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雪煙チェイス(東野圭吾)

殺人容疑で警察に追われる大学生の脇坂竜実は、唯一彼のアリバイを証明してくれる人物を自ら探し出すことを決意する。その人物とは、スキー場で会った美人スノーボーダーだった。はたして、彼は自分の無実を証明できるのか?

あらぬ疑いをかけられ逃亡する羽目になった脇坂竜実。彼は自分の疑いを晴らしてくれる女性を捜しにスキー場にやって来る。やがて警察も彼に目をつけ、捕まえようとスキー場に・・・。
脇坂はいちおう逃亡者なのだが、緊迫感が全く感じられない。本当に自分の冤罪を晴らしたいと思っているのか?と疑問になるほどだ。ミステリーというよりコメディと言った方がいい内容だ。警察の対応も現実にはあり得ないと思うところもあった。
あとひとつ気になったのは、他の方も指摘していたことなのだが、スキー場の管理エリア外のバックカントリーを滑る描写だ。事故が問題になっているだけに、滑走禁止区域を滑る行為が気になった。
読みやすいとは思うが、特別面白いというわけでもない。それなりには楽しめるかも・・・。



| 東野 圭吾 | 21:14 | comments(2) | ゆこりん |


夜鳴きめし屋(宇江佐真理)

長五郎は、父親が営んでいた古道具屋「鳳来堂」を居酒見世として再開した。朝方まで開いているその店には、いろいろな人たちがやって来た。その中には、かつて長五郎が思いを寄せた芸者のみさ吉がいた。みさ吉の息子は、長五郎の子どもらしいのだが・・・。6編を収録。

居酒見世「鳳来堂」には、いろいろな事情を抱えた人たちが集まってくる。この作品ではさまざまな人たちのさまざまな人生が描かれているが、6編に一貫して描かれるのはみさ吉の息子・惣助のことだ。惣助は長五郎の息子なのか?長五郎とみさ吉の行く末は?最後の最後まで気をもませる展開になっている。
人生には本当にいろいろなことがある。いいことも悪いことも・・・。人は何に希望を持って生きていくのか?生きていれば、必ずいいことがあるのか?いや、そうとは言えない。夜鷹・おしののことを思うと、やりきれない気持ちになる。彼女の人生が強く心に残った。
せつない部分もあるが、人情味にあふれた心温まる作品だと思う。読後感もよかった。



| 宇江佐 真理 | 22:30 | comments(0) | ゆこりん |


年間ベスト10(2016年)
 1位 蜜蜂と遠雷(恩田陸)
 2位 羊と鋼の森(宮下奈都)
 3位 真実の10メートル手前(米澤穂信)
 4位 アンネ、わたしたちは老人になるまで生き延びられた
    (テオ・コステル)
 5位 希望荘(宮部みゆき)
 6位 ノボさん(伊集院静)
 7位 無私の日本人(磯田道史)
 8位 土佐堀川(古川智映子)
 9位 明日のことは知らず(宇江佐真理)
10位 サブマリン(伊坂幸太郎)



| 年間ベスト10 | 21:12 | comments(2) | ゆこりん |


あまからカルテット(柚木麻子)

花火大会でたまたま隣のシートに座った男性がくれたのは、稲荷寿司だった。そのおいしさに惹かれただけではなく、その男性にも惹かれてしまった咲子。手がかりはもらった稲荷寿司だけ・・・。咲子の恋を成就させるべく、3人の親友が立ち上がった!「恋する稲荷寿司」を含む5編を収録。

中学時代から仲良しのアラサー女子4人組。友情は中学時代からずっと変わることなく続いていた。誰かが困った時は、他の3人が駆けつけ助けてくれる。4人は堅いきずなで結ばれている。置かれている状況は4人それぞれ全く違うのに、友情がこんなに長い間続いているなんてうらやましい。だが、そんな彼女たちの友情にもピンチが訪れる。「おせちカルテット」では薫子の一大事に他の3人が駆けつけようとするが、さまざまな事情で足止めされる。友情より自分の都合を優先すべきか?助けを求めている薫子はどうする?彼女たちの奮闘ぶりが面白い。
軽いタッチで描かれていて、さらりと読める。現実にはあり得ないような話もあるが、それなりに楽しめると思う。



| ”ゆ” | 22:14 | comments(0) | ゆこりん |


みかづき(森絵都)

1961(昭和36)年, 小学校の用務員として働く吾郎は、用務員室で子供たちに頼まれて勉強を教えていた。やがて、用務員室は大島教室と呼ばれるようになる。そんなとき、大島教室に通うひとりの少女の母親・赤坂千明が現れる。彼女の立上げる塾に来てほしいと誘われた吾郎は・・・。

1961(昭和36)年。まだ塾の存在が社会に認められていない時代だ。吾郎は千明と結婚し、学習塾を立上げる。順風満帆ではない。紆余曲折を経て、塾はしだいに成長していく。だが、成長し規模が大きくなるにつれて、千明と吾郎の考え方の違いが明確になっていく。理想を追い求める者と現実に根ざそうとする者。やがて、ふたりの間には亀裂が生じていく・・・。
親から子へ、子から孫へ。時代は流れていく。その流れの中で、塾の有り様も変わっていく。塾の存在が認められる半面、国の教育機関との関係が問題化する。奔走する千明。見守るしかない吾郎。そして、そんな両親を見つめる3人の子どもたち。いったい日本の教育はどこへ行こうとしているのか?混沌とした状況の中、塾はさまよい続ける。そして、行きついたところは・・・。
単行本で約460ページの、親子3代にわたる壮大な物語だ。千明と吾郎が追い求めるもの、彼らの3人の子どもたちや孫のそれぞれの人生、それらは感動的なはずなのだが、読んでいてそれほど感動することはなかった。登場人物の生き方や考え方にも共感できる部分は少ない。熱く語られる教育論も、読んでいる途中で飽きてしまう。情熱がこちらまで伝わってこない。高評価の作品なので期待して読んだのだが、それほど面白いとは思えなかった。



| 森 絵都 | 17:15 | comments(0) | ゆこりん |


名もなき日々を(宇江佐真理)

蝦夷松前藩の上屋敷に奉公している茜は、若君から好意を持たれた。そのことが原因で、茜は否応なしに藩の権力争いに巻き込まれていく。「誰も信じることができない。」四面楚歌の状態の中、茜の心はしだいに追い詰められていった・・・。表題作「名もなき日々を」を含む6編を収録。髪結い伊三次シリーズ12。

幼かった者たちも時がたてば成長し、大人になってゆく。茜は上屋敷に奉公し、伊与太は絵師のもとに弟子入りする。そして、伊与太の妹・お吉も髪結いの修業を始めた。それぞれがそれぞれの道を進んでいく。けれど、大人になるということは、今まで見えなかったものを見たり、今まで聞こえなかったことを聞くことでもある。大人の世界の醜い部分にどんどん触れざるを得なくなってくる。自分に降りかかる問題は、自分で解決しなければならないのだ。親は見守ることしかできない。それはいつの時代でも同じなのかもしれないが・・・。
時が流れ、やがて若い者たちの時代がやってくる。龍之進、茜、伊与太、お吉。いったい彼らの行く末は?そして年を重ねる伊三次、お文たちの今後は?ますます目が離せない。
切ない中にも心に温もりをもたらす、読みごたえのある面白い作品だった。



| 宇江佐 真理 | 22:17 | comments(0) | ゆこりん |


明日のことは知らず(宇江佐真理)

八丁堀の町医者・松浦桂庵の母親の美佐は、伊三次とも顔見知りだった。その美佐が、突然亡くなった。事故死だった。伊三次は、美佐の死が本当に事故死なのか疑問を感じ調べ始めたのだが・・・。「あやめ供養」を含む6編を収録。髪結い伊三次シリーズ11。

「あやめ供養」では、思わぬことで命を落とすことになった美佐について描かれている。母の米寿の祝いができなくなってしまった桂庵の胸の内を思うと心が痛む。お金のために罪を犯す。それはいつの時代にもあるのだと思うと、暗澹たる気持ちになる。
「赤のまんまに魚そえて」では、自分勝手な非情な男に惚れた女性の悲劇を描いている。読んでいてとても切なかった。
「明日のことは知らず」では、伊三次の息子・伊与太と不破友之進の娘・茜について描かれている。伊与太は、悲劇に直面したときに思わず茜の名前を口にした。伊与太の茜を想う気持ちが強く伝わってくる。その茜は、奉公先のお家騒動に巻き込まれようとしていた。茜も伊与太に想いを寄せているが・・・。いったいこのふたりはこの先どうなるのか?とても気になるところだ。
いい悪いに関わらず、時は流れていく。その時の流れの中で、老いていく者もあれば、成長していく者もある。この先どんな未来が待っているのか、それは誰にも分からない。分からないからこそ、人は今を大切に生きなければならないと思う。
味わいがあり深い余韻を残す、面白い作品だった。



| 宇江佐 真理 | 00:04 | comments(0) | ゆこりん |


月は誰のもの(宇江佐真理)

江戸の大火で住むところを失った伊三次とお文は、落ち着き先が決まるまでの間別れて暮らすことになった。伊三次の色恋沙汰、お文の父親の出現、八丁堀純情派と本所無頼派のその後、そして長女・お吉の誕生と、今まで描かれることのなかった10年を描いた作品。髪結い伊三次シリーズの番外編ともいえる作品。

以前、髪結い伊三次シリーズ8の「我、言挙げす」とシリーズ9の「今日を刻む時計」を読んだときに、シリーズ8とシリーズ9の間に10年もの空白があることにひどく驚いた。それ以来ずっと、描かれていない10年間がとても気になっていた。この作品は、その空白部分を埋める話となっている。
八丁堀純情派と本所無頼派のその後は興味深かった。不和龍之進と元・無頼派の次郎衛の間に生まれた友情は意外だったが、ちょっと胸が熱くなった。
お文とその父親の話はとても感動的だったが、切なさを感じるところもあった。立場上互いに名乗り合うことはできなかったが、父と娘の心はしっかりつながっていると強く感じた。ふたりが出会えて本当によかったと思う。
人の悲哀を温かなまなざしでしっとりと描いている。やりきれない思いを感じる中にも、どこか救いを感じさせる部分もある。それが、読後感を心地よいものにしていると思う。とても味わい深い面白い作品だった。



| 宇江佐 真理 | 22:34 | comments(0) | ゆこりん |


蜜蜂と遠雷(恩田陸)

3年に一度開催される芳ヶ江国際ピアノコンクールにはジンクスがあった。
「ここを制する者は、世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」
マサル・C・レヴィ・アナトール、栄伝亜夜、風間塵、高島明石。数多くの天才たちがひしめくコンクールを、彼らは勝ち抜けるのか?最後に栄光をつかむのはいったい誰なのか・・・?

本を読んだのではない。本を通してコンクールのピアノ演奏を聴いたのだ。そんな感じがする。コンクールで勝ちあがるための壮絶ともいえる演奏。聴こえるはずのないピアノの音が、この本を読んでいると聴こえてくる。音符の洪水が、圧倒的な迫力で押し寄せて来る。いったい読み手をどこに連れて行こうとしているのか?宇宙のはるかかなた?壮大な自然の真ん中?ともかく、読み手は翻弄される。素晴らしい音の波に。
はたして、コンクールで優勝するのは誰か?できればマサル、亜夜、塵、明石、この4人すべてに優勝の栄冠を与えたい。そんな気持ちになってくる。どんどん本を読み進める。いや、コンクールを聴きに来た聴衆のひとりとして音楽を聴き続けていく・・・。文章を読むだけで音楽を楽しめるなんて!素晴らしい音楽の世界に浸れるなんて!この作品は何なのだ!恩田陸のすごさをあらためて実感した。
読後も強く余韻が残り、頭の中ではいつまでもピアノの音が鳴り響いていた。500ページの大作だが、一気読みだった。ラストには素晴らしい感動が待っている!久々にとても面白い本にめぐり会い、大満足♪ オススメです!



| 恩田 陸 | 21:16 | comments(0) | ゆこりん |


潮騒のアニマ(川瀬七緒)

小さな離島でミイラ化した女性の遺体が発見された。死後3ヵ月を経過したと思われる遺体は、首つり自殺として処理されようとしていた。だが、法医昆虫学者の赤堀は、遺体がいつもとは違うことに気がついた。「虫の声が聞こえない。」はたして、この遺体に隠された謎とは?法医昆虫捜査官シリーズ5。

犬がどこからか運んできた女性の遺体は、首つり自殺をしたものと思われた。だが、遺体を中心にしての昆虫相が全く組まれていない・・・。どうすればこういう状態になるのか?いつもは虫たちの声を聞く赤堀は戸惑った。それでも、根気よく赤堀は現場からわずかな手がかりを探し出した。しだいに、遺体となった女性の人生が浮かび上がってくる。彼女がなぜこんな小さな島までわざわざやって来て命を絶ったのかが見えてくる。周りの人間の身勝手さや醜さが浮き彫りになってくる。事件が解決されても、満たされない切ない想いがつきあげて来た。
今回も赤堀は大活躍だった。この作品は、シリーズ1〜5の中で一番ウジの数が少なかったように思う。大量のウジが登場するだろうと身構えて読んだが、拍子抜けだった(笑)。そのかわり、他の生物が圧倒的な迫力で登場する。危機感を感じる赤堀だが、その生物は人間が持ち込んだものなのだ。生き物を人間の都合のいいように扱うことは、絶対にしてはいけないと思う。
じっくり考えれば疑問なところもあるが、楽しめる作品だと思う。いつも言っているが、虫の好きな人だけではなく、虫の嫌いな人にもぜひ読んでもらいたい。虫の生態は、ミステリーより面白いかもしれない。



| 川瀬 七緒 | 21:57 | comments(0) | ゆこりん |