するのか?
「あんなに楽しみにしていた家が完成したのに・...
「ぜひ、青瀬さんに!」
依頼者の強い希望で、一級建築士の青瀬は家を設計する。しかし、新築の家に、依頼者は引越してこなかった。その家に残されていた一つの古い椅子・・・。それは、いったい何を意味するのか?
「あんなに楽しみにしていた家が完成したのに・・・。」依頼者が引っ越していないことに、青瀬は愕然とする。「なぜ自分にあれほどの強い希望で設計を依頼したのか?」青瀬の疑問は深まっていく。青瀬は、依頼者の行方を追うことにした。そこには、思いがけない真実が隠されていた!
人と人とはどこかでつながっている。この作品を読むと、そのかかわりの不思議さや奥深さを感じずにはいられない。依頼者の謎を追う。そのことは、青瀬と妻や娘との関係にもいい意味で影響を及ぼす。その部分が絶妙だと思う。ミステリーと言うよりは、青瀬自身、そして彼と彼の家族との再生の物語のような気がする。凝りすぎていてリアリティに欠けると思われるところもあるが、それなりに楽しめた。
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横山 秀夫
2020-01-02T22:08:00+09:00
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ゆこりん
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スワロウテイルの消失点(川瀬七緒)
腐乱死体の解剖中、そこにいた者たちの体に異変が起こる。赤い発疹の後に起こる猛烈な痒み!その原因となった虫は、日本にいないはずの虫だった・・・。法医昆虫学捜査官シリーズ7。
冒頭から凄まじい腐乱死体が登場!ウジの数も半端ではない。そして、日本にいな...
腐乱死体の解剖中、そこにいた者たちの体に異変が起こる。赤い発疹の後に起こる猛烈な痒み!その原因となった虫は、日本にいないはずの虫だった・・・。法医昆虫学捜査官シリーズ7。
冒頭から凄まじい腐乱死体が登場!ウジの数も半端ではない。そして、日本にいないはずの虫が、解剖に立ち会った者たちに襲い掛かる。事件の犯人は誰なのかよりも、その虫がどうやって日本に来たのか、そちらのほうが気になる。
法医昆虫学者・赤堀の調査が始まる。虫たちが教えてくれる事実をひとつひとつ積み重ねていく。虫たちは、決して人を欺いたり裏切ったりはしない。語るのは真実のみだ。「犯人は、虫たちが教えてくれる。」この作品の最大の魅力がそこにある。昆虫に関する詳細な知識を、作者はいったいどこから得ているのか?ただただ感心するしかない。
今回も期待を裏切らない面白さだった。私は虫嫌いだが、このシリーズだけは読み続けたいと思っている。
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川瀬 七緒
2019-12-24T21:47:00+09:00
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希望の糸(東野圭吾)
喫茶店を営む女性が刺殺された。怨恨?金銭のトラブル?愛情関係のもつれ?様々な動機が考えられるが、顔見知りの犯行と思われた。なぜ彼女は殺されたのか?そこには複雑な人間関係があった・・・。
ひとつの殺人事件と、加賀恭一郎のいとこ松宮脩平の隠されてきた...
喫茶店を営む女性が刺殺された。怨恨?金銭のトラブル?愛情関係のもつれ?様々な動機が考えられるが、顔見知りの犯行と思われた。なぜ彼女は殺されたのか?そこには複雑な人間関係があった・・・。
ひとつの殺人事件と、加賀恭一郎のいとこ松宮脩平の隠されてきた秘密とを絡めて物語は展開していく。加賀恭一郎シリーズかと思われたが、今回は松宮に焦点が当てられている。様々な登場人物、様々な出来事、これらがどう結びついていくのか、ワクワクしながら読んだ。けれど、設定が強引すぎないか?都合のいい展開に思える。それに、あまりに多くのものを詰め込みすぎると、焦点がぼやけてくる。結局、この作品で作者が読み手に伝えたいことは何だったのか・・・。東野作品、期待したのだが、感動には至らなかった。
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東野 圭吾
2019-12-23T22:44:00+09:00
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夏期限定トロピカルパフェ事件(米澤穂信)
夏休みの初日、小山内さんが小鳩常悟朗の家にやって来た。手には一枚の地図。そこにはいろいろなお菓子屋さんの場所が記されていた。小山内さんは、ふたりで夏休み中にこれらの店を回ろうと言う。だが、真の目的は、おいしいお菓子を食べることではなかった・・・。
「...
夏休みの初日、小山内さんが小鳩常悟朗の家にやって来た。手には一枚の地図。そこにはいろいろなお菓子屋さんの場所が記されていた。小山内さんは、ふたりで夏休み中にこれらの店を回ろうと言う。だが、真の目的は、おいしいお菓子を食べることではなかった・・・。
「春期限定いちごタルト事件」に続くシリーズ2作目。
小山内さんはすごい!とても高校生の女の子には思えない。しかも怖い!その無邪気な笑顔にだまされてはいけない。彼女が巧妙に仕掛けた罠に、ターゲットは見事にはまっていく。狙った獲物は確実に仕留めるのだ。
常悟朗は、最初は小山内さんの企みに気づかなかった。だが、気づいてしまってからは、ふたりの関係は微妙に変化していく。ある事件はいちおう解決するのだが、ふたりの心は以前のままではなくなってしまった・・・。この後、ふたりはどうなってしまうのか?とても気になる終わり方だ。
考え抜かれた絶妙なストーリーは、最初から最後まで読み手を釘付けにする。面白い作品だった。
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米澤 穂信
2019-11-27T20:51:00+09:00
ゆこりん
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夜が暗いとは限らない(寺地はるな)
閉店が決まったあかつきマーケット。そのマーケットのマスコット・あかつきんが失踪した!だが、失踪したはずのあかつきんは町のあちこちに姿を現し、人助けをする。なぜ?
さまざまな人たちのさまざまな心温まる物語。
大阪市内にほど近い、人口10万ほどの市。...
閉店が決まったあかつきマーケット。そのマーケットのマスコット・あかつきんが失踪した!だが、失踪したはずのあかつきんは町のあちこちに姿を現し、人助けをする。なぜ?
さまざまな人たちのさまざまな心温まる物語。
大阪市内にほど近い、人口10万ほどの市。その市のはじっこあたりに暁町はあった。その暁町にある「あかつきマーケット」が存続の危機に・・・。マーケットを盛り上げようとマスコットキャラクター「あかつきん」が誕生した。だが、マーケットの閉店が決まり、あかつきんも突然失踪してしまう。なぜ、あかつきんは失踪したのか・・・?
この作品に登場する人たちの悩みや苦しみ。それは、当人にとっては深刻でもほかの人から見たら取るに足らないことかもしれない。でも、読んでいて共感できる。そういうことが現実の日常でも起こりうると思うからだ。
「ちょっとした言葉や何気ない行動が、暗闇の中にいる人に光を与えることもある。」
この作品を読んで強くそう感じた。 短編集だが、話はどこかでゆるくつながっている。そして、あちこちに現れるあかつきんの存在も、いろいろな意味を持つ。読んでいて心地よい。
人生にとって何が一番大切かを考えさせてくれる、味わいのある作品だった。
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”て”
2019-11-26T21:57:00+09:00
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そしてバトンは渡された(瀬尾まいこ)
まるでリレーのように、次から次へと親というバトンが渡されていく。けれど、血のつながらない親たちと優子の間には、確かな愛情と絆があった。心温まる物語。
実の母は早くに亡くなった。その後再婚した父は、再婚相手と娘の優子を残し、ブラジル(?)へ。優子は...
まるでリレーのように、次から次へと親というバトンが渡されていく。けれど、血のつながらない親たちと優子の間には、確かな愛情と絆があった。心温まる物語。
実の母は早くに亡くなった。その後再婚した父は、再婚相手と娘の優子を残し、ブラジル(?)へ。優子は、血のつながらない親たちに育てられることになる。彼らはさまざまな事情から、優子の養育を次の者に引き継いでいく。彼らに共通しているのは、優子をこよなく愛しているということだ。親として、限りない愛情を注いでいる。そんな育ての親たちの気持ちを優子もしっかり受け止めている。血がつながっているとかいないとか、そんなことは関係ない。愛情や信頼で結びついていれば、りっぱな親子なのだ。
こんな大人たちがたくさんいれば、幼い子供たちへの虐待もなくなるかもしれない。幼児虐待が頻繁に起こっている今の世の中の状況を見ると、そう思わずにはいられない。
ちょっと切ないところもあるけれど、ほのぼのとした心に残る作品だった。
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瀬尾 まいこ
2019-11-24T21:59:00+09:00
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春期限定いちごタルト事件(米澤穂信)
小鳩君と小山内さん。ふたりは、つつましい小市民を目指す高校1年生だ。だが、彼らの前に次々と謎が現れる。小市民を目指すはずのふたりが取った行動は・・・。
小鳩常悟朗と小山内ゆきは、中学3年生の初夏から一緒にいる。受験戦争を勝ち抜き高校生になったふた...
小鳩君と小山内さん。ふたりは、つつましい小市民を目指す高校1年生だ。だが、彼らの前に次々と謎が現れる。小市民を目指すはずのふたりが取った行動は・・・。
小鳩常悟朗と小山内ゆきは、中学3年生の初夏から一緒にいる。受験戦争を勝ち抜き高校生になったふたりは、単なる友人ではない。目立たないように存在する小市民を目指す同志なのだ。だが、ふたりの意に反して、周りでは次々に謎のできごとが起こる。謎を前にして、常悟朗の血が騒ぐ。目立たずに謎を解くことができるのか?そして、最大の事件が!!ゆきがやっと手に入れた春期限定のいちごタルトが、何者かに自転車ごと持ち去られてしまったのだ!常悟朗とゆきは、取り戻すべく犯人探しの行動を起こすが・・・。
軽快でサクサク読める面白い作品だ。事件も、人の生死にかかわる深刻なものは起きないので、どこかほほえましく感じる。ラストもきっちりまとめられていて、読後感もよかった。
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米澤 穂信
2019-10-21T23:06:00+09:00
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バベル九朔(万城目学)
「バベル九朔」と呼ばれる5階建ての雑居ビル。祖父が建て母が引き継いだこのビルに、九朔満大は小説を書きながら管理人として住んでいた。
巨大ネズミの出現、不気味なカラス女、不思議な絵・・・。このビルには、意外な秘密があった!
「バベル九朔」に現れた不...
「バベル九朔」と呼ばれる5階建ての雑居ビル。祖父が建て母が引き継いだこのビルに、九朔満大は小説を書きながら管理人として住んでいた。
巨大ネズミの出現、不気味なカラス女、不思議な絵・・・。このビルには、意外な秘密があった!
「バベル九朔」に現れた不気味なカラス女が「扉はどこだ。」と言いながら満大に迫る。そのカラス女から逃れるため、満大は1枚の絵の中に現れた扉の中に思わず逃げ込んだ。そこで彼は不思議な体験をする。そして、カラス女が語るこのビルの驚くべき秘密!
死後も力を持ち続け、ビルを支える祖父。その祖父の力が弱まったとき、ビルの崩壊が始まる・・・?誰を、何を信じればいいのか?自分はどう行動するべきか?そして、「バベル九朔」を救う方法は?満大に決断の時が迫る。残された時間はあとわずか!一体どうなってしまうのかと、期待が高まるが・・・。
何とも不思議で、理解し難いというのが、正直な感想だ。満大は、どうなってしまったのか?作者は何を言いたかったのか?よく分からないまま読み終えてしまった。何だかすっきりしない結末だった。
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万城目 学
2019-10-15T21:50:00+09:00
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ドクター・デスの遺産(中山七里)
「往診に来た医者が父を殺した!」
少年の訴えが事の始まりだった。単なる少年の思い込みだと考えていた犬養は、そこに恐るべき事実が隠されているのを知ることになる・・・。
「刑事犬養隼人」シリーズ4。
医者が来て父に注射をした。間もなく父は死んだ。少年...
「往診に来た医者が父を殺した!」
少年の訴えが事の始まりだった。単なる少年の思い込みだと考えていた犬養は、そこに恐るべき事実が隠されているのを知ることになる・・・。
「刑事犬養隼人」シリーズ4。
医者が来て父に注射をした。間もなく父は死んだ。少年は、父が医者に殺されたと訴える。そこには、思いがけない問題が隠されていた・・・。
「安楽死」の問題を真っ向から取り上げた作品。助かる見込みのない病人。そして、それを支える家族。精神的にも経済的にも、しだいに追い詰められていく。苦しむ病人のため、疲弊している家族のため、安楽死は許されるべきなのか?生きる権利があるように、人には死ぬ権利もあるのか?
読んでいて、本当に難しい問題だと思った。「違法」という言葉では簡単に片付けられない事情がそこにはある。
犯人の意外性、ラストの犬養の行動など、面白く興味深く読んだ。とても考えさせられる内容の作品だった。
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中山 七里
2019-10-01T21:06:00+09:00
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野の春(宮本輝)
昭和42年。松坂熊吾の息子・伸仁は20歳になった。50歳で息子を授かった熊吾の願いは、「息子が20歳になるまでは絶対に死なん」ということだった。その願いは叶い、家族三人で祝うことになったが・・・。
流転の海第9部。完結編。
幼くひ弱だった伸仁は、...
昭和42年。松坂熊吾の息子・伸仁は20歳になった。50歳で息子を授かった熊吾の願いは、「息子が20歳になるまでは絶対に死なん」ということだった。その願いは叶い、家族三人で祝うことになったが・・・。
流転の海第9部。完結編。
幼くひ弱だった伸仁は、成長するにつれたくましくなっていく。一方、熊吾は老いが目立つようになった。それでも彼は立ち止るどころか、さらに時代の中を駆け抜けて行こうとする。最後の最後まで、生きることに手を抜かない信念の人だったと思う。戦中戦後の激動の時代の中、何事にも動じることなく常に前向きに生きてきた。その熊吾の人生を振りかえると、感慨深いものがある。
長い年月、本当に長い長い年月、このシリーズを読んできた。全て読むことができて、ほっとしている。生きるということは、楽しくもあり、悲しくもあり、そして苦しくもあり・・・。でも人は生きる。生き続けようとする。何かのために、誰かのために。
生きることの意味、そして人間とは何かを、深く考えさせられた。読みごたえのある本当に面白いシリーズだった。
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宮本 輝
2019-09-29T19:37:00+09:00
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かわたれどき(畠中恵)
「かわたれどき」とは、朝まずめ(夜明けから日の出までの前後1時間程度の時間帯を表す)の闇と明るさの間で、何もかもが、はっきりとは形を取らない刻限のことだ。その時刻に、大水に流され木にしがみついたまま取り残されたお雪が見たものは果たして何だったのか?そ...
「かわたれどき」とは、朝まずめ(夜明けから日の出までの前後1時間程度の時間帯を表す)の闇と明るさの間で、何もかもが、はっきりとは形を取らない刻限のことだ。その時刻に、大水に流され木にしがみついたまま取り残されたお雪が見たものは果たして何だったのか?そして、お雪の身に起こったできごととは?
表題作を含む6編を収録。「まんまこと」シリーズ7。
同じ町名主の八木家の当主で麻之助の友人でもある清十郎が父親になった。一方では、麻之助の亡き妻お寿ずの縁者であるおこ乃の縁談がまとまった。麻之助をめぐる環境も、少しずつ変化している。そして、麻之助自身も・・・。
今回も盛りだくさんの内容だ。麻之助の縁談話、持ち込まれた絵の謎、やっと探し当てた生き別れの息子は本当にわが子なのか?江戸に広がる怪しい噂、娘4人が持ち込んだやっかいな話、かわたれどきにお雪が見たものは?などなど。
平凡でおだやかな幸せを願う人たちがいる。だが、そのささやかな願いさえかなえられない人もいる。何気ない日常の中にも、悲しみは潜んでいる。麻之助にも新たな幸せが早く来ますようにと、願わずにはいられない。
切ない中にも、人情が感じられる作品だった。
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畠中 恵
2019-08-31T22:31:00+09:00
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ファーストラヴ(島本理生)
女子大生・聖山環菜が父親を刺殺した!?環菜の事件を題材にしたノンフィクションを執筆するよう依頼された臨床心理士の真壁由紀は、環菜と面会しいろいろ話を聞く。そこで見えてきたものは・・・。
「自分の父親を刺殺」という事件を起こした環菜。環菜が逮捕され...
女子大生・聖山環菜が父親を刺殺した!?環菜の事件を題材にしたノンフィクションを執筆するよう依頼された臨床心理士の真壁由紀は、環菜と面会しいろいろ話を聞く。そこで見えてきたものは・・・。
「自分の父親を刺殺」という事件を起こした環菜。環菜が逮捕されたときに言った台詞が、世間をにぎわせていた。いったい彼女はなぜそんなことを言ったのか?環菜との面会の中で、彼女の心の中にあるものを探り出そうとする由紀。そして、しだいに見えてきた彼女の抱える闇の正体・・・。
環菜の置かれていた状況が異常であることは明白だ。環菜の父も母も、そこまで環菜が傷つくとは想像できなかったのか?子供を守れるのは親しかいない。その親を頼れないと知ったときの環菜の心情は、察して余りある。環菜の心はいつも血を流していたと思う。もう限界だったのだと思う。
これからの環菜の人生がどうなるのか、想像がつかない。けれど、少しでも幸せを感じるものであってほしいと願わずにはいられない。
環菜のことは切なかったが、由紀や由紀の夫・我聞、そして我聞の弟・迦葉にまつわる話には、心温まるものを感じた。
傷ついた者にそっと寄り添うような作品だった。読後感もよかった。
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島本 理生
2019-07-30T10:44:00+09:00
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キング誕生(石田衣良)
戦国状態だった池袋がひとつにまとまり安藤崇がキングになるまでには、さまざまなできごとがあった・・・。タカシとマコトの高校時代を描いた、池袋ウエストゲートパーク青春篇。
タカシとマコトの高校時代のできごと、タカシのたったひとりの兄・タケルを襲った悲...
戦国状態だった池袋がひとつにまとまり安藤崇がキングになるまでには、さまざまなできごとがあった・・・。タカシとマコトの高校時代を描いた、池袋ウエストゲートパーク青春篇。
タカシとマコトの高校時代のできごと、タカシのたったひとりの兄・タケルを襲った悲劇などが描かれている。なぜタカシがキングになったのかが分かる作品だ。
ただ、他の方も書評で書かれているように、時代背景に疑問を感じる。後から過去の話を作ると、どうしても矛盾が生じる。それがとても気になった。内容も取ってつけたようなストーリー展開で現実味に乏しく、共感を持って読むことができなかった。
厳しい言い方をすれば、この本は別に無くてもよかったと思う。シリーズの中でなぜタカシがキングになったのかが少しずつ分っていくだけで充分だという気がする。期待していたほどの面白さではなく、残念だった。
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石田 衣良
2019-06-23T21:45:00+09:00
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本と鍵の季節(米澤穂信)
高校2年生の堀川と松倉は、図書委員。利用者がほとんど来ない放課後の図書室で、図書の仕事をこなしていた。そこに、すでに図書委員を引退した先輩の浦上麻里がやってきた。亡くなった彼女の祖父の金庫を開けるための番号を調べてほしいという依頼だったのだが・・・。...
高校2年生の堀川と松倉は、図書委員。利用者がほとんど来ない放課後の図書室で、図書の仕事をこなしていた。そこに、すでに図書委員を引退した先輩の浦上麻里がやってきた。亡くなった彼女の祖父の金庫を開けるための番号を調べてほしいという依頼だったのだが・・・。「913」を含む6編を収録。
「913」は、単純に金庫を開けるための番号を謎解きのように当てる話かと思ったが、そうではなかった。金庫の持ち主である祖父とその親族の関わり方が意外だった。
「ロックオンロッカー」では、堀川の行きつけの美容室で起こったできごとが描かれている。美容師の言動の中に伏線があり、真相が分かったときには「なるほど!」と感心した。
1年生の男子生徒の兄の無実を証明する「金曜日に彼は何をしたか」、自殺した生徒が最後に読んでいた本を探る「ない本」も、巧妙なストーリーで謎解きを楽しむことができた。
だが、一番強烈に印象に残ったのは、「昔話を聞かせておくれよ」と「友よ知るなかれ」だった。松倉の高校生らしからぬ言動の原因が垣間見えた気がした。だが、真相を知ることが本当によかったのか・・・?読んでいて複雑な思いだった。「友よ知るなかれ」のその後も気になる。
謎が解けても後味の悪さが残る話が多かったが、面白く読みごたえがあった。
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米澤 穂信
2019-03-24T23:22:00+09:00
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七つの試練(石田衣良)
SNSで出された課題をクリアして「いいね」をもらう。課題は七つ。だが、七番目の課題は命をかける課題だった!「デスゲーム”七つの試練”の管理人は誰だ?」タカシとマコトの追跡が始まった・・・。
表題作を含む4編を収録。IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シ...
SNSで出された課題をクリアして「いいね」をもらう。課題は七つ。だが、七番目の課題は命をかける課題だった!「デスゲーム”七つの試練”の管理人は誰だ?」タカシとマコトの追跡が始まった・・・。
表題作を含む4編を収録。IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズ14。
「いいね」をもらうためには自分の命をかけるのか?やさしい課題からしだいに困難な課題に。参加する若者は、まるで暗示をかけられたみたいに課題をクリアすることにのめり込む。ゲームの管理人は、ゲームの参加者がどうなろうと・・・死のうが生きようが、いっこうにかまわない。マコトとタカシは、そんな管理人をあぶり出そうとある計画を立てた。はたしてそれはうまくいくのか?タイムリミットが迫る中での攻防は読みごたえがあった。
他の、スキャンダルのために全てを失おうとしている若手俳優(なんと!タカシの友人!)の話「」泥だらけの星」、出会いカフェを舞台にしたあるトラブルの話「鏡のむこうのストラングラー」、マコトの中学時代の同級生が住むマンションの怪音の正体を暴く「幽霊ペントハウス」の3編も、まあまあ面白かった。
マンネリ化という声もあるが、私個人としてはこのシリーズが続くことを願っている。次回作も期待したい。
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石田 衣良
2019-03-23T22:30:00+09:00
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裏切りのホワイトカード(石田衣良)
渡された白いカードでコンビニのATMを操作する。たったそれだけで、報酬は10万円!だが、うまい話には裏があった。Gボーイズや池袋の治安を守るため、タカシとマコトは奔走する。表題作を含む4編を収録。
IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズ13。
...
渡された白いカードでコンビニのATMを操作する。たったそれだけで、報酬は10万円!だが、うまい話には裏があった。Gボーイズや池袋の治安を守るため、タカシとマコトは奔走する。表題作を含む4編を収録。
IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズ13。
表題作のほかに、継父に虐待されている少年を実の父親やマコトたちが助けようとする「滝野川炎上ドライバー」、悪い男に違法薬物を飲まされている母を救おうとする娘とそれに手を貸すマコトたちを描いた「上池袋ドラッグマザー」、普通の人には見えないものが見える霊感の強い少女が巻き込まれたトラブルを描いた「東池袋スピリチュアル」が収められている。
世の中、人の弱みにつけ込んだり、弱い者を攻撃したりする人間は大勢いる。、だましたりだまされたり。裏切ったり裏切られたり。そんなことも珍しくはない。タカシもマコトも、困っている人間や不幸な人間には迷わず手を差し伸べる。どんなことをしても、トラブルを解決しようとする。その解決方法は、読んでいて爽快だ。時代は移り変わり、タカシやマコトも年齢を重ねていく。だが、状況が変わっても、これからもこのシリーズを読んでいきたいと思っている。
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石田 衣良
2019-03-22T21:14:00+09:00
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守教(帚木蓬生)
厳しい日々の暮らし。百姓たちは、心のよりどころを求めキリシタンになった。だが、戦国時代には布教に熱心だった権力者たちも、時代が移り変わるにつれしだいに考えを変えていく。そしてついに、禁教令が!史実をもとにした、命を賭けてキリスト教を信じ続けた人々...
厳しい日々の暮らし。百姓たちは、心のよりどころを求めキリシタンになった。だが、戦国時代には布教に熱心だった権力者たちも、時代が移り変わるにつれしだいに考えを変えていく。そしてついに、禁教令が!史実をもとにした、命を賭けてキリスト教を信じ続けた人々の記録。
戦国時代に伝来したキリスト教は、またたく間に日本に広まっていく。その教えに共感したのは一般民衆だけではない。時の権力者も大勢いた。
「自分たちの存在を認めてくれる教え。」
それは、九州にある村々の人たちにも生きる力を与えた。日々の暮らしの生きがいとなった。だが、時代は変わり、キリスト教徒に対する厳しい弾圧が始まった。棄教を迫る激しい拷問。転ぶ者、殉教する者・・・。人々の間に動揺が走る。けれど、彼らは信仰心を捨てなかった。ひそかに信仰は守られた。禁教令が出されてから開国まで、それは延々と続ていった。
「自分たちの信念を貫きとおす!どんな迫害にも負けない!」
信仰とはこれほど人に勇気と力を与えるものなのか!読んでいて胸が熱くなる。
重みのある話で感動的な場面もあったが、淡々と述べられる状況説明のような描写も多くて、とても読みづらかった。面白いという話ではないけれど、こういう歴史があったのだということを、多くの人に知ってもらいたいと思う。
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帚木 蓬生
2019-03-21T22:23:00+09:00
ゆこりん
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最後の晩ごはん 小説家と冷やし中華(椹野道流)
深夜に営業する定食屋「ばんめし屋」。常連客の小説家・淡海五朗には、誰にも言えない心の傷があった。そのために冷やし中華は決して食べなかったのだが・・・。最後の晩ごはんシリーズ2。4編を収録。
ねつ造スキャンダルがもとで芸能界から姿を消した海里だが、...
深夜に営業する定食屋「ばんめし屋」。常連客の小説家・淡海五朗には、誰にも言えない心の傷があった。そのために冷やし中華は決して食べなかったのだが・・・。最後の晩ごはんシリーズ2。4編を収録。
ねつ造スキャンダルがもとで芸能界から姿を消した海里だが、しだいに「ばんめし屋」の暮らしに慣れてくる。料理も積極的に覚えようと努力している。そんな海里だが、かつての後輩が訪ねてきたり、芸能記者に居場所を知られ押しかけられたりと、心穏やかではない。「まだ役者に未練がある。けれど、それはかなわない。」心の葛藤が痛々しくもある。
一方、冷やし中華断ちしている常連客の小説家・淡海には、とりついている幽霊が・・・。海里は、どうしていつも幽霊が淡海と一緒なのか、その理由を突き止めようとする・・・。
人が心の中に抱えているさまざまな悲しみや苦悩。今回も、作者はそれをていねいに描いている。登場人物の心理描写が細やかだ。なので、読んでいて感情移入してしまう。つらくても、苦しくても、悲しくても、人は前を向いて生きなければならないのだ。
今回も面白かった。心の中にほのぼのとしたものが残った。
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”ふ” その他
2019-03-19T19:24:00+09:00
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最後の晩ごはん ふるさととだし巻き卵(椹野道流)
イケメン俳優として順調に歩んでいたはずの海里だったが、あるねつ造スキャンダルがもとで活動を休止せざるを得なくなった。だが、ふるさとに戻っても彼の居場所はなく・・・。絶望する彼を救ったのは、定食屋を営む留二だった。最後の晩ごはんシリーズ1。
行くあ...
イケメン俳優として順調に歩んでいたはずの海里だったが、あるねつ造スキャンダルがもとで活動を休止せざるを得なくなった。だが、ふるさとに戻っても彼の居場所はなく・・・。絶望する彼を救ったのは、定食屋を営む留二だった。最後の晩ごはんシリーズ1。
行くあてのない海里を救った留二。彼の営む定食屋は、夜に開店し、始発が走る頃に閉店する。何だか、ちょっと不思議な定食屋だ。だが、不思議なのはそれだけではなかった。お客は普通の人間だけではない。時には幽霊も!海里には霊感のようなものがあった。幽霊が見えるのだ。なぜ幽霊は定食屋に現れるのか?留二や海里の温かな心が、幽霊になった者たちが抱える切ない思いに寄り添う。そして、そこで出されるおいしい料理が、彼らの心を癒していく。
読んでいると心がほのぼのとしてくる。海里の今後も気になるし、留二という人間も気になる。そして、眼鏡の付喪神ロイドのことも。シリーズで10巻あるが(2019.3.18現在)、これから少しずつ読み進めようと思っている。
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”ふ” その他
2019-03-18T23:55:00+09:00
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クール・キャンデー(若竹七海)
渚の兄・良輔の妻が、ストーカーを苦にして自殺を図った。一命は取りとめたと思った矢先、容態が急変して亡くなってしまう。時を同じくして、ストーカーだった男も謎の死を遂げる。警察は、ストーカーだった男を殺したのは良輔ではないかと疑い始めたのだが・・・。
...
渚の兄・良輔の妻が、ストーカーを苦にして自殺を図った。一命は取りとめたと思った矢先、容態が急変して亡くなってしまう。時を同じくして、ストーカーだった男も謎の死を遂げる。警察は、ストーカーだった男を殺したのは良輔ではないかと疑い始めたのだが・・・。
兄・良輔の無実を晴らすべく、渚は行動を開始する。ストーカーだった男を殺したのはいったい誰なのか?徐々に明らかになる真実には、「そういうことだったのか!」と驚かされた。けれど、本当の驚きは、最後の最後に用意されていた。ラスト1行は、全く予想外だった。
軽いタッチで書かれていてさらさら読めるミステリー作品だと思っていたが、実は、巧みなストーリー展開で伏線もあり、実に濃厚な作品だった。
それにしても・・・。人は、心の中で何を考えているのか分からない怖い生き物なのだと、あらためて感じた。決して、見かけだけで判断してはいけないのだ。
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”わ”
2019-03-17T22:48:00+09:00
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西一番街ブラックバイト(石田衣良)
池袋の雑居ビル。その最上階の8階から屋上に通じる外階段から、若い男が飛び降り自殺を図った。彼は、急成長しているOKカレーという飲食チェーン店の従業員だった。無能呼ばわりされ、退職を強要されていた。だが、この企業は、サービス残業、賃金未払い、長時間労働...
池袋の雑居ビル。その最上階の8階から屋上に通じる外階段から、若い男が飛び降り自殺を図った。彼は、急成長しているOKカレーという飲食チェーン店の従業員だった。無能呼ばわりされ、退職を強要されていた。だが、この企業は、サービス残業、賃金未払い、長時間労働などが問題になっているブラック企業だった・・・。表題作「西一番街ブラックバイト」を含む4編を収録。IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズ12。
ブラック企業問題は、現実にも同じようなことがあったので読んでいて胸が痛かった。残念だが、この問題は完全には無くならないと思う。でも、いつかは無くなってほしいと切に願う。
「ユーチューバー@芸術劇場」は、時代の世相を色濃く反映している。再生回数を増やすためにはなんでもやる・・・にはならない。物事には限度というものがある。限度を超えたときに自分の身に降りかかる災難にどう対処すべきか、そのことも充分に考えて行動したほうがよさそうだ。
どの話も興味深く読んだ。時代の流れの中、タカシとマコトはこれからどう生きていくのか?どこへ行こうとしているのか?このシリーズから目が離せない。
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石田 衣良
2019-03-10T21:23:00+09:00
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憎悪のパレード(石田衣良)
メガホンからの叫び声。「中国人は池袋から出ていけ!」
今回のマコトの仕事は、どういうわけかそんなヘイトスピーチを行うデモの護衛だった。だが、そのヘイトスピーチの裏には、ある恐るべき企みが潜んでいた・・・。IWGPシリーズ11。
果物屋であり、ライ...
メガホンからの叫び声。「中国人は池袋から出ていけ!」
今回のマコトの仕事は、どういうわけかそんなヘイトスピーチを行うデモの護衛だった。だが、そのヘイトスピーチの裏には、ある恐るべき企みが潜んでいた・・・。IWGPシリーズ11。
果物屋であり、ライターであり、トラブルシューターであるマコトは、Gボーイズのキング・タカシとともに、池袋の街のトラブルを解決していく。今回も、さまざまなトラブルがマコトに持ち込まれる。ヘイトスピーチ、脱法ドラッグ、パチンコ屋のゴト師問題、ノマドワーカーの災難・・・。今の世相を色濃く反映している話もある。これらさまざまなトラブルをマコトたちはどう解決していくのか?いつもながら、その解決方法は読んでいて楽しいし、ワクワクしてくる。中には、「そこまでやるか!」と思うようなものもあるが。
久しぶりにこのシリーズを読むことができてよかった。これからのGボーイズの活躍にも期待したい。
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石田 衣良
2019-03-09T21:45:00+09:00
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昨日がなければ明日もない(宮部みゆき)
杉村三郎が間借りしている竹中家は三世代同居の家だ。その竹中家の一員の中学生の有紗から、杉村は相談を受ける。小学生の時に同じクラスだった問題児・朽田漣の母・美姫が、探偵である杉村を紹介してくれと言っているのだ。杉村は美姫に会うことにした。だが、美姫はと...
杉村三郎が間借りしている竹中家は三世代同居の家だ。その竹中家の一員の中学生の有紗から、杉村は相談を受ける。小学生の時に同じクラスだった問題児・朽田漣の母・美姫が、探偵である杉村を紹介してくれと言っているのだ。杉村は美姫に会うことにした。だが、美姫はとんでもない女性だった・・・。表題作「昨日がなければ明日もない」を含む3編を収録。杉村三郎シリーズ5。
「昨日がなければ明日もない」に登場する美姫は、身勝手な人間だった。どうしようもないくらい。身内でさえ手を焼いていた。周りの人間をどんどん不幸にしていく。そんな人間だ。いったいどうなっていくのかと思ったが、ラストは後味が悪かった。
だが、これ以上に後味が悪かったのが「絶対零度」だ。悪意のある人間は、人の尊厳さえも平気で踏みにじる。あまりの無謀さに、読んでいて言葉もない。暗すぎる、救いがない、後味が悪い・・・。どんな言葉を並べても、この話のひどさは語れない。作者はどうしてここまでひどい話を読ませようとするのか。気分が悪くなり、トラウマにさえなりかねない。読むのを途中でやめようと思ったほどだ。
杉村三郎シリーズは、平均して暗い話が多い。だが、今回の話は個人的に受け入れられない。このシリーズはこれからも続くと思うが、こういう内容の話が多いのなら読み続けようとは思わない。
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宮部 みゆき
2019-03-05T22:10:00+09:00
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悪徳の輪舞曲(ロンド)(中山七里)
母・郁美が再婚した夫を自殺と見せかけて殺した?母の弁護を依頼するために、妹・梓が30年ぶりに御子柴礼司に会いに来た・・・。容疑を否認する郁美。御子柴は彼女をどう弁護するつもりなのか?真実の行方は?御子柴シリーズ4。
過去に御子柴が起こした事件が、...
母・郁美が再婚した夫を自殺と見せかけて殺した?母の弁護を依頼するために、妹・梓が30年ぶりに御子柴礼司に会いに来た・・・。容疑を否認する郁美。御子柴は彼女をどう弁護するつもりなのか?真実の行方は?御子柴シリーズ4。
過去に御子柴が起こした事件が、何十年たっても家族に暗い影を落としている。御子柴のせいで人生が変わってしまった家族。特に梓は、自分の人生をめちゃめちゃにした兄・御子柴をかなり恨んでいた。御子柴が事件を起こす前、いったい御子柴の家族関係はどんなふうだったのだろう?御子柴に対する父や母の愛情が欠けていたとは、どうしても思えないのだが・・・。
兄を恨んでいた梓だが、それでも母を救うために御子柴のもとを訪れる。容疑を否認する母・郁美・・・。御子柴は、郁美を弁護することを決意し、郁美に関する様々な事実を積み上げていく。そこから見え始めた真実。だが、真実の裏にはさらなる残酷な真実が隠されていた!
今回も、ラストで作者に驚かされた。そんな真実が隠されていたとは!このことが、これからの御子柴の人生にどんな影響を与えるのだろう。今後の展開がとても楽しみだ。
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中山 七里
2019-03-02T21:41:00+09:00
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沈黙のパレード(東野圭吾)
突然行方不明になった女性が、数年後に遺体となって意外な場所で発見された。容疑者は、かつて少女殺害事件で無罪となった男だった。だが、今回もその男は証拠不十分で釈放された。失意の遺族の前に堂々と現れた容疑者だった男に、街中の者が憎悪の目を向けた。そして・...
突然行方不明になった女性が、数年後に遺体となって意外な場所で発見された。容疑者は、かつて少女殺害事件で無罪となった男だった。だが、今回もその男は証拠不十分で釈放された。失意の遺族の前に堂々と現れた容疑者だった男に、街中の者が憎悪の目を向けた。そして・・・。
「探偵ガリレオ」シリーズ9。
秋祭りの当日、容疑者だった男が死んだ。死因は、事故?他殺?殺されたとしたら、いったい誰がどんな方法で?湯川、草薙、内海は、事件の真相を追い求める・・・。
秋祭り当日はたくさんの人でにぎわっていた。その人たちが男の死とどういうふうに関わっていたのかが次第に明らかになる。彼らの何げない行動のひとつひとつがつながると、思いもよらない結果が!それは、求めていた真実なのか?そう思った瞬間に、事態は思わぬ方向へ・・・。
巧みなストーリー展開だと思う。読み手を引きつける力がある。映像化すると面白いと思う。いや、作者は最初から映像化を意識してこの作品を書いたのかもしれない。きっとそうだ。
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東野 圭吾
2019-02-19T22:23:00+09:00
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スイート・ホーム(原田マハ)
「大阪・梅田から山手を走る電車に乗り、駅前のバス乗り場からバスに乗ってください。ふたつめのバス停で降りた先にお店はあります。」
「スイート・ホーム」という名の小さな小さな洋菓子店を舞台に繰り広げられる心温まる物語。
地元で愛される小さな洋菓子店「...
「大阪・梅田から山手を走る電車に乗り、駅前のバス乗り場からバスに乗ってください。ふたつめのバス停で降りた先にお店はあります。」
「スイート・ホーム」という名の小さな小さな洋菓子店を舞台に繰り広げられる心温まる物語。
地元で愛される小さな洋菓子店「スイート・ホーム」。家族で営むその店にはいろいろな客が訪れる。みなそれぞれにさまざまな思いを胸に抱えている。でも、美味しい物は人を幸せにする力がある。それが、心をこめたものであればあるほど・・・。近所にこんな素敵なお店があったらいいのにと思う。
大きな問題はない。大きな事件も起こらない。そして、この小説に登場するのは、困っている人をそっと包み込む優しさを持った善人ばかりだ。非現実的だと言う人もいるが、私はそれはそれでいいのではないかと思う。読んでいると気持ちが穏やかになる。ほのぼのとしてくる。そして、読後感も悪くない。心が癒されるあたたかな作品だと思う。
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原田 マハ
2018-12-28T22:35:00+09:00
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花だより(高田郁)
数々の困難を乗り越え、幸せをつかみ大阪に戻った澪。澪のほかに、あさひ大夫、つる屋の店主・種市、御膳奉行・小野寺数馬など、澪に関わる人たちのその後を興味深く描いた作品。みをつくし料理帖シリーズの特別巻。
みをつくし料理帖シリーズは本当に面白かった。...
数々の困難を乗り越え、幸せをつかみ大阪に戻った澪。澪のほかに、あさひ大夫、つる屋の店主・種市、御膳奉行・小野寺数馬など、澪に関わる人たちのその後を興味深く描いた作品。みをつくし料理帖シリーズの特別巻。
みをつくし料理帖シリーズは本当に面白かった。夢中になって読んだ。文庫本で10巻あったが、あっという間に読んでしまった。この作品は、そのシリーズの特別版だ。この本が出たと知ったときは、とてもうれしかった。みをつくし料理帖シリーズに登場する人たちのその後を知ることができるからだ。
源斉と澪の結婚生活、生家の再建を果たしたあさひ大夫こと野江のその後、澪と結ばれることのなかった御膳奉行・小野寺数馬と妻・乙緒の日常、つる屋の店主・種市のこと・・・。知りたかったことばかりだ!
住んでいるところが離れていても、置かれている立場が違っていても、人と人との絆は決して切れることはない。そのことが分かってホッとした。
心がほのぼのとしてくる作品だった。できるなら、また、彼らのその後を読んでみたいと思う。
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高田 郁
2018-12-01T21:02:39+09:00
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下町ロケット ヤタガラス(池井戸潤)
ギアゴーストの危機を救い順調に関係が築けると思っていた佃だが、社長の伊丹は佃製作所を裏切りダイダロストとの提携に踏み切る。伊丹とダイダロスの社長・重田との因縁とは?また、伊丹と決別した島津は?一方、帝国重工の財前が立ち上げた新たなプロジェクトにも、暗...
ギアゴーストの危機を救い順調に関係が築けると思っていた佃だが、社長の伊丹は佃製作所を裏切りダイダロストとの提携に踏み切る。伊丹とダイダロスの社長・重田との因縁とは?また、伊丹と決別した島津は?一方、帝国重工の財前が立ち上げた新たなプロジェクトにも、暗雲が立ち込める。佃航平は、さまざまな難問に立ち向かうことになるのだが・・・。下町ロケットシリーズ4。
日本の農業問題に取り組もうとする財前。そんな財前とともに、新たな分野に乗り出そうとする佃。だが、事は思う通りには進まない。立ちはだかる数々の難問。そして、”敵”とも思える人物の存在。それぞれの思惑が絡み合い、激突する。はたして解決策はあるのか?ページをめくる手が止まらなかった。
佃製作所の問題、財前や帝国重工の社長・藤間の問題、そして家業を継ぐために佃製作所を去った殿村の問題・・・。作者は巧みにそれらをまとめあげ、解決に導いていく。お見事!
企業は利益を追求しなければならない。だが、それだけではダメだ。人の役に立つものを作る。人が喜ぶものを作る。その心を忘れないでほしいと思う。
読後は爽快感が残る。とにかく面白い作品だった。
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池井戸 潤
2018-11-13T21:40:00+09:00
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むすびつき(畠中恵)
「実は一人、生まれ変わる前の若だんなかもって、思える人がいたんです。」
その人は、鈴彦姫の鈴が納められている五坂神社の元神主・星ノ倉宮司だという。鈴彦姫のこの発言に、長崎屋の若だんな・一太郎は興味を示した。そして、星ノ倉宮司について調べることにしたの...
「実は一人、生まれ変わる前の若だんなかもって、思える人がいたんです。」
その人は、鈴彦姫の鈴が納められている五坂神社の元神主・星ノ倉宮司だという。鈴彦姫のこの発言に、長崎屋の若だんな・一太郎は興味を示した。そして、星ノ倉宮司について調べることにしたのだが・・・。表題作「むすびつき」を含む5編を収録。しゃばけシリーズ17。
妖は何百年も生きる。だが、人の寿命は妖から比べるとはるかに短い。一太郎と妖たちにも、いつかは悲しい別れが訪れる。一太郎が生まれ変わることを、妖たちは望むだろう。けれど、望み通りになる可能性は低い。人がまた人として生まれ変わるとは限らない。いつどこでどんなかたちで生まれ変わるのか、それは誰にも分からない。なので、生まれ変わったとしても、自分にとって大切な人とは再会できないかもしれないのだ。だからこそ、生きている今この時を大切にしなければならない。
今回の作品では「生と死」や「輪廻転生」が描かれていて、テーマとしては重かった。だが、安定した面白さがある。一太郎と妖の関係は今後どうなるのだろう?このシリーズから目が離せない。
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畠中 恵
2018-11-09T22:06:00+09:00
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下町ロケット ゴースト(池井戸潤)
帝国重工の業績悪化により、ロケットエンジン用バルブシステムの将来が危ぶまれる事態になった。佃製作所が次にチャレンジしたのが、トランスミッションのバルブシステムの開発だった。その過程で、佃はギアゴーストというトランスミッションメーカーの存在を知る。だが...
帝国重工の業績悪化により、ロケットエンジン用バルブシステムの将来が危ぶまれる事態になった。佃製作所が次にチャレンジしたのが、トランスミッションのバルブシステムの開発だった。その過程で、佃はギアゴーストというトランスミッションメーカーの存在を知る。だが、順調にいくかに見えたバルブシステムの開発に思わぬ難問が立ちはだかった・・・。下町ロケットシリーズ3。
帝国重工の業績悪化に伴い、社長の藤間や財前の置かれている状況も悪くなっていく。ロケット開発にも暗雲が立ち込める。佃製作所が生き残りをかけて開発に挑んだトランスミッションのバルブシステムだが、それも順調にはいかなかった・・・。そして、ギアゴーストに突きつけられたのは、特許侵害の賠償問題・・・。次から次へと難問がふりかかる。
だがこの作品は、佃製作所より、ギアゴーストについての話という色合いが濃い。ラストも中途半端だ。要するにこの作品は、次の作品「下町ロケット ヤタガラス」への布石になっているのだ。さまざまな難問は次の「ヤタガラス」で解決される。「ゴースト」は前編、「ヤタガラス」は後編、そういうふうになっている。
けれど、なんだかんだ言ってもこの作品は面白い。とても楽しめる作品だと思う。
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池井戸 潤
2018-11-01T22:24:00+09:00
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http://nohohon2.yukorin.info/?eid=1577
PK(伊坂幸太郎)
2002年ワールドカップ予選での日本対イラク戦。FWの小津が、PKを決める。「小津がPKをいれると、みんな勇気が湧く」という言葉に励まされ、脅しに負けることなく。そして、小説家も圧力に屈することなく自分の小説を世に出そうとする。また、政治家も、自分の...
2002年ワールドカップ予選での日本対イラク戦。FWの小津が、PKを決める。「小津がPKをいれると、みんな勇気が湧く」という言葉に励まされ、脅しに負けることなく。そして、小説家も圧力に屈することなく自分の小説を世に出そうとする。また、政治家も、自分の信念を曲げずに行動しようと決心した。「PK」を含む3編を収録。
「PK」に登場する小津、小説家、政治家。この3人、一件関わりがないように見えるのだが、実は微妙につながっている。つながりは人だけではない。この作品に収められている3つの話、「PK」「超人」「密使」も微妙なつながりを見せる。しかも、時間を超越している!小さな決断、大きな決断、小さな勇気、大きな勇気・・・。それらが絡み合い、日常のできごとに奇跡を起こす。何が世の中の流れを変えるのか?何が人の運命を変えるのか?それは誰にも分からない。だが、伊坂は喜怒哀楽を絶妙に配合し、それを客観的に描くことにより、人の運命の不思議さを鮮やかに見せてくれた。
伊坂ワールドを楽しめる作品だと思う。読後感も悪くなかった。
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伊坂 幸太郎
2018-10-21T19:43:00+09:00
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http://nohohon2.yukorin.info/?eid=1576
検察側の罪人(雫井脩介)
蒲田の老夫婦殺害事件の容疑者として浮かんだのは、すでに時効になってしまった事件の重要参考人の男だった・・・。
その男、松倉の名前を見た最上検事は、今回の事件の犯人として松倉を追い詰めていく。だが、最上の強引なやり方は、最上を慕う若手検事・沖野に...
蒲田の老夫婦殺害事件の容疑者として浮かんだのは、すでに時効になってしまった事件の重要参考人の男だった・・・。
その男、松倉の名前を見た最上検事は、今回の事件の犯人として松倉を追い詰めていく。だが、最上の強引なやり方は、最上を慕う若手検事・沖野に疑念を抱かせることになるのだが・・・。
「時効という壁に阻まれ、女子中学生殺人事件の犯人だと分かった松倉を裁くことができない!」
最上の歯車は、そこから狂い始める。最上は、松倉をある事件の犯人に仕立て上げようとする。そして、罪を償わせようとする。そのためには手段を選ばない。最上を慕う沖野も、しだいに最上に疑惑の目を向けるようになる。これは正義か?それとも私怨か?暴走する最上を誰も止められない。
読みごたえはあるが、最上が自分を犠牲にしてまで松倉を追い詰めようとする動機が弱いと思う。最上と殺された女子中学生の間には、それほど強いきずながあったとは思えない。松倉を犯人に仕立て上げる方法にも疑問が残る。そんな方法で、松倉が犯人だとみんな思うだろうか?設定に無理があるような気がする。
テーマはよかったが、どこか物足りない感じがする作品だった。読後も、もやもやしたものが残った。
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雫井 脩介
2018-10-07T20:17:00+09:00
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http://nohohon2.yukorin.info/?eid=1575
キラキラ共和国(小川糸)
ツバキ文具店は、今日も様々な人が訪れにぎやかだ。相変わらずいろいろな依頼が舞い込んでくる。店を切り盛りする鳩子自身にも人生の転機があった・・・。「ツバキ文具店」シリーズ2。
この作品では、鳩子は結婚している。ミツローさんとその娘のQPちゃんが家族...
ツバキ文具店は、今日も様々な人が訪れにぎやかだ。相変わらずいろいろな依頼が舞い込んでくる。店を切り盛りする鳩子自身にも人生の転機があった・・・。「ツバキ文具店」シリーズ2。
この作品では、鳩子は結婚している。ミツローさんとその娘のQPちゃんが家族となる。深い深い愛情で結ばれた3人の姿は、心をほのぼのと温めてくれる。
そんな鳩子のもとへ、相変わらず代書の依頼は舞い込んでくる。亡き夫からの詫び状がほしい、あこがれの文豪から便りがほしい、愛する者へ自分の素直な気持ちを伝えたい・・・。どれも、切なさの中に静かな感動がある。こんな文具店が実際にあったなら、何度も何度も足を運ぶのに・・・。
日常生活の中にこそ、大切なものがある。幸せがある。この本は、あらためてそのことを感じさせてくれる。日々の暮らしを大切にしなくては! 読んでいると心が穏やかになる、味わいのある作品だった。
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”お” その他
2018-08-23T19:55:00+09:00
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http://nohohon2.yukorin.info/?eid=1574
嘘(村山由佳)
中学生の仲良し四人組、秀俊、美月、亮介、陽菜乃。だが、ある事件がきっかけでその関係は一変する。
「このことだけは絶対に守り通さなければならない!」
誰にも言えない秘密を抱えながら、彼ら4人がたどる運命は・・・。
事件から20年近い歳月が流れ、秘...
中学生の仲良し四人組、秀俊、美月、亮介、陽菜乃。だが、ある事件がきっかけでその関係は一変する。
「このことだけは絶対に守り通さなければならない!」
誰にも言えない秘密を抱えながら、彼ら4人がたどる運命は・・・。
事件から20年近い歳月が流れ、秘密を抱えたままで彼ら4人はそれぞれの人生を歩んでいる。だが、過去の因縁からは逃れられない。彼らは別の形で再び過去の事件と向き合うことになる。
愛、憎悪、狂気、怒り、悲しみ・・・。さまざまな人間の感情が入り乱れる。そして、複雑に絡み合った人間関係に、秀俊、美月、亮介、陽菜乃は翻弄される。行きつく先はどこだ?彼らの未来に希望はあるのか?その展開からは目が離せない。
とてもインパクトの強い作品だ。だが、性描写や極端な暴力シーンは本当にこの作品に必要なのか、疑問が残る。意外性のある人間関係だが、人物描写では物足りない部分もあった。また、作者はこの作品で何を訴えたかったのか?それもあいまいだ。ラストも、あまり感動はなかった。
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村山 由佳
2018-08-22T22:09:00+09:00
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おもかげ(浅田次郎)
定年の日を迎えた竹脇正一は、送別会の帰りの地下鉄の中で突然倒れた。意識不明になり集中治療室で生死の境をさまよう日々が続く。だが、彼の体は全く動かないが、彼自身は目も見えるし耳も聞こえる。やがて彼は、体をベットの上に残したまま、さまざまな場所やさまざま...
定年の日を迎えた竹脇正一は、送別会の帰りの地下鉄の中で突然倒れた。意識不明になり集中治療室で生死の境をさまよう日々が続く。だが、彼の体は全く動かないが、彼自身は目も見えるし耳も聞こえる。やがて彼は、体をベットの上に残したまま、さまざまな場所やさまざまな年代へと飛び立った・・・。
意識不明の重体のはずなのに、竹脇正一はさまざまな場所でいろいろな人に出会う。時には、時間を超越することもある。就職したばかりの頃、大学生だった頃、子供の頃・・・。ほろ苦い思い出もよみがえる。そして、彼がいちばん知りたかった母や自分の出自のことを知る日が・・・。
後悔のない人生なんてない。だが、悔やんでも悔やんでも元には戻らない。やり直しはできないのだ。できるのは、その後悔を未来への糧とすることだ。だが、竹脇正一に未来はあるのか・・・?
読んでいてとても切なかった。「生きてほしい。」ただそれだけを願って読み進めた。ラストはホロリとした。感動的な話だったが、同じような描写が続きうんざりする部分があった。もう少しすっきりと分かりやすくまとめられていたらよかったと思う。
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浅田 次郎
2018-08-21T23:35:00+09:00
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紅のアンデッド(川瀬七緒)
古い家屋から、大量の血痕と3本の左手の小指が見つかった。その家に住んでいた遠山夫妻と客の者の指だと思われたが、死体は見つからなかった。法医昆虫学者の赤堀は、岩楯警部補とともに事件の謎に迫っていく・・・。法医昆虫学捜査官シリーズ6。
いつもなら、死...
古い家屋から、大量の血痕と3本の左手の小指が見つかった。その家に住んでいた遠山夫妻と客の者の指だと思われたが、死体は見つからなかった。法医昆虫学者の赤堀は、岩楯警部補とともに事件の謎に迫っていく・・・。法医昆虫学捜査官シリーズ6。
いつもなら、死体が発見されそこについているウジなどを手がかりに捜査を進めていくのだが、今回は死体なき殺人事件というちょっと変わったパターンだった。また、赤堀の置かれている立場も今までとは違う。科捜研を再編成した「捜査分析支援センター」というところに所属している。そのせいで、事件現場には入れないという制約がある。また、新たな人物が登場する。プロファイラーの広澤春美だ。最初はうまくかみ合っていないように見えた赤堀と広澤だが、しだいに名コンビぶりを発揮するようになる。
死体はどこにあるのか?犯人はどうやって死体を隠したのか?地道な捜査の中で、赤堀はある虫から手がかりを得る。そして、過去に似たような事件があったことを知る・・・。
過去の事件と現在の事件。このふたつは関連があるのか?ないのか?もしあるとしたら誰がどう関わっているのか?真実が知りたくてどんどん読み進めた。けれど、たどり着いた真実はちょっと期待外れ。都合のいいようにまとめられている印象だった。それでも、最後まで楽しく読むことはできた。
余談になるけれど、この本を読むとお菓子を食べられなくなりそう・・・(^^;
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川瀬 七緒
2018-08-20T21:52:00+09:00
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猫が見ていた(アンソロジー)
「マロンの話」(湊かなえ)、「エア・キャット」(有栖川有栖)、「泣く猫」(柚月裕子)、「『100万回生きたねこ』は絶望の書か」(北村薫)、「凶暴な気分」(井上荒野)、「黒い白猫」(東山彰良)、「三べんまわってニャンと鳴く」(加納朋子)。 猫にまつわる話7...
「マロンの話」(湊かなえ)、「エア・キャット」(有栖川有栖)、「泣く猫」(柚月裕子)、「『100万回生きたねこ』は絶望の書か」(北村薫)、「凶暴な気分」(井上荒野)、「黒い白猫」(東山彰良)、「三べんまわってニャンと鳴く」(加納朋子)。 猫にまつわる話7編を収録。
猫猫猫。猫の話。猫好きな人にはたまらない本だと思う。7人の作家による猫が登場する話だが、作家が違うと物語もこれだけ多彩になるのかと、ちょっと感動!作家の個性が色濃く出ている話もあれば、「こういう話も書くのか!」と意外性に驚いた話もある。
印象に残ったのは「泣く猫」と「凶暴な気分」だ。「泣く猫」は母と娘の物語だが、猫が重要な役割を果たしている。ラストは切ない。「凶暴な気分」では、ふたりの女性の描写に猫が効果的に使われている。人の心の中に潜むものの怖さを感じた。彼女たちのこれからが気になる。
猫と人との関係は、不思議でもあり、感動的でもあり、切ないものでもあり・・・。猫好きな人はもちろんのこと、そうでない人も楽しめる作品だと思う。
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アンソロジー(複数著者)
2018-08-19T21:45:00+09:00
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ふるさと銀河線(高田郁)
「自分の夢に向かって進むべきか?それとも大好きな故郷で暮らすべきか?」
両親亡き後兄とふたりで暮らしてきた星子は、中学卒業後の進路で思い悩む。そして、彼女が出した結論は・・・。表題作「ふるさと銀河線」を含む9編を収録。
ふるさと銀河線は、JRの路...
「自分の夢に向かって進むべきか?それとも大好きな故郷で暮らすべきか?」
両親亡き後兄とふたりで暮らしてきた星子は、中学卒業後の進路で思い悩む。そして、彼女が出した結論は・・・。表題作「ふるさと銀河線」を含む9編を収録。
ふるさと銀河線は、JRの路線を引き継ぎ、北海道ちほく高原鉄道が運営していた北海道中川郡池田町から北見市に至る鉄道路線である。1989〜2006年までの営業だった。私は実際に何度かこのふるさと銀河線を利用したことがある。なので、タイトルを目にしたとき、迷わずこの本を手に取った。懐かしい列車、懐かしい駅名。運行していた頃の情景が鮮やかによみがえる。
このふるさと銀河線の沿線で暮らす人たち、そして息子の思い出を求めはるばるこの地を訪れた夫婦・・・。紡がれるのは、切なさの中にも温もりを感じる物語だ。ふるさと銀河線にまつわる話もよかったが、「お弁当ふたつ」も心に残った。突きつけられた厳しい現実!でも夫婦ふたりでならきっと乗り越えられるのではないか。そんな希望を感じることができる。
読んでいると、心が解きほぐされ優しい気持ちになってくる。味わいのあるほのぼのとした作品だった。
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高田 郁
2018-08-08T23:11:00+09:00
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たったそれだけ (宮下奈都)
「逃げて。」不倫相手の女性社員のひと言で、収賄が発覚する前に失踪した望月正幸。いったい望月はどういう人間だったのか?また、彼の失踪後、家族はその事実とどう向き合ったのか・・・?さまざまな人間模様を鮮やかに描いた作品。
ひとりの男の失踪の陰には、彼...
「逃げて。」不倫相手の女性社員のひと言で、収賄が発覚する前に失踪した望月正幸。いったい望月はどういう人間だったのか?また、彼の失踪後、家族はその事実とどう向き合ったのか・・・?さまざまな人間模様を鮮やかに描いた作品。
ひとりの男の失踪の陰には、彼に関わるさまざまな人たちのドラマがあった。望月の不倫相手の女性、彼の妻と娘、彼の姉、それぞれの人たちにまつわる物語・・・。やはり、彼の妻と娘の物語はとても切ない。妻はいつも失踪した夫を追い求めていた。転々と住むところを変え、必死に追い求めた。娘はその間転校を繰り返したが、母の気持ちを思いやり何も言わなかった。ふたりの気持ちが痛いほど伝わってくる。「この作品の中に登場する人たちは、誰もが不幸なのではないか。」ずっとそう思いながら読んだ。だが、後半、物語は意外な方向へと進んでいく・・・。
人生には逃げなければならないときもあるだろう。だが、逆に、逃げてはいけないときもある。現実を見据え、立ち向かわなければならないときもある。ラストは未来への希望につながる何かを感じさせるものだったので、救われた。深い味わいのある作品だった。
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”み” その他
2018-07-18T20:21:00+09:00
ゆこりん
JUGEM
ゆこりん
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花咲舞が黙ってない(池井戸潤)
「銀行の取引先の内部情報が漏れている!」
郊外型ファミレス・レッドデリの出店計画の先回りをするライバル会社。誰が何のためにその会社にレッドデリの情報を漏らすのか?そこには、ある者の屈折した思いが潜んでいた・・・。「たそがれ研修」を含む7話を収録。
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「銀行の取引先の内部情報が漏れている!」
郊外型ファミレス・レッドデリの出店計画の先回りをするライバル会社。誰が何のためにその会社にレッドデリの情報を漏らすのか?そこには、ある者の屈折した思いが潜んでいた・・・。「たそがれ研修」を含む7話を収録。
今回も銀行を舞台に、さまざまな難問が舞に降りかかる。中には、舞や相馬の手には負えないものもある。だが、花咲舞は怯まない。あきらめない。正義を貫くため、銀行員としての誇りを失わないため、彼女は奔走する。相馬に降りかかる思わぬできごと、意外な人物の登場など、読み手をドキリとさせる展開もある。
どんなに正義を振りかざしても、巨大組織の中での舞の力は小さい。不正を暴ききれないもどかしさもある。けれど、舞の熱意が周りの人間の心を変えていく。最後に舞の努力が報われ、ホッとした。
今回も、楽しみながら読んだ。マンネリ化してきたかな?と思わないでもないが、まだまだこのシリーズを読みたいと切に願っている。
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池井戸 潤
2018-07-11T21:31:00+09:00
ゆこりん
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ゆこりん
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あやかし草紙(宮部みゆき)
人の心のすき間にスッと入り込み、行き逢い神はその家に住みついた。開けずの間になった行き逢い神のいる部屋。だが、家族は次々と不幸に見舞われた・・・。「開けずの間」を含む5話を収録。三島屋変調百物語シリーズ5。
女が強く願ったこと。それは、人として母...
人の心のすき間にスッと入り込み、行き逢い神はその家に住みついた。開けずの間になった行き逢い神のいる部屋。だが、家族は次々と不幸に見舞われた・・・。「開けずの間」を含む5話を収録。三島屋変調百物語シリーズ5。
女が強く願ったこと。それは、人として母として当然のことだったのではないのか。けれど、行き逢い神はその女の家に住みついた。そして、その家の者たちの心を惑わし、狂わせていった。怖い!怖い!読んでいて背筋がぞっとする。他の話も怖かったが、5編の中でこの話が一番怖く、特に印象に残った。行き逢い神も怖いが、もっと怖いものが人の心の中にあった!
また、本の帯に「シリーズ第一期完結編」と書かれていてどういうことかと思ったが、意外な展開があった。おちかの決断に、これからの幸せを願わずにはいられない。
ともあれ、このシリーズはまだ続くらしい。これから先どういうストーリーになるのか?新たな三島屋変調百物語シリーズに期待したい。
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宮部 みゆき
2018-06-21T20:08:00+09:00
ゆこりん
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ゆこりん
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http://nohohon2.yukorin.info/?eid=1566
風神の手(道尾秀介)
さまざまな人たちの人生がからみ合いながら、過去から現在へとつながっていく・・・。いったい、彼らの運命はどこでどう変わっていったのか?微妙なつながりを持つ4編を収録。
余命いくばくもない母が娘に語る高校時代の若き漁師との思い出を描いた「心中花」、小...
さまざまな人たちの人生がからみ合いながら、過去から現在へとつながっていく・・・。いったい、彼らの運命はどこでどう変わっていったのか?微妙なつながりを持つ4編を収録。
余命いくばくもない母が娘に語る高校時代の若き漁師との思い出を描いた「心中花」、小学5年生の”まめ”と”でっかち”の友情と不思議な事件を描いた「口笛鳥」、命の期限が迫る老女が抱えている昔の罪を描いた「無情風」、そして、それら3つの話に登場する人たちがつながっていく「待宵草」。この作品はこれら4つの話で成り立っている。
「こんなふうにつながっていたのか!」
考え抜かれた緻密なストーリー構成に驚かされる。バラバラだったできごとをジグソーパズルのピースのようにはめ込んでいけば、最後には全く異なる物語が完成する。見事としか言いようがない。
人の運命は、ほんのささいなことで大きく変わってしまうことがある。変わらない方が良かったのか、変わった方が良かったのか、それは誰にも分からない。でも、ひとつ言えるのは、どんな人生にも希望の光が輝いているということだ。
この作品は、人生というものをあらためて考えさせてくれた。読後感もよく、読みごたえのある面白い作品だと思う。
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”み” その他
2018-06-16T23:15:00+09:00
ゆこりん
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http://nohohon2.yukorin.info/?eid=1565
風は西から(村山由佳)
「ごめん。」
そのひと言を残し、彼は自ら命を絶った。
あこがれの大企業に就職し、希望に満ちた未来を見つめていたはずだったのに。いったい彼はなぜ死ななければならなかったのか?遺された者たちは、大企業と闘うことを決意した・・・。
将来は両親が営む居酒...
「ごめん。」
そのひと言を残し、彼は自ら命を絶った。
あこがれの大企業に就職し、希望に満ちた未来を見つめていたはずだったのに。いったい彼はなぜ死ななければならなかったのか?遺された者たちは、大企業と闘うことを決意した・・・。
将来は両親が営む居酒屋を継ぐはずだった。その日のために、大学の経営学科で学び、健介は、敬愛する山岡誠一郎が経営する「山背」に入社した。だが、それが悲劇の始まりだった・・・。
健介が就職したのは、ブラック企業だった。達成できるはずもないノルマを課せられ、彼は奔走する。「できないのは自分に能力がないせいだ。」そう思い込み、健介はしだいに自分を追い込んでいく。読んでいて胸が痛い。「山背」は、人を人として扱っていない。「社員がどうなろうと構わない。代わりはいくらでもいる。」そういうふうに考えるとんでもない企業だ。健介は、そんな企業につぶされた・・・。遺された家族、そして恋人の千秋が立ち上がる!
読みごたえがある、内容の濃い作品だった。健介が追い詰められていく描写は生々しく、リアリティがあった。けれど、健介の両親と千秋が「山背」に立ち向かっていく描写があっさりしすぎていて物足りなさを感じた。できれば、もっとじっくり描いてほしかった。それがちょっと残念だった。
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村山 由佳
2018-06-04T22:15:00+09:00
ゆこりん
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